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2020年8月24日月曜日

畑・灌漑施設を表現した縄文土器 3例目

 縄文土器学習 454

畑と灌漑施設を文様で表現している縄文土器の3例目の検討です。

1 縄文中期前半顔面装飾付深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡)

3Dモデル、展示の様子、動画、GigaMesh Software Frameworkによる展開図を示します。

縄文中期前半顔面装飾付深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡) 観察記録3Dモデル 

撮影場所:尖石縄文考古館 

撮影月日:2020.03.13 

5面ガラスショーケース越し撮影 

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 84 images

展示の様子

展示の様子 特殊モード写真

3Dモデルの動画

GigaMesh Software Frameworkで作成した3Dモデルの展開図

2 文様を構成する記号の解釈

縄文中期前半顔面装飾付深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡)の記号の解釈

・灌漑水路網の発達した畑システム(理想郷、桃源郷)を表現しています。

・文様は同じ構成が2回繰り返しになっていますが、一方は大きな把手部にある双眼の上に細長いくびれ隆線が合計3つ配置されています。もう一方は双眼だけです。

・双眼は水源として解釈します。

・「人面」の2つの目のように見える2つの細長いくびれ隆線は溢れて分流する水(水路)として解釈します。

・双眼から隆線が斜めに走り、その先端に水源が配置されています。この斜め隆線は特定の畑に水を運ぶ重要な導水路であることを、斜めという表現で、示唆しています。

・取水口の記号は例1、例2と同じです。

・畑の記号は沈線でメッシュを描いて示しています。

・畑の存在する場所が台地面であり、そこは水の手当てに苦労するところであるので、理想の畑を表現するとなると、水にあふれた畑になります。

3 感想

・2020.08.21記事「灌漑施設を文様として表現する縄文土器」及び2020.08.22記事「畑と灌漑施設を文様で表現した縄文土器 2例目」で検討した土器記号およびそれが表現している意味について、ほぼ同じような解釈をすることができました。

・縄文中期中部高地の人々が理想の畑イメージとして、灌漑水路網が発達して水に苦労していない畑を共有していたことを知ることができました。

・現実の畑と灌漑施設はどれほど原始的だったとしても、それが存在していたことは確実です。


2020年4月30日木曜日

縄文中期前半顔面装飾付深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 405

長野県茅野市の尖石縄文考古館で観覧した縄文中期前半顔面装飾付深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡)の観察記録3Dモデルを作成しました。

1 縄文中期前半顔面装飾付深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文中期前半顔面装飾付深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡) 観察記録3Dモデル
撮影場所:尖石縄文考古館
撮影月日:2020.03.13
5面ガラスショーケース越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 84 images

展示の状況

縄文中期前半顔面装飾付深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡)観察記録3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開写真
GigaMesh Software Frameworkを利用して展開写真を作成しました。

GigaMesh Software Frameworkによる展開写真

3 感想
「顔面装飾付」と名付けられていますが、自分には顔面をイメージして作られたという考えに確信を持てません。鼻にあたる部分が双眼の一部ですから顔として違和感を感じます。また「頭」にあたる部分にかんざし状の長円模様がありますが、この長円模様と「目」にあたる長円模様が同じです。
展開写真をみると全体文様構成が縄文中期前半抽象絵画文深鉢形土器(茅野市一ノ瀬遺跡)とよく似ています。また、藤内式深鉢形土器(伊那市金鋳場遺跡)ともよく似ています。顔面装飾付土器の把手と対向する双眼から斜め下に伸びた腕?(足?)状の部分が抽象絵画文土器や藤内式土器の菱形に対応するような印象を持ちます。
単なる土器表面を飾る文様というよりも、未解読文字のような印象を受けます。

参考 縄文中期前半抽象絵画文深鉢形土器(茅野市一ノ瀬遺跡)展開写真
GigaMesh Software Frameworkにより作成
2020.04.29記事「長野県茅野市で出土した抽象絵画文深鉢形土器

参考 伊那市創造館で観覧した藤内式深鉢形土器の展開写真 GigaMesh Software Frameworkにより作成
2020.02.02記事「藤内式深鉢形土器(伊那市西箕輪 金鋳場遺跡)の展開写真



2019年12月22日日曜日

花瓶のような縄文土器 3Dモデル

縄文土器学習 293

尖石縄文考古館に展示されている「花瓶のような土器」と形容される優美な姿の土器の3Dモデルを作成しました。

縄文前期深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡) 観察記録3Dモデル
撮影場所:尖石縄文考古館
撮影月日:2019.09.13
4面ガラス張りショーケース越しに撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 65 images(Masquerade機能利用)

