2018年4月12日木曜日

土坑断面図画像を貼り付けたQGISレイヤの必要性

大膳野南貝塚後期集落 土坑の再検討 23

土坑目的検討のための空間分析では土坑断面図画像を貼り付けたQGISレイヤが必要であることをメモしておきます。

土坑目的のあぶり出しを目的としたkj法分析の途中で予察的に「縄文トイレの可能性のある土坑」群を抽出しました。

「縄文トイレの可能性のある土坑」群抽出結果 赤丸が「縄文トイレの可能性のある土坑」、緑丸はそれ以外の土坑

赤丸と緑丸が一緒になって列状にかたまって分布しているように見えるところが多くあります。
一部を拡大してみました。

「縄文トイレの可能性のある土坑」群抽出結果 赤丸が「縄文トイレの可能性のある土坑」、緑丸はそれ以外の土坑 (一部空間の拡大図)

縄文時代後期の「加曽利E4~称名寺古式期」から「堀之内2~加曽利B1式期」までの長期にわたる期間の土坑累積結果を表現していますが、このようにある空間に集中していることには何か直接、間接の関係がありそうです。
土坑の分布は竪穴住居の中間地点付近に多いので、竪穴住居から離れた場所にトイレを配置するという考えを持てば、それは赤丸の立地と整合します。
そのように考えると赤丸の近くの緑丸はもしかするとそれもトイレかもしれないのでその断面を確認する必要があります。
あるいはトイレではないけれども各種送り場(現代人社会に敷衍すると分別廃棄物集積場)かもしれません。
あるいは全く別の趣旨の土坑かもしれません。
このQGIS画面を眺めているだけでは緑丸の姿がわかりません。そもそも赤丸もそれが「縄文トイレの可能性のある土坑」であることがわかるだけでその断面はわかりません。

このような不都合を少しでも解消するために、次のような画面構成で空間分析をしています。

土坑目的を把握するための空間分析画面(3枚のモニター利用) 左からkj法画面、QGIS画面、データベース画面
QGIS画面では土坑番号も表示しているので、その土坑の断面を知りたいときはデータベース画面で土坑番号を検索すると直ぐに土坑断面等の情報がでてきます。操作は簡単でサクサクしているのですが、残念ながら同時に多数の土坑断面を見ることはできません。
赤丸の断面→その隣の緑丸の断面→さらにその隣の緑丸の断面→…と次々に表示して頭に記憶して考察するしかありません。まだるっこい操作-思考になります。

土坑の目的をあぶり出す思考を深めるためにはどうしてもQGIS画面上で土坑断面図を確認できるようにする必要があります。

そのために、QGISに土坑断面図を貼り付けたレイヤーをつくり、必要に応じてオーバーレイできるようにすれば、空間を意識した分析の強力な支援ツールになることが判りました。
土坑断面図画像を貼り付けたQGISレイヤの必要性(むしろ必須性)を理解しました。

QGIS 通常の土坑レイヤ(分類された点情報)    A
QGIS 土坑断面図を貼り付けたレイヤ  B
QGIS AとBをオーバーレイした時の画面
QGIS画面の縮尺を大幅に拡大した時には土坑断面図を鮮明に理解できますが、縮尺によってはサムネール図として空間一覧的に見ることができます。

2018年4月11日水曜日

ギリシャ壺投げと印西市西根遺跡土器破壊

1 ギリシャコルフ島の壺投げ
4月7日の日テレNEWS24というニュース専門TVチャンネルでギリシャコルフ島の「壺投げ」という行事を紹介していました。

ギリシャコルフ島の「壺投げ」 WEBサイト日テレNEWS24から引用

ギリシャコルフ島の「壺投げ」 WEBサイト日テレNEWS24から引用

ギリシャコルフ島の「壺投げ」 WEBサイト日テレNEWS24から引用

ギリシャコルフ島の「壺投げ」 WEBサイト日テレNEWS24から引用

ギリシャコルフ島の「壺投げ」 WEBサイト日テレNEWS24から引用
ナレーションでは古くから行われているイースター(復活祭)の行事で、ワインつくりに使った古い壺を捨て、新しい壺を使うことに由来するが、詳しいことは判っていないとのことでした。
現在では多くの観光客を集めて盛大に圧巻の土器破壊行為を楽しんでいます。
赤く塗られた大きな土器が次々と建物から投げ落とされ、最後に見物客がその破片を拾いご利益を願うとのことでした。

2 印西市西根遺跡の土器破壊
現代ギリシャ壺投げ行事ニュースを見て、心性の奥底で通底していると考えられる類似活動が千葉県印西市西根遺跡で存在していたと思考したことがありますので紹介します。

