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2020年11月22日日曜日

貝層剥取断面(東金市・大網白里市養安寺遺跡)と包含土器観察所見資料の3Dモデル作成

 縄文土器学習 500

千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」で展示されている貝層剥取断面(東金市・大網白里市養安寺遺跡)の隣に発掘調査報告書掲載「包含土器観察所見資料」を並べた3Dモデルを学習資料として作成しました。

1 貝層剥取断面(東金市・大網白里市養安寺遺跡)と包含土器観察所見資料 3Dモデル

貝層剥取断面(東金市・大網白里市養安寺遺跡)と包含土器観察所見資料 3Dモデル

●貝層剥取断面(東金市・大網白里市養安寺遺跡)観察記録3Dモデル

縄文中期、北斜面貝層(SS009)、貝層断面B

主にチョウセンハマグリ、ダンベイキサゴ、フジノハナガイから構成される。

膨大な土器(メインは加曽利EⅡ式土器)とともに石器、骨角歯牙貝製品、コハク等出土。

貝層の最大層厚1.92m、傾斜角40度のガリーに堆積。

撮影場所:千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」 

撮影月日:2020.11.13 

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.009 processing 109 images

●包含土器観察所見資料 3Dモデル

東金市・大網白里市養安寺遺跡発掘調査報告書掲載資料

Blenderにより3Dモデル作成


3Dモデル画面


3Dモデルの動画

2 包含土器観察所見資料


包含土器観察所見資料

東金市・大網白里市養安寺遺跡発掘調査報告書から引用

3 メモ

貝層下層部から中層部、上層部の方向に向かって、包含土器の形式は加曽利EⅠ.EⅠ~EⅡ(■)→加曽利EⅡ(▲)→加曽利EⅡ~EⅢ(●)の順に近い順に出土する資料となっています。


貝層剥取断面(東金市・大網白里市養安寺遺跡)の3Dモデル作成

 縄文土器学習 499

千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」で展示されている貝層剥取断面(東金市・大網白里市養安寺遺跡)の3Dモデルを作成し、観察しました。

1 貝層剥取断面(東金市・大網白里市養安寺遺跡) 観察記録3Dモデル

貝層剥取断面(東金市・大網白里市養安寺遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文中期、北斜面貝層(SS009)、貝層断面B

主にチョウセンハマグリ、ダンベイキサゴ、フジノハナガイから構成される。

膨大な土器(メインは加曽利EⅡ式土器)とともに石器、骨角歯牙貝製品、コハク等出土。

貝層の最大層厚1.92m、傾斜角40度のガリーに堆積。

撮影場所:千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」 

撮影月日:2020.11.13 

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.009 processing 109 images


展示の様子


展示の様子


説明パネル


3Dモデルの動画

2 メモ

ア 谷壁原面の傾斜と平行に貝層が堆積している様子が表面凹凸模様の傾斜からわかります。

イ 貝殻や他の品は斜面上から投棄されたことがわかります。

ウ 剥取面の凹凸は貝殻とそれ以外の堆積物(土)の分量比の違いを表現していて、貝殻が集中的に投棄された時期と土壌が堆積する時期が交互に繰り返していたことなどの集落活動変動を示していると考えられます。

エ 発掘調査報告書に貝層の詳しい記述があり、別記事でさらに検討することにします。

オ 局所的な急傾斜V字谷(ガリー)を埋めるように発達する斜面貝層という事象は、同時期近隣の有吉北貝塚の斜面貝層と事象が似ています。有吉北貝塚斜面貝層の学習では、それが加曽利EⅡ式期頃の人口急増→薪・樹木需要急増→集落付近裸地拡大→ガリー発達→台地集落存立の危機→ガリー発達阻止のための土木的・祭祀的対応としての貝殻・廃用生活品投棄という因果関係を空想しました。このような空想が同じように養安寺遺跡にも当てはまるものかどうか、今後学習を深めることにします。