撮影写真の一例

マスカレード機能設定状況
マスカレード機能により、対象物以外はマスクにより隠し対象物だけの計算をするため、より統合的でゴミの少ない3Dモデルを作ることができます。同時に大幅な時短が実現します。

土器の説明パネル

3Dモデル 立面のオルソグラフィック投影

感想
その優美さは館に展示されている他の縄文中期土器と比べて異次元ともいえるものです。
この土器(縄文前期)作者の土器制作に対する価値観と縄文中期土器作者の価値観は全く異なると想像します。
類似の器形土器として(時代は全く異なりますが)堀之内1式土器があります。それと比べるとこの土器の優美な曲線の特徴がよくわかります。

参考 堀之内式土器 山内清男編「日本先史土器図譜」

土器模様について
この土器の模様は頸部が波状に対応して4つの区画に区分されますが、模様は2つが同じで、他の2つはそれぞれ異なり、結局3つに分類できます。また胴部は7つの区画に区分され、胴部と頸部の模様は直接対応しません。
頸部、胴部区画区分と頸部と胴部の関係は作者の計画的意図が込められてデザインされていると直感できます。適当に模様を描いたとは到底考えられません。
この土器の模様の意味を今後検討して深めることにしますが、類似土器の模様との比較が大切であると考えます。

2019年12月20日金曜日

2点並んで出土した縄文中期深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 291

尖石縄文考古館に展示されている「2点並んで出土した縄文中期深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡)」の観察記録3Dモデルを作りました。強いガラス面反射にも関わらず思いのほか上等に作成できました。なお土器模様は複雑で、その意味を一瞥で理解することはとてもできません。

2点並んで出土した縄文中期深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡) 観察記録3Dモデル
撮影場所:尖石縄文考古館
撮影月日:2019.09.13
4面ガラス張りショーケース越しに撮影
私の3Dシーン写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 51 images(Masquerade機能利用)

撮影写真の一例

2点ならんで出土した様子の説明

感想と考察
1 2点並んで出土した意味
大小の土器が並んで出土する特徴的な例として次の2例をすぐに思い浮かべます。

異形台付土器 加曽利貝塚 加曽利B3式期
加曽利貝塚博物館展示

五領ヶ台式土器 上谷遺跡 埋納土器 上谷遺跡
八千代市郷土博物館展示

下ノ原遺跡の例も含めて、いずれも大小土器の様子から夫婦を思い浮かべてしまいます。
いずれのペア土器も、男女が会う(交合する)ことによる増殖(妊娠出産)にかかわる祭祀で使われたものであるととりあえず作業仮説的に空想しておきます。どれも2点が完形で出土していて、その点の共通性がどのような活動(思考)から導かれているのか、興味が湧きます。

2 2点土器の模様
2点の土器ともに真上からみると土器開口部そのものを「玉」とした「玉抱三叉文」を形成しています。また小土器には玉から球状物体が頭を出す立体的な「玉抱三叉文」を観察できます。出産の状況を暗示している土器です。
土器模様の詳しい観察はこれから行うことにします。
なお2点の土器ともに模様が4単位であり、それぞれ微妙に異なる様子はリズミカルであり、四季とか天体運航との関係があるのかどうか、気になります。

3 土器における出産状況の表現の感想
2点の土器ともに「玉抱三叉文」が表現され、小土器のほうは赤ん坊の頭が産道から見える様子を表現していて、模様とはいえリアルです。
それほど出産にこだわる意味が分かってきたような気がしています。
縄文人男女が(つまり全縄文人が)子孫を残すことが何物にも代えがたい使命であると考えていたのだと思います。子孫を残すことが人生の最大で最高の目的であったのだと思います。子孫を残せればそれこそが幸福であったのだと思います。
生まれた子供の多くが育つ前に死んでしまうため、できるだけ多く出産数を稼ぐ必要があります。そのため、出産そのものに対する喜びが大きかったのだと思います。
出産のリアルな表現、あるいは模様化抽象化した表現で土器を修景して、それで煮炊きして食事をすれば、その食事は特段においしかったのだと想像します。
食材が多少粗末でも、出産を描いた土器で調理すれば、出来上がった料理は美味しくなるという現実が存在していたのだと思います。

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参考 カメラ配置