西根遺跡縄文時代遺構 谷底から出土したおびただしい破壊土器片 西根遺跡発掘調査報告書から引用

西根遺跡縄文時代遺構 谷底から出土したおびただしい破壊土器片 西根遺跡発掘調査報告書から引用
千葉県印西市の戸神川谷津にある西根遺跡から縄文時代加曽利B1式土器がおびただしく出土しています。使用完形土器がその場で破壊されたものです。

破壊土器片から復元された巨大土器
火炎跡、スス、コゲが残っています。

土器密集域程土器が粉々に破壊されていた様子を示す1m×1mグリッドデータ

巨大土器が破壊された様子の空想
補修しながら大事に使ってきた土器を一挙に破壊して、土器が破壊された時の音・振動・ほこり・破片飛散などの瞬間を縄文人も楽しんでいた、興奮していたと空想しました。

西根遺跡の縄文時代遺構は多数集落が一緒に行った広域堅果類収穫祭における廃用土器送りであり、新品土器を用意できた背景のもとでのお祭りであると想像しました。

ギリシャは葡萄酒の発酵、西根遺跡は堅果類のアク抜き煮沸という違いはありますが、食料生産必需土器が廃用になった時、それを大胆に破壊して土器を送る(土器の精霊を解放する)という行為が共通しています。そしておそらく、土器破壊行為の中で人々が興奮を味わうというお祭り気分の存在も共通していると考えます。
人類共通の土器送り心性が存在しているように考えました。

3 「土器送り」心性の例
西根遺跡では奈良時代遺構でも廃用墨書土器破壊が観察されます。

廃用墨書土器破壊の様子
川の岸辺から水面めがけて投げ込んで墨書土器を破壊した様子が観察されます。

西根遺跡周辺の奈良・平安時代集落遺跡の竪穴住居の多くからその覆土層に破壊土器、破壊墨書土器が出土していて、土器送りは奈良・平安時代では極めて一般的な習俗であったと考えられます。

現代でも自宅で亡くなった人を葬儀に出すとき玄関で茶碗を割る風習が残っていて、その風習のルーツは土器送りであると考えます。
花見におけるかわらけ投げのルーツも土器送りにあると考えます。

……………………………………………………………………
参考
祈りの空間 戸神川谷津の隠された秘密にせまる-西根遺跡 縄文~近世の自分流学習-

2018年4月10日火曜日

「縄文トイレの可能性のある土坑」の属性 予察検討

大膳野南貝塚後期集落 土坑の再検討 22

2018.04.06記事「縄文トイレの可能性のある土坑 kj法分析途中経過メモ」で、土坑断面図kj法分析において「縄文トイレの可能性のある土坑」を作業仮説的に仮に抽出してみたことをメモしました。
kj法分析自体がまだ途中ですから「縄文トイレの可能性のある土坑」といってもまだまだあやふやなものであることは自分が一番良く分かっています。
しかし、kj法をいかに精緻にすすめても、それは(虚弱な考古知識に基づく)自分の分類に関する思考をデータに投影したものですから、満足できる土坑分類に到達できる保証はありません。
むしろ、「縄文トイレの可能性のある土坑」というデータから自分に届けられたように感じる分類結果をある程度吟味して、その問題点を把握し、これから進めるkj法分析に活かすことが重要であると考えます。
そこで、「縄文トイレの可能性のある土坑」という抽出結果(分類結果)がどのような問題があるのか、どの程度蓋然性があるのか、検討してみました。あやふやさがどの程度なのか、自分自身で確認評価してみたということです。

1 「縄文トイレの可能性のある土坑」抽出結果(再掲)

「縄文トイレの可能性のある土坑」抽出結果 ピンク塗色したもの 264基中の38基

2 「縄文トイレの可能性のある土坑」の時期

「縄文トイレの可能性のある土坑」の時期
詳細な時期が読み取れる土器が出土する土坑は38基中6基であり、その割合は約16%にすぎません。その割合の少なさは後期全体の割合約38%の半分以下です。
「縄文トイレの可能性のある土坑」は時期が判明するほどの大きさのある土器片がほとんど出土しないことからこのようになります。それは土坑が送り場として利用されたり、あるいはその土坑自体の廃絶祭祀がほとんど行われていないからだと考えられます。
「縄文トイレの可能性のある土坑」の時期がほとんど判明しないことが縄文トイレの可能性があることの蓋然性を高めていると考えます。

●参考 「縄文トイレの可能性のある土坑」の出土物
・出土物なし…15
・土器細片微量出土…18
・土器細片微量出土+獣骨出土…1
・土器細片微量出土+石器出土…3
・石器のみ出土…1

