2020年9月26日土曜日

サンダル状土製品を容器として見立てる

 縄文土器学習 475

2020.09.25記事「サンダル状土製品(千葉市内野第1遺跡)の周回写真撮影」でサンダル状土製品の精細な3Dモデルをつくり、じっくり観察して、原品を皮革製サンダルから注口付き片口土器に見立てし直しましたのでメモします。

1 サンダル状土製品3Dモデルから読み取った特徴

サンダル状土製品3Dモデルから次のような特徴を読み取りました。

・底面のカーブが著しい。

・内面の形状が円環状であり、平面が存在しない。

・先端部の貫通孔の回りが盛り上がっている。

・先端部外面に凹みがある。また先端部の一部が欠けているように表現されている。

・左右をつなぐバンド状部分(把手のような部分)の形状がほぼ円形である。

2 ミニチュア土製品「サンダル状土製品」が表現している原品

当初、サンダル状土製品は皮革製サンダルのミニチュアであると想定していましたが、1で読み取った特徴から原品は容器(土器)であると見立てることがより合理的であるととの考えに至りました。

この容器は手で持った時(掌握した時)小孔のある先端部が上を向くような位置で利用されたと想定します。


サンダル状土製品の掌握時の正位置

このサンダル状土製品は「注口付き片口」であると考えます。

先端部の小孔が注口であると想定します。

小孔が盛り上がった部分に開いていることから、この容器を水平に近づけ先端部に液体が到達した時、液体が小孔から直ちに流れるのではなく、盛り上がり部を越えて初めて流れる仕組みであり、いわば流れにくい構造をわざと作っていると想像します。

なお先端部外側の凹みと先端部の一部が欠けているように表現されているのは、そこに注口の詮のヒモが存在していたのではないだろうかと空想しました。

この容器の注口には普段木の枝などで作られた詮がしてあり、実際に容器の外に液体を注ぐときに初めて詮を抜いて注口から液体を外に注いだと想像します。


注口の詮が付属していた様子の想像

小さな注口から詮を抜いて液体を注げば、微量の液体を定量だけ外に注ぐことができます。

この容器は手に取って初めて容器正位置を保つことができるという異常な形状をしています。また微量の液体を定量だけ注ぐ機能を有していたと想定できます。このような特徴から、この容器は特殊な用途で使われる注口付き片口土器であると見立てます。

特殊用途の意味を妄想すれば、この注口付き片口土器に入れられた液体は極少量で効果を発揮する特効的劇薬であると考えます。死者(死んだ父母や子ども)が自分に憑依する祭祀(=死者が生き返る祭祀)とか、死者の国に行って帰ってくるような祭祀とかに使われたのかもしれません。単なる酒器としての片口以上の特殊性を有しているように想像します。

なお、サンダル状土製品原品が容器である可能性についての示唆を千葉市埋蔵文化財調査センター所長西野雅人先生からいただきました。自分の見立て変更の参考になる示唆であり感謝します。

3 サンダル状土製品(千葉市内野第1遺跡)容器掌握の正位置 観察記録3Dモデル

サンダル状土製品(千葉市内野第1遺跡)容器掌握の正位置 観察記録3Dモデル 

縄文時代後期~晩期前半、長口径5.8㎝、短口径3.8㎝、端部に円孔1ヶ所 

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター 

撮影月日:2020.09.11 

許可:千葉市教育委員会の許可による撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.007 processing 93 images


サンダル状土製品(千葉市内野第1遺跡)容器掌握の正位置観察記録3Dモデルの動画


サンダル状土製品容器掌握の正位置観察記録3Dモデル(高密度点群)の動画

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