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2020年9月27日日曜日

称名寺式土器(千葉市餅ヶ崎遺跡)の透視観察が実現

 縄文土器学習 477

偶然3Dモデルの透視観察ができるようになりました。3Dモデルの穴埋め方法をあれこれ工夫している最中、3Dモデルソフト3DF Zephyr Liteのこれまでほとんど見たことのない高密度点群の画面をたまたま見ました。この画面が土器内面と外面を点群で正確に表示しています。それに気が付きました。早速2020.09.26記事「サンダル状土製品を容器として見立てる」でその画面を動画にして掲載しました。この記事では土器内面まで撮影して作成した称名寺式土器3Dモデルで透視観察を実施してみました。

1 称名寺式土器(千葉市餅ヶ崎遺跡)の透視観察


称名寺式土器(千葉市餅ヶ崎遺跡)の透視観察 動画


参考 称名寺式土器(千葉市餅ヶ崎遺跡)3Dモデルの動画


3Dモデルテクスチャ画面と高密度点群画面の対比

高密度点群画面は対象物を透視する技術として意義づけることができ、それを使って対象物特徴の直観的理解が可能となると考えます。


3Dモデルテクスチャ画面と高密度点群画面の対比


参考 低密度点群画面

低密度点群は粗すぎて表現手法、観察技術としては使えないようです。

2 メモ

・3DF Zephyr Liteにおける高密度点群は3Dモデルの素となる原点群です。写真測量としての精度確保が高密度点群で担保されています。つまり高密度点群から浮かび上がる土器内面、外面の様子はまさに土器を透視して浮かび上がっている画面です。透視観察が比喩ではなく、科学的方法で実現しています。

・3DF Zephyr Liteではそれで作成した3Dモデルファイルなら高密度点群を利用することができアニメ表現することができます。しかし高密度点群そのものを3Dモデルファイルとして出力したり、Sketchfabにアップロードすることはできないようです。

・高密度点群だけの3Dモデルファイル出力ができるようになり、Sketchfabアップロードもできるようになれば、3Dモデルを活用した縄文土器観察学習における表現がより豊かになります。


2020年9月26日土曜日

サンダル状土製品を容器として見立てる

 縄文土器学習 475

2020.09.25記事「サンダル状土製品(千葉市内野第1遺跡)の周回写真撮影」でサンダル状土製品の精細な3Dモデルをつくり、じっくり観察して、原品を皮革製サンダルから注口付き片口土器に見立てし直しましたのでメモします。

1 サンダル状土製品3Dモデルから読み取った特徴

サンダル状土製品3Dモデルから次のような特徴を読み取りました。

・底面のカーブが著しい。

・内面の形状が円環状であり、平面が存在しない。

・先端部の貫通孔の回りが盛り上がっている。

・先端部外面に凹みがある。また先端部の一部が欠けているように表現されている。

・左右をつなぐバンド状部分(把手のような部分)の形状がほぼ円形である。

2 ミニチュア土製品「サンダル状土製品」が表現している原品

当初、サンダル状土製品は皮革製サンダルのミニチュアであると想定していましたが、1で読み取った特徴から原品は容器(土器)であると見立てることがより合理的であるととの考えに至りました。

この容器は手で持った時(掌握した時)小孔のある先端部が上を向くような位置で利用されたと想定します。


サンダル状土製品の掌握時の正位置

このサンダル状土製品は「注口付き片口」であると考えます。

先端部の小孔が注口であると想定します。

小孔が盛り上がった部分に開いていることから、この容器を水平に近づけ先端部に液体が到達した時、液体が小孔から直ちに流れるのではなく、盛り上がり部を越えて初めて流れる仕組みであり、いわば流れにくい構造をわざと作っていると想像します。

なお先端部外側の凹みと先端部の一部が欠けているように表現されているのは、そこに注口の詮のヒモが存在していたのではないだろうかと空想しました。

この容器の注口には普段木の枝などで作られた詮がしてあり、実際に容器の外に液体を注ぐときに初めて詮を抜いて注口から液体を外に注いだと想像します。


注口の詮が付属していた様子の想像

小さな注口から詮を抜いて液体を注げば、微量の液体を定量だけ外に注ぐことができます。

この容器は手に取って初めて容器正位置を保つことができるという異常な形状をしています。また微量の液体を定量だけ注ぐ機能を有していたと想定できます。このような特徴から、この容器は特殊な用途で使われる注口付き片口土器であると見立てます。

特殊用途の意味を妄想すれば、この注口付き片口土器に入れられた液体は極少量で効果を発揮する特効的劇薬であると考えます。死者(死んだ父母や子ども)が自分に憑依する祭祀(=死者が生き返る祭祀)とか、死者の国に行って帰ってくるような祭祀とかに使われたのかもしれません。単なる酒器としての片口以上の特殊性を有しているように想像します。

なお、サンダル状土製品原品が容器である可能性についての示唆を千葉市埋蔵文化財調査センター所長西野雅人先生からいただきました。自分の見立て変更の参考になる示唆であり感謝します。

3 サンダル状土製品(千葉市内野第1遺跡)容器掌握の正位置 観察記録3Dモデル

サンダル状土製品(千葉市内野第1遺跡)容器掌握の正位置 観察記録3Dモデル 

縄文時代後期~晩期前半、長口径5.8㎝、短口径3.8㎝、端部に円孔1ヶ所 

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター 

撮影月日:2020.09.11 

許可:千葉市教育委員会の許可による撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.007 processing 93 images


サンダル状土製品(千葉市内野第1遺跡)容器掌握の正位置観察記録3Dモデルの動画


サンダル状土製品容器掌握の正位置観察記録3Dモデル(高密度点群)の動画