参考 後期全土坑の時期

3 「縄文トイレの可能性のある土坑」の覆土層
38基土坑の覆土層は全て褐色~暗褐色~黒褐色土です。
このうち2基の土層に破砕貝が含まれています。土層に破砕貝が含まれる土坑は、その土坑が送り場として利用されたり、土坑廃絶時に祭祀が行われたことを物語りますから、破砕貝土層のある土坑が約5%であるという事実は「縄文トイレの可能性のある土坑」が送り場や廃絶祭祀のあった土坑ではないこと表現していて、トイレ利用という想定と整合的です。

4 「縄文トイレの可能性のある土坑」の体積
土坑をその体積で特大、大、中、小という4区分すると、「縄文トイレの可能性のある土坑」は3基が中土坑、35基が小土坑となります。
「縄文トイレの可能性のある土坑」はトイレとして利用できる大きさの範疇に入っています。

参考 土坑体積の類型区分

5 「縄文トイレの可能性のある土坑」とその他指標との関連
「縄文トイレの可能性のある土坑」にはフラスコ形土坑、円筒形土坑、周辺小ピット土坑は含まれていません。

6 「縄文トイレの可能性のある土坑」の空間分布

「縄文トイレの可能性のある土坑」の空間分布 赤丸が「縄文トイレの可能性のある土坑」
直観的には、竪穴住居の密集域に立地する「縄文トイレの可能性のある土坑」は例外的であり、ほとんどが竪穴住居から離れた場所に立地しているように観察できます。大局的には赤丸のように縄文トイレが存在していたと考えても不都合は生まれません。
なお、「縄文トイレの可能性のある土坑」数/竪穴住居軒数=38/93=0.4となり、計算上は竪穴住居2~3軒につきトイレが1つあったことになります。

7 考察
7-1 「縄文トイレの可能性のある土坑」の大局的蓋然性の確認
「縄文トイレの可能性のある土坑」として抽出したものの中に相当数の縄文トイレが含まれていると確信を深めることができました。
逆に表現すると、「縄文トイレの可能性のある土坑」として抽出したものの中に縄文トイレではないものがある可能性と、抽出しなかった残りの土坑の中に縄文トイレが含まれている可能性があるということです。

7-2 kj法で扱う因子を再検討して確定し、再度最初からkj法をやりなおす必要がある
現在行っているkj法で扱っている因子は主に断面形状ですが、純粋にそれだけではなく断面図上で表現されている貝層や規模なども半ば無意識的に因子に含めています。
kj法で扱う因子があやふやである側面があるために、上記検討で示したように「縄文トイレの可能性のある土坑」に貝層出土土坑や石器出土土坑が出てきているのかもしれません。
そこで、これから継続するkj法では断面形状、規模、貝層・漆喰有無、出土物有無を因子に入れて行うこととします。実作業的にはkj法をやりなおすことになります。

なお、kj法はその作業のなかからヒントを汲みだすために実施している活動ですから、自分の認識が進めば何回も同じような作業を反復することになると思います。またその結果(kj法画面)は「成果」にするようなものではないと考えます。「成果」はkj法で浮かび上がった多数因子を利用して将来行う多変量統計分析結果であるとイメージしています。

2018年4月8日日曜日

私家版土坑データベース完成

大膳野南貝塚後期集落 土坑の再検討 21

2018.03.30記事「私家版土坑情報編集物完成」で発掘調査報告書の土坑情報を編集して通常のページ編集物(pdf)として使えるようにしたことメモしました。
この記事では同じ情報をパソコンで検索やソートなどが自由にできるデータベースとしてまとめましたのでメモします。

データベース画面 表形式画面

データベース画面 レコード別画面 例1

データベース画面 レコード別画面 例2

データベースソフトはFile Makerを使いました。
これまで使っていたExcel版データベースの内容を全部取り込むとともに発掘調査報告書の文章記述、平面断面土層図、出土物を画像として取り込みました。

私家版土坑データベースは思った以上に簡易な労力でつくることができました。
これまでに明治大学墨書土器データベースを利用させていただいていますが、そのデータベースがFile MakerをつかっていたことからFile Makerに親しんできています。小字データベースや遺跡データベースなどもFile Makerでつくってきています。

早速「縄文トイレの可能性のある土坑」など自分の興味に基づいて使ったところその操作性は画像が多いにも関わらずサクサクしていて大変満足できます。
またなによりも思いがけない思考が沢山生まれ、データベースをつかいながら検討することが思考のレベルアップに資することが実感できました。
ある条件でソートしたとき、その土坑情報を即座に読めるという状況はページ編集物では得られない強力な思考支援機能です。