2020年11月14日土曜日

コハク製垂飾(第400図2)(東金市・大網白里市養安寺遺跡)の3Dモデル作成

 縄文石器学習 29

千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」で展示されているコハク製垂飾(東金市・大網白里市養安寺遺跡)を観察し、2020.11.09記事「コハク製垂飾(東金市・大網白里市養安寺遺跡)の観察」を既に書きました。しかし、3Dモデルの作成には失敗していました。2020.11.10に再度撮影しましたがその撮影も失敗に終わり、2020.11.13に3回目撮影にチャレンジし漸く3Dモデル作成にこぎつけましたので、3Dモデルを掲載します。

1 コハク製垂飾(第400図2)(東金市・大網白里市養安寺遺跡) 観察記録3Dモデル

コハク製垂飾(第400図2)(東金市・大網白里市養安寺遺跡) 観察記録3Dモデル

SS003出土2番(第400図2)、縄文中期、長さ16.00㎜、幅10.00㎜、厚さ7.00㎜、重量0.52g

[参考]斜面貝層SS003の最多出土土器…Ⅱ群 加曽利EⅠ式~加曽利EⅡ式

(東金市・大網白里市養安寺遺跡発掘調査報告書から引用)

撮影場所:千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」 

撮影月日:2020.11.13 

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.009 processing 65 images


展示の様子


展示の様子(拡大)


3Dモデルの動画

2 メモ


3Dモデル テクスチャ


3Dモデル ソリッド


3Dモデル メッシュ


参考 撮影ポイント配置

展示会場現場において肉眼観察が困難な細部の様子が3Dモデルでじっくり観察できます。3Dモデル作成が学習の強力な武器になることを再認識しました。望遠撮影で顕微鏡的拡大効果を生んでいます。

養安寺遺跡出土コハク製品観察を一つの引き金にして、縄文中期の房総と中部高地(長野山梨)の関係学習を深めたいと考えています。

2020年11月9日月曜日

コハク製垂飾(東金市・大網白里市養安寺遺跡)の観察

 縄文石器学習 28

千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」で展示されているコハク製垂飾(東金市・大網白里市養安寺遺跡)を観察しました。

1 コハク製垂飾(東金市・大網白里市養安寺遺跡)の観察


展示の様子


展示の様子


SS003出土2番(第400図2) 展示左から2番目


SS003出土2番(第400図2)の実測図

縄文中期

長さ16.00㎜、幅10.00㎜、厚さ7.00㎜、重量0.52g

[参考]斜面貝層SS003の最多出土土器…Ⅱ群 加曽利EⅠ式~加曽利EⅡ式

東金市・大網白里市養安寺遺跡発掘調査報告書から引用

2 メモ

養安寺遺跡出土コハク製品・原石で記載されたものは14点あり、製品はいずれも垂飾でほとんどが未製品と破損品です。コハク原石は銚子の露頭転石や海岸打ち上げ物から入手し、養安寺遺跡で加工し、各地に搬出していたと考えられます。銚子産コハク垂飾は土偶「縄文のビーナス」出土で有名な長野県茅野市棚畑遺跡からも出土しています。


養安寺遺跡出土コハク製品・原石

東金市・大網白里市養安寺遺跡発掘調査報告書から引用

3 参考 コハク製品出土場所


SS003出土2番(第400図2)の出土場所


東金市・大網白里市養安寺遺跡の位置

4 観察記録3Dモデル

ガラス越し望遠撮影を19シャッター行い、3Dモデルを作成しましたが、ソフトが受け付けた写真が6枚であり、満足できる最低限の3Dモデルをつくることができませんでした。


6枚写真で作成した3Dモデル

コハク製品4点を一緒に3Dモデルにするという安易な方法がよくないことと、撮影写真枚数が少ないことなどが3Dモデル作成失敗の原因のようです。次の訪問でSS003出土2番(第400図2)に的を絞って3Dモデル作成に再度チャレンジすることにします。

