2019年4月26日金曜日

縄文早期撚糸文土器 稲荷原式土器の観察

縄文土器学習 95

縄文早期撚糸文土器を観察しています。
この記事では千葉県教育庁文化財課森宮分室閲覧室に展示されている稲荷原式土器を観察します。

1 稲荷原式土器の観察

稲荷原式土器 成田市庚塚遺跡出土
千葉県教育庁文化財課森宮分室閲覧室展示

稲荷原式土器 部分拡大 成田市庚塚遺跡出土
千葉県教育庁文化財課森宮分室閲覧室展示

粗い撚糸文の縦走が稲荷原式土器の特徴であるようです。
口唇部には模様がありませんが胴部との境に1列の刺突文(あるいは縄文?)があります。
復元土器をよく観察すると風化の進んだピース(被熱か?)とそうでないピースから構成されています。正面から見る限り完形土器が破壊されてそのまま埋もれ、構成破片の一部が被熱し、その全体が出土したように想定できます。
意図的に破壊され、被熱したものならば、その意味解釈・考察に大いに価値があると考えます。

2 メモ
2-1 希少資料
稲荷原式土器は土器図鑑(日本土器事典)には器形復元挿図が掲載されていません。またWEBでも復元土器の情報を見つけることができませんでした。森宮分室展示土器は希少な資料であるようです。森宮分室展示物が「へたな県立博物館より充実している」(談)証左の一つのようです。

2-2 出土遺跡
この土器が出土した遺跡は成田市庚塚遺跡です。

参考 成田市庚塚遺跡の位置と情報
庚塚遺跡は大須賀川と栗山川の分水嶺付近に立地し、谷津と台地面の双方を効率的に利用できる場所です。
この遺跡からは早期後半沈線文土器(大半は三戸式土器)が多量に出土しています。
狩猟民の生業に好都合な場所は旧石器時代→縄文草創期→縄文早期前半(稲荷原式土器の時代頃)→縄文早期中後半(三戸式土器の時代頃)→縄文前期と連続的に利用され、庚塚遺跡もそのような場所であったと想定できます。

2-3 稲荷原式土器出土情報
私家版千葉県遺跡データベースを検索すると稲荷原式土器出土遺跡は市原市馬立塚ノ台遺跡だけ1レコードのヒットとなります。成田市庚塚遺跡もヒットしません。主要出土物だけが記載されるというデータベースの特性上、このような結果になります。

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参考 学習チェックリスト

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