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2022年10月25日火曜日

有吉北貝塚北斜面貝層 土器片錘・貝刃・石鏃の分布

 North Slope Shell Layer of Ariyoshi Kita Shell Mound

Distribution of weights of pottery fragment, shell blades, and arrowheads


Creating a map of the distribution of weights of pottery fragment, shell blades, and arrowheads on the north slope shell layer of Ariyoshi Kita Shell Mound clearly expresses the different characteristics of each, making it a very enjoyable learning experience. It was observed that the stone blade dumping sites were limited to two steep slopes.


有吉北貝塚北斜面貝層の土器片錘・貝刃・石鏃の分布図を作成するとそれぞれ異なる特徴があからさまに表現されて、とても楽しい学習になっています。石刃投棄場所は2ヶ所の急斜面に局限されていたように観察しました。

1 有吉北貝塚北斜面貝層 土器片錘・貝刃・石鏃の分布

有吉北貝塚北斜面貝層 土器片錘・貝刃・石鏃の分布

North Slope Shell Layer of Ariyoshi Kita Shell Mound

Distribution of weights of pottery fragment(brown), shell blades(purple), and arrowheads(green)


「有吉北貝塚北斜面貝層 土器片錘・貝刃・石鏃の分布」画像


「有吉北貝塚北斜面貝層 土器片錘・貝刃・石鏃の分布」動画

2 メモ

詳しい検討はこれからですが、次のような特徴が浮かび上がってきています。

・土器片錘は貝層が分布する範囲のほとんどの場所から出土しています。分布から土器片錘を特定の場所に投棄するというような活動は存在しないようです。不用土器片錘を貝殻投棄の際に随時一緒に投棄していたと考えました。土器片錘は石鏃などと比較すると素材入手に困ることもなく、いつでも入手かのうであり、モノとしての価値は低くかったと考えられます。谷頭部や斜面で捨てられた土器片錘が重力や水流で流路付近に集まって下流方向に一部流れ出ている様子が観察できます。

・ハマグリ製貝刃の分布は土器片錘とくらべると狭くなっています。また集中出土する場所が不規則に分布しています。今後詳しく検討しますが、ハマグリ製貝刃分布はハマグリ分布と同期しているように見受けられます。ハマグリ漁で大きなハマグリを見つけた時、手持ちの貝刃と交換していたと考えられますから、捨てられるハマグリ製貝刃はハマグリ貝といっしょに捨てられることが多かったと考えます。

・石鏃は谷頭部急斜面の1ヶ所と下流斜面の1ヶ所の特段に集中するところがあり、この付近が石鏃投棄場所として限定されていたと想像します。谷頭部急斜面は「斜面葬」の場所で、下流斜面も埋葬関連祭事が執り行われた場所です。石鏃という貴重品は祭事空間で主に投棄(埋納)されたと考えます。投棄(埋納)された石鏃は重力と流水の影響で流路付近に集まって下流に方向に移動していったと考えます。


2018年5月18日金曜日

学習課題 貝刃

前後の記事と直接関係しませんが、貝刃についての学習課題に気が付きましたので忘れないうちにメモしておきます。

1 1号屋外漆喰炉から出土したアワビ製貝刃について

1号屋外漆喰炉のアワビ製貝刃出土状況
大膳野南貝塚発掘調査報告書から引用

1号屋外漆喰炉のアワビ製貝刃
大膳野南貝塚発掘調査報告書から引用

1号屋外漆喰炉のアワビ製貝刃 写真
大膳野南貝塚発掘調査報告書から引用

学習課題
1 大膳野南貝塚後期集落の漁場(村田川河口干潟)ではアワビは採れません。房総南端産のアワビ(製貝刃)が持ち込まれたと想像できます。
このアワビの産地がどこで、どの集落を経由して大膳野南貝塚に持ち込まれたのか?
(市原市西広遺跡などの学習)
2 アワビ製貝刃は刃が摩耗しているので実用品として使われたと考えられます。アワビ製貝刃でさばいた(切った)魚(海産物)は何であるか?
(発掘調査報告書貝層中魚類調査結果の学習)
3 多数出土しているハマグリ製等の貝刃と用途の違いは何であるか?
(大型魚漁獲の推移、威信財としての効用)
4 アワビ製貝刃が1号屋外漆喰炉に置かれた理由は何であるか?
(1号屋外漆喰炉廃絶祭祀のお供え物=替わって新設された屋外漆喰炉を使った漁獲物加工効率化の祈願)
5 アワビ製貝刃が置かれた1号屋外漆喰炉と周辺遺構が全て貝層に覆われた理由
(貝層=貝塚を建設した理由、携わったのは誰か?果たして集落全員か?)

2 ハマグリ製等の貝刃について
学習課題
1 遺跡から多数出土するハマグリ製等の貝刃は漁獲した魚(海産物)をさばく(切る)ために用いられたと考えられます。この貝刃の出土状況は漆喰貝層有竪穴住居に限られ、漆喰貝層無竪穴住居からは出土していません。この結果を再度正確に精査確認します。
その結果に基づいて貝刃が漆喰貝層無竪穴住居から出土しない理由について検討します。

2018年2月26日月曜日

貝製品の出土状況 大膳野南貝塚後期集落

大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 31

貝製品の出土状況を発掘調査報告書記載から集計してみました。

1 貝製品出土状況

竪穴住居別貝製品出土状況

貝製品のイメージ(J63号竪穴住居の例) 発掘調査報告書から引用・加筆

貝製品内訳
10竪穴住居から66点の貝製品が出土します。そのうち82%が魚の鱗落としや包丁機能としての調理道具として使われた貝刃・へら状製品です。それ以外は装身具等となります。

2 漆喰貝層有無別集計
貝製品出土状況を漆喰貝層有無別に集計すると、貝製品出土竪穴住居はすべて漆喰貝層有竪穴住居になります。

漆喰貝層有無竪穴住居別貝製品出土数
この分布を立体的にみると次のようになります。

貝製品出土数の分布 1

貝製品出土数の分布 2

3 考察
貝製品が出土する竪穴住居は漆喰貝層有竪穴住居に限定されることが判りました。
自分にとっては大変貴重なデータです。
漆喰貝層無竪穴住居の家族は魚の調理をしていないと判断できます。
貝塚集落の中の半分以上の竪穴住居が漁撈・魚介類食・貝殻利用を完全にしていないことが明らかになりつつあると考えます。
それは発掘調査報告書では触れられていない(認識されていない)事象であり、新たな発見(文献解読における発見)であると直観します。
次の記事で大膳野南貝塚後期貝塚集落が生業の異なる2集団から構成されていたという発見について検討します。