2020年10月26日月曜日

東金市・大網白里市養安寺遺跡の縄文中期遺物と遺構

 縄文社会消長分析学習 52

この記事では東金市・大網白里市養安寺遺跡の中期に絞って、その遺物・遺構を発掘調査報告書からピックアップします。

1 東金市・大網白里市養安寺遺跡の発掘調査報告書と位置


東金市・大網白里市養安寺遺跡発掘調査報告書


東金市・大網白里市養安寺遺跡の位置

養安寺遺跡は下総台地と房総丘陵を結ぶ狭窄部に位置し、移動するシカ等の交通の要衝であり、旧石器時代からの狩猟好適地に位置します。

2 東金市・大網白里市養安寺遺跡の縄文中期遺物と遺構


東金市・大網白里市養安寺遺跡の縄文中期遺物と遺構

(この図の記述は、この記事の最後にテキストで掲載)

・養安寺遺跡のうち縄文中期分だけ抜き出してピックアップしたものです。

・竪穴住居は阿玉台Ⅲ式・Ⅳ式・中峠式期にはじまり、加曽利E1式期、加曽利EⅡ式期まで続きます。軒数は順次少なくなります。房総の遺跡はほとんどが加曽利EⅡ式期にピークを迎えますから、この遺跡は通常ではありません。

・土器の出土状況は他の遺跡と異なり、異なる様式の土器が一括して出土します。阿玉台式系統、勝坂類似、中峠式近似、大木式が一括出土します。


出土土器

東金市・大網白里市養安寺遺跡発掘調査報告書から引用

・斜面貝層から出土する土器は竪穴住居軒数の趨勢と異なり、加曽利EⅠ式・加曽利Ⅱ式期の分が圧倒的に多くなっています。

・出土石器では黒曜石を最多岩種とする石鏃が多数出土します。石鏃づくりに伴う剥片類も多数出土します。

・同時に骨角歯牙製品が538点と多数多種出土します。


骨角歯牙製品

東金市・大網白里市養安寺遺跡発掘調査報告書から引用

・またイノシシ、シカをメインとしタヌキ、ノウサギなどを含む獣骨も多数出土します。

・多数の石鏃、多数の骨角歯牙製品、多数の獣骨の存在から、この遺跡のメイン生業が狩猟であることがわかります。

・狩猟とともに漁労も行われていますが、東京湾の大型貝塚と比べると貝刃などの貝製道具類の数が少なく、漁労はサブ的な生業であったと考えられます。

・人骨は全て貝層から散乱骨として出土しています。

3 発掘調査報告書が指摘する集落と貝層の乖離

発掘調査報告書では集落が房総全体の趨勢と異なり、加曽利EⅠ式期~加曽利EⅡ式期に向かって衰退する様子を指摘します。しかし、それに反して貝層出土物は通年定住型環状集落に伴う貝層となんら遜色のない内容が示されて、集落規模と貝層出土物量の乖離が指摘されています。

発掘調査報告書ではこの乖離の解釈案を4つ提示しています。

ア 貝層は調査結果の小集落で形成された。

イ 貝層は複数遠方集落構成員によって形成された。(集落は複数遠方集落の共同利用施設であった。期間を棲み分けて、同じ猟場を複数集落が利用するイメージ。)

ウ 貝層は調査で発見できなかった大きな集落で形成された。(集落遺構が失われてしまっているため調査できない、あるいは発掘区域外に集落が存在する。)

