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2025年6月1日日曜日

有吉北貝塚北斜面貝層のデータベースを活用した検討事例のまとめ

 Summary of case studies using the database of shell layers on the northern slope of the Ariyoshi Kita shell mound


By utilizing the database, we were able to obtain a lot of important information, such as compiling the history of shell layer development. Much of this information would have been impossible to know without the database, and we confirmed the usefulness of the database.


データベースを活用することにより、貝層発達史を編むことができるなど多くの重要情報を得ました。これらの情報はデータベースが無ければ知ることが不可能であるものが多く、データベースの有用性を確認しました。

1 貝層発達順番の把握


貝層発達の順番と遺物量

貝層と土器型式の関係を検討し、おおよその対応関係を観察しました。

この検討で、検討空間の貝層発達の順番と遺物量の関係を表のように捉えることができました。貝層発達の順番(貝層発達史)把握は今回検討における大きな成果です。発掘調査報告書では未踏だった領域です。

この観察の中で、北斜面貝層上流部の際立った土器密集が褐色貝層R3層の時期に対応することに気が付きました。

2 前代貝層痕跡の確認

斜面性貝層形成時点ではすでに存在していなかった前代貝層の痕跡(貝層ブロック、土器)が発掘調査で観察記録されています。(千葉県立中央博物館展示剥ぎ取り断面でその現物を見ることができます。)

北斜面貝層における前代貝層痕跡確認も今回検討の成果です。

3 土器集中域と骨・歯集中域が異なることの発見

3D空間において、斜面性貝層における土器の密集分布域が貝層下段にあることを観察しました。骨・歯の密集分布域が斜面性貝層の上~中段のあることも観察しました。このことから、土器と骨・歯の分布特性(投棄原理)が異なる可能性を知りました。

この発見は遺物投棄原理を検討していくうえで、大きな収穫となります。

4 イノシシ顎骨に関連する特異事例発見

イノシシ顎骨、刺突具(鹿骨)、釣針(海獣骨)、石鏃が接近出土する特異な事例を発見しました。この事例の空間は骨・歯密集域分布の空白部に該当するとともに、事例空間を取り囲んで骨・歯密集域が広がります。このことから、この事例空間は何らかの意味がある可能性があります。今後類例が増えた段階で検討を深めることにします。

5 データベースの有用性確認

以上の貝層と遺物の関係観察・理解は3D空間分析用データベース構築・活用が無ければほぼ不可能です。

3D空間分析用データベースの有用性は、当初の想定をはるかに越えて、より大きなものであることを確認しました。


2024年12月19日木曜日

千葉市人形塚古墳地割線の意味解明学習のまとめ

 Summary of learning to clarify the meaning of the Ningyozuka Kofun land division line in Chiba City


Since autumn, I have been working intensively on learning to clarify the meaning of the Ningyozuka Kofun land division line in Chiba City, and I have finally reached a conclusion and summarized my findings in a learning review.


秋以降、千葉市人形塚古墳地割線の意味解明学習に集中的に取組んできましたが、ようやく結論に達し、その様子を学習感想文としてまとめました。

1 千葉市人形塚古墳地割線の意味解明にチャレンジする

千葉市人形塚古墳地割線の意味解明にチャレンジする

A4、6頁


画像(1頁目)

2 メモ

「千葉市人形塚古墳地割線の意味解明にチャレンジする」は2024年12月17日におゆみ野歴史愛好会で話題提供した時の配布資料です。学習感想文です。

要約

・これまで一部不明だった地割線の計画設計線としての意味が全て判明しました。

・同時に全ての地割線に施工実用性がないことも明らかになりました。

・施工実用性のない地割線を描いた理由は、視葬者(はぶりのつかさ)検査に対応するためだったと解釈しました。

・古墳を巡る内周溝、外周溝には流水が導水・管理され、庭園風景造成が確認できました。

・当時の人形塚古墳プロジェクトのプロセスについて考察しました。



2024年7月17日水曜日

有吉北貝塚北斜面貝層 土器関連データ予備分析のまとめ

 Summary of preliminary analysis of pottery-related data for the shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita shell mound


I summarized the preliminary analysis I conducted by extracting pottery-related data from the electronic artifact ledger file of the shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita shell mound, and identified the issues. Creating a 3D bar graph by grid of data is effective for understanding distribution characteristics. In the future, I will link the excavation report list to the data so that it can be combined and used.


有吉北貝塚北斜面貝層の遺物台帳電子化ファイルから土器関連データを抜き出して実施した予備分析をまとめ、課題を確認しました。データのグリッド別3D棒グラフ作成は分布特性把握に効果的です。今後発掘調査報告書リストをデータにリンクして、結合して利用できるようにします。

1 土器関連データ予備分析でしたこと、わかったこと

1-1 データのグリッド別3D棒グラフ作成方法の確認

土器関連データを使って、データをグリッド別3D棒グラフで表現する方法を確認して、いつでも迷うことなくできるようになりました。

2024.07.11記事「有吉北貝塚北斜面貝層 土器・土製品出土数のグリッド別分布 3D棒グラフ

生データ(遺物台帳データ)から次のステップを踏んでグリッド別3D棒グラフを作成します。

1 グリッド別件数データ作成(Pythonスクリプト利用)

2 グリッド座標追加(Pythonスクリプト利用)

3 データ調整(標準化)

