上ノ台遺跡(集落)の生業検討の一環で滑石模造品工房の検討をしました。その検討の中で、玉類・装身具・滑石製品出土住居趾が、遺跡の中で一種の上流階層に該当しているらしいという分析情報が得られましたので紹介します。
1 古墳時代における金属製品の意義
古墳時代の金属製品(ほとんど鉄製品、一部に青銅製品を含む)は現代でいえば最先端ハイテク工具・道具・部品であり、生産活動に多大な効率化をもたらし、富を増大させる貴重な物であったと考えられます。
従って、金属製品の所持利用を住居趾を単位にみると、満遍なくいきわたっている製品ではなく、集落社会の上層部、指導部に偏在していたことが想定されます。
上ノ台遺跡の全住居趾309軒に対して、金属製品出土軒数は38軒であり、その割合は12.3%となっています。
2 玉類・装身具・滑石製品出土住居趾分布と金属製品出土住居趾分布のオーバーレイ図作成
玉類・装身具・滑石製品出土住居趾分布と金属製品出土住居趾分布のオーバーレイ図を作成してみました。
玉類・装身具・滑石製品出土住居趾分布と金属製品出土住居趾分布のオーバーレイ図
玉類等出土住居趾(全49軒)のうち金属製品出土住居趾は12軒であり、その割合は24.5%となります。
玉類等出土住居趾のなかには滑石製品作製工房や準工房が含まれていてそれらは生産者であり消費者ではありません。
ですから玉類等出土住居趾の中から未製品だけを出土する住居趾を取り除き、製品としての玉類等が出土した住居趾、つまり玉類等の消費者であったと考えられる住居趾(33軒)を対象にして金属製品出土住居趾をカウントすると11軒となり、その割合は33.3%に高まります。
玉類等出土別に見た金属製品出土住居趾の割合
以上のような統計から玉類等出土住居趾(特に未製品を除いた玉類等出土住居趾)は金属製品出土割合が一般住居趾より高く、集落社会の中で上層階層、指導階層に属していた家族が居住していた割合が高いものと考えます。
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