エ ア~ウ以外の要因による。

4 感想

・養安寺遺跡が狩猟遺跡であり、同時に複数集落の共同管理施設であった可能性が濃厚であり、特異な遺跡です。

・養安寺遺跡からアリソガイが有吉北貝塚にもたらされているのですが、有吉北貝塚から養安寺遺跡にもたらされた土器などの遺物は見つかっていないようです。

・養安寺遺跡の狩猟に有吉北貝塚の人々は参加していないようです。養安寺遺跡と有吉北貝塚とは交易の関係があるだけのようです。

・養安寺遺跡の人々と有吉北貝塚など東京湾岸貝塚の人々はどうも「流派」が違うようです。土器の文様が異なる様子から「流派」が違う感覚を受けます。

・漁業権とか狩猟権などの土地の権利関係が発達していて、最初に開発した集団がその権利を確立した歴史があるのだと思います。

・養安寺遺跡の隣東金市鉢ヶ谷遺跡から中期前葉五領ヶ台式期の河童形土偶が出土していて、その土偶が長野県茅野市棚畑遺跡出土国宝土偶「縄文のビーナス」と系譜を同じにすることに驚いたことがあります。棚畑遺跡から銚子産コハクが出土しています。中部高地の人々がいち早く九十九里の狩猟好適地に進出して、そこに狩猟権を確立したと考えても、荒唐無稽とは言い切れません。

2020.07.09記事「「縄文のビーナス」と系譜を同じにする千葉県出土土偶

次の記事で養安寺遺跡と有吉北貝塚との対比を行います。

……………………………………………………………………

養安寺遺跡 中期

  • 遺構
    • 竪穴住居 17
      • 阿玉台Ⅲ式・Ⅳ式・中峠式期 10
      • 加曽利EⅠ式期 5
      • 加曽利EⅡ式期 2
    • 小竪穴・土坑 約80
    • 北側斜面貝層
  • 土器
    • 一括出土
      • 阿玉台式系統
      • 勝坂式類似
      • 中峠式近似
      • 大木式
  • 遺物
    • 土製品
      • 土製装身具
        • 耳飾 1
      • 生産系
        • 土器片錘 34
        • 有孔円盤 30
    • 石製品
      • 大珠 2
        • ヒスイ 1
        • 非ヒスイ 1
      • 琥珀
    • 石器 中期貝層SS009
      • 石鏃 305
        • 黒曜石 133
        • チャート 119
      • 剥片類 2637
        • 黒曜石 1117
        • チャート 1074
        • フォルンヘルス 285
      • 磨製石斧 13
      • 打製石斧 53
      • 磨石 13
      • 敲石類 139
    • 骨角歯牙貝製品
      • 骨角歯牙製品 538
        • 生産 89
          • 刺突具 85
          • 釣針 3
          • 掘具 1
        • 加工 176
          • ヘラ状工具 168
          • 針状工具 8
        • 装飾 119
          • 鹿角製装飾 21
          • 骨製装飾 13
          • 歯牙製装飾 23
          • 管状製品 22
          • 魚類椎骨穿孔品 3
          • 針状製品(髪針) 28
          • 鏃型製品(歯牙) 9
        • 素材・その他 154
          • 加工角 31
          • 加工骨 48
          • 除去吻端 75
      • 貝製品 101
        • 貝輪 4
        • 貝刃 60
          • チョウセンハマグリ製 59
          • カガミガイ製 1
        • その他の貝製装飾品
        • その他の貝製品
    • 動物遺体
      • 哺乳類
        • イノシシ
        • シカ
        • タヌキ
        • ノウサギ
        • イヌ
      • 鳥類
        • キジ科 43%
        • カモ科 34%
        • クイナ科 14%
    • 主要貝種 サンプル
      • チョウセンハマグリ 83.3%
      • ダンベイキサゴ 10.0%
    • 魚類
      • 淡水域
        • フナ属
        • ドジョウ科
        • ギギ科
        • ウナギ属?
      • 内湾域
        • スズキ属
        • クロダイ属
        • ボラ科
        • コチ科
        • ウナギ属?
      • 外洋沿岸~内湾
        • イワシ類
          • マイワシ
          • カタクチイワシ
      • 外洋沿岸域
        • トビエイ
        • サメ
    • 人骨(最小個体数) 18
      • 北斜面貝層 11
        • 大人 6
        • 少年 1
        • 小児 3
        • 乳児1
      • 北西斜面回貝層 7
        • 大人 3
        • 少年 1
        • 小児 2
        • 乳児~幼児 1