4 csvファイル出力

5 Blenderでグリッド別3D棒グラフ造形(BlenderPythonスクリプト利用)

なお、異なる指標のグリッド別3D棒グラフを比較しやすくするために、グラフ表現の標準化について検討しました。

2024.07.15記事「技術メモ 有吉北貝塚北斜面貝層 3D棒グラフ表現の標準化

1-2 グリッド別分布比較の有用性確認

土器と土錘のグリッド別3D棒グラフを比較したところ、2つの分布特性が異なり、興味深い結果を得ることができました。

2024.07.12記事「有吉北貝塚北斜面貝層 土器と土錘の分布特性の違い

土器と土錘の投棄原理が異なる可能性が濃厚です。土器以外のアイテムも含めて、分布を検討することにより儀礼活動積み重ねの状況を知る突破口を開けるかもしれません。


有吉北貝塚北斜面貝層 土器と土錘の分布3D棒グラフ画像

1-3 分布や分布比較記述の困難さ確認

グリッド別3D棒グラフで分布を見るとその様相は直観的に理解できます。また二つのグリッド別3D棒グラフを比較するとその違いを直観的に理解できます。しかし、それを文章にして表現しようとすると、途端に困難を感じます。その理由の最大のものは北斜面貝層空間にゾーンなどの名称が一切ないことです。北斜面貝層の空間の各所に名称(いわば地名)を設定して、分布記述をしやすくする必要があります。

朱塗土器件数と朱塗土器件数率の二つのグリッド別3D棒グラフの比較では、その相違を記述することが困難でした。

2024.07.14記事「有吉北貝塚北斜面貝層 朱塗土器の分布

1-4 遺物台帳データの不揃い確認

土器口縁部率データをみると、土器部位観察をしていないグリッドの存在を確認できます。遺物台帳データに不揃い(いわば欠測)があることになります。データ不揃いを確認したとき、それを補正する方法を見つけて、データを有用データとよみがえらせることが必要です。

2024.07.14記事「有吉北貝塚北斜面貝層 朱塗土器の分布

2 遺物台帳データに関連した当面の課題(土器関連)

2-1 北斜面貝層空間に地名に準じる名称をつける

北斜面貝層空間に地名に準じる名称をつけて、分布記述をしやすくします。

また、分布情報をChatGPTに説明させる方法について検討することも意義のあることだと考えます。

2-2 遺物台帳データ不揃い対応

遺物台帳データ不揃いを見つけた場合の当面の対応方法を決めるとともに、データ補正方法を検討します。

2-3 発掘調査報告書掲載遺物リストの電子化

土器関連では次のリストが発掘調査報告書に掲載されています。

・土器片錘 1087点(完形のみ)

・土製円盤 18点

・耳栓 6点

・ミニチュア土器 6点

・土製品(その他) 5点

このリスト電子化ファイルを遺物台帳ファイルとリンクして、遺物コード(グリッド番号、遺物番号から新規生成)で二つのファイルを結合して利用できるようにします。

2-4 その他

・遺物台帳データの電子化作業における不備の訂正(入力ミスの訂正)

・円盤などのグリッド別3D棒グラフ作成

3 全土器現物閲覧プロジェクト

現状では発掘調査報告書土器番号と遺物台帳データは対応していません。そこで、発掘調査報告書掲載土器リストと遺物台帳リストをリンクするために、全土器現物閲覧プロジェクトに中期的観点から取り組みます。

●有吉北貝塚北斜面貝層 発掘調査報告書掲載全土器現物閲覧プロジェクト

・発掘調査報告書掲載全土器(器形復元土器がメイン)現物を閲覧して、土器破片に記載されているグリッド番号、遺物番号の読取り確認調査を実施する。

・全土器全破片と遺物台帳データを遺物コード(グリッド番号、遺物番号から新規生成)でリンクする。

・掲載土器番号-土器型式対応表(最新情報により西野雅人先生作成)がすでに使える状況にある。

・これにより、遺物台帳データに発掘調査報告書土器番号と土器型式情報を取り込み、利用分析できるようにする。


2016年7月10日日曜日

鏡味完二の地名型検討のまとめ

千葉県小字データベースの試用として鏡味完二地名型を千葉県小字から抽出して検討してきて、完結しました。

この記事では鏡味完二の地名型検討の内容についてまとめます。

千葉県小字データベースの試用によるデータベースの改良点等の検討は別記事で行います。

1 鏡味完二の地名型検討結果のまとめ

鏡味完二の地名型検討結果を次の一覧表にまとめました。

鏡味完二の地名型検討(予察的検討)結果まとめ

地名が全く検出できなかったのは3のスエ・ハジだけです。しかし関連する地名「ハニ、ハネ」が抽出されましたので、地名と古代窯業との関連を検討することができます。

鏡味完二の地名型の説明で首肯することが出来なかったのは、1のイラ・エラが母音相通であるということ、7の条が条里に由来するということ、11の轆轤が木地屋と関連するということ(ただし房総に限定しての話)の3点でした。

全体として、鏡味完二の地名型選定は開発地名に焦点を絞っていて、また時代別になっているので、興味の尽きない作業となり、地名と歴史に関わる自分の知識を大幅に増やすことができました。


2 派生した興味

鏡味完二地名型検討の中で、次のような興味が派生して、既に検討がスタートしたものもあります。

鏡味完二の地名検討の中で派生した興味

縄文時代に由来する地名検討のきっかけをつかめたような気がしています。

また窯業だけでなく製鉄・鍛冶や漆、牧、養蚕等の開発地名検討のきっかけもつかめました。

さらに地名と遺跡・墨書土器データベースとのリレーションをとることにより、地名情報を使って考古歴史検討を深めることができそうなイメージを持ちました。