ラベル 稲荷原式土器 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 稲荷原式土器 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2019年7月19日金曜日

稲荷台式土器の分布

縄文土器学習 199

縄文土器形式別出土遺跡分布図を作成しています。この記事では縄文早期の稲荷台式土器について検討します。

1 千葉県 稲荷台式土器出土遺跡分布図

千葉県 稲荷台式土器出土遺跡分布図
101遺跡がプロットされています。

千葉県 稲荷台式土器出土遺跡分布ヒートマップ
最大の遺跡密集域は成田空港付近ですが千葉県各地に遺跡密集域が見られます。

2 千葉県 稲荷原式土器出土遺跡分布図

千葉県 稲荷原式土器出土遺跡分布図
1がプロットされています。

3 参考 千葉県縄文土器形式別等出土遺跡数

千葉県縄文土器形式別等出土遺跡数


2019年6月27日木曜日

同心円状擦痕・擦跡の観察について

縄文土器学習 164

2019.06.24記事「稲荷台式土器の炉設置状況推測」に関連する私のTwitter発言polieco archeさんから多数のコメントをいただき同心円状擦痕と炉穴に関する興味・問題意識を深めることができました。polieco archeさんに感謝します。
この記事ではpolieco archeさんコメントを触媒にして自分の脳裏に浮かんだ事柄などをメモします。

1 同心円状擦痕が出来た場所について
・同心円状擦痕が出来たのは住居内炉(灰床炉)であると単純にかんがえていたのですが、炉穴かもしれないという指摘を受けました。土器を使って煮炊きする可能性のある場所のイメージを最初に作る必要があります。
・土器を使った煮炊きが住居内に限定されるということは、考えてみるとありえないように感じます。天気がよければ室内食よりも野外食の方が多かったかもしれません。

2 炉内堆積物の確認
・灰床炉と呼ばれる炉の内部に堆積している「灰」のなかに擦痕が出来るような砂など固い固形物があるか、いつか確認する必要があります。
・土器を炉の中にグリグリ回しながら押し込んだ時にできる擦痕とそれに対応する固形物の大きさ等の関係を実証的に知っておく必要があります。

3 同心円状擦痕観察データの蓄積の有用性
同心円状擦痕観察データが土器の使用状況とか使われた炉の状況の推察に有用である可能性があります。同心円状擦痕観察データを蓄積してデータベース化して多数データを分析すれば、これまで視界に入らなかった新たな情報が見つかるかもしれません。
例えば、「小石を使った調理跡(炉跡)出土数と同心円状擦痕観察土器数に相関がある」ことがわかれば、擦痕土器が出土すれば小石調理場の存在が推測できる、とか。

4 擦痕類似模様の観察
擦痕(固いものでこすられて器面が線状に削られた跡)とまでは言えないが、こすられて模様がついた土器があります。このような跡を擦跡と呼ぶことにします。2019.0623記事「稲荷原式土器 観察記録3Dモデル」で観察した稲荷原式土器にはこの擦跡が観察できます。

稲荷原式土器の底部同心円状擦跡

稲荷原式土器
土器表面に付いたススが擦られて線状に脱落した跡およびその延長の土器表面の色が白くなっている模様です。
器面が削られているわけではありませんが砂等で擦られた跡であり、擦痕と一緒に検討すべき事象であると考えます。
擦跡→虚弱な擦痕→規模の大きな擦痕を分類すればその成因(関連炉の状況)が見えてくるかもしれません。

5 擦痕・擦跡観察用写真撮影について
擦痕・擦跡を観察するためには撮影写真を拡大して、顕微鏡観察のような状況になります。そのような拡大に堪えられる写真が意外と少ないことに気が付きました。土器展示施設の照明の関係で野外と較べるシャッタースピードが遅くなり、それに比例して微細な手振れが生れるためです。一般の用途では問題にならない手振れがこの場面では問題になります。
展示土器の擦痕・擦跡の観察データを本格的にとるためにはより高解像度のカメラ使用、手振れ防止技術向上、(可能ならば)簡易照明具の利用などの検討が必要だと考えました。

2019年6月23日日曜日

稲荷原式土器 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 160

この記事は2019.04.26記事「縄文早期撚糸文土器 稲荷原式土器の観察」の追補記事です。
千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室に展示されている縄文早期、前期土器の観察記録3Dモデルが出来ましたので、順次掲載し検討を加えています。

1 観察記録3Dモデル

稲荷原式土器 庚塚遺跡 観察記録3Dモデル
千葉県教育委員会所蔵
撮影場所:千葉県教育庁文化財課森宮分室
撮影月日:2019.05.27

稲荷原式土器 庚塚遺跡
千葉県教育委員会所蔵

2 稲荷原式土器に関する情報
小林達雄編「総覧縄文土器」から稲荷原式土器挿図と形式編年における位置資料を引用掲載します。

稲荷原式土器挿図
小林達雄編「総覧縄文土器」から引用

撚糸文系土器の形式編年
小林達雄編「総覧縄文土器」から引用

……………………………………………………………………
稲荷原式土器展示の様子


2019年4月26日金曜日

縄文早期撚糸文土器 稲荷原式土器の観察

縄文土器学習 95

縄文早期撚糸文土器を観察しています。
この記事では千葉県教育庁文化財課森宮分室閲覧室に展示されている稲荷原式土器を観察します。

1 稲荷原式土器の観察

稲荷原式土器 成田市庚塚遺跡出土
千葉県教育庁文化財課森宮分室閲覧室展示

稲荷原式土器 部分拡大 成田市庚塚遺跡出土
千葉県教育庁文化財課森宮分室閲覧室展示

粗い撚糸文の縦走が稲荷原式土器の特徴であるようです。
口唇部には模様がありませんが胴部との境に1列の刺突文(あるいは縄文?)があります。
復元土器をよく観察すると風化の進んだピース(被熱か?)とそうでないピースから構成されています。正面から見る限り完形土器が破壊されてそのまま埋もれ、構成破片の一部が被熱し、その全体が出土したように想定できます。
意図的に破壊され、被熱したものならば、その意味解釈・考察に大いに価値があると考えます。

2 メモ
2-1 希少資料
稲荷原式土器は土器図鑑(日本土器事典)には器形復元挿図が掲載されていません。またWEBでも復元土器の情報を見つけることができませんでした。森宮分室展示土器は希少な資料であるようです。森宮分室展示物が「へたな県立博物館より充実している」(談)証左の一つのようです。

2-2 出土遺跡
この土器が出土した遺跡は成田市庚塚遺跡です。

参考 成田市庚塚遺跡の位置と情報
庚塚遺跡は大須賀川と栗山川の分水嶺付近に立地し、谷津と台地面の双方を効率的に利用できる場所です。
この遺跡からは早期後半沈線文土器(大半は三戸式土器)が多量に出土しています。
狩猟民の生業に好都合な場所は旧石器時代→縄文草創期→縄文早期前半(稲荷原式土器の時代頃)→縄文早期中後半(三戸式土器の時代頃)→縄文前期と連続的に利用され、庚塚遺跡もそのような場所であったと想定できます。

2-3 稲荷原式土器出土情報
私家版千葉県遺跡データベースを検索すると稲荷原式土器出土遺跡は市原市馬立塚ノ台遺跡だけ1レコードのヒットとなります。成田市庚塚遺跡もヒットしません。主要出土物だけが記載されるというデータベースの特性上、このような結果になります。

……………………………………………………………………

参考 学習チェックリスト