土坑に限らず竪穴住居についてもデータベース化して利用することにより飛躍的な思考力アップが期待できそうだと密かに直観できました。
遺構のデータベース化とそのQGIS展開により、発掘調査報告書から豊かな情報を引き出すことができると確信しました。

2018年4月6日金曜日

縄文トイレの可能性のある土坑 kj法分析途中経過メモ

大膳野南貝塚後期集落 土坑の再検討 20

2018.04.04記事「縄文トイレ発見か!!! 土坑断面図kj法分析」の続きです。

1 kj法分析の継続
264枚の土坑断面図の特徴をよく見ながら「似たもの同士」の島をより合理的に作っています。断面の形状は連続的に変化するにも関わらず、それを特定の言葉で類型化する作業を行っているのですが、出来るだけ統一した区分になるように何べんも見直して、断面図の所属先を入れ替えています。現時点でのkj法分析結果は次の通りです。

土坑断面図kj法展開 2018.04.06

2 トイレの可能性のある土坑の予察
底部ピット付1のなかで底部ピット端1と区分したものの中にトイレである可能性のある土坑が多いと考えましたが、「ピット」という言葉の有無にとらわれずに形状からトイレの可能性がある土坑を予察としてピックアップしてみました。

トイレの可能性のある土坑の抽出(予察) ピンク塗り部分

抽出結果を次に示します。

トイレの可能性のある土坑(予察) 底部端ピット1 その1

トイレの可能性のある土坑(予察) 底部端ピット1 その2

トイレの可能性のある土坑(予察) 底部端ピット1 その3

トイレの可能性のある土坑(予察) 底部中央ピット1

トイレの可能性のある土坑(予察) 丸底フライパン

トイレの可能性のある土坑(予察) 不規則底フライパン

トイレの可能性のある土坑(予察) 平底フライパン・平底皿・平底鍋

3 考察
kj法をくりかえして1枚1枚の断面図は所属する島がかなり入れ替わっています。今後も断面図形状の観察からかなり入れ替わる可能性があります。
この入れ替え作業ではより合理的な島づくりになっているという感想を持っていて、充実感を伴っています。

トイレの可能性があると直観されるものとkj法の島とはかなり一致していると考えます。トイレの可能性のあるもののトイレ蓋然性がより一層強まれば、kj法の有用性が確かめられたということになります。

トイレの可能性のある土坑が連続して作られている場合があり、トイレが大便で一杯になり、隣に新トイレを増築した様子を表現していると考えられます。
259a・259b
239・240・241・242・243
これらの連続形成土坑のトイレ蓋然性は相当程度高いと考えられます。
トイレが大便で一杯になればそれがトイレの寿命であり、その時に隣に新設トイレを作っていたことが正しければ、排泄物を汲み取って利用していた可能性は低くなります。植物の栽培がおこなわれていたとしても、その肥料として人糞を利用していたことはないということです。

次の記事でこれらトイレ可能性土坑の出土物や分布などについて検討してみます。



2018年4月4日水曜日

縄文トイレ発見か!!! 土坑断面図kj法分析

大膳野南貝塚後期集落 土坑の再検討 19

2018.04.03記事「土坑断面図kj法分析 中間感想」につづいてkj法分析を進めました。

1 底部ピット付タイプの展開
似たもの同士の土坑の島が5つ出来ましたが、そのうちの一つである底部ピット付タイプを展開してみました。

底部ピット付タイプの展開
下図に示したようにピットの数、ピットの位置などによって「似たもの同士」をさらに細分できました。

底部ピット付タイプの島の細分
底部ピット付タイプは底部ピット付1、底部ピット付2、底部ピット付多数の3つの島に区分できます。
底部ピット付1はさらにピットの位置で4つの島に区分できます。

2 底部端ピット1の検討
この記事では底部ピット付1のうち底部端ピット1について検討してみます。

底部端ピット1の島
画面右に1つだけ独立させておいてある259a土坑は発掘調査報告書ではピットの記述がありませんがピット存在とおなじ機能が読み取れる形状をしているので含めたものです。
土坑底部の端にピットが一つ存在するものが23もあります。
発掘調査報告書の断面図は必ずしもピットを通過していませんが、ピットを通過するものを例示すると次のようになります

底部端ピット1の例示 279号土坑
これらの土坑機能についてその規模から次のような想定が生まれました。
「底部端ピット1の多くはトイレかもしれない」
次のような利用状況を空想します。

279号土坑における排泄の空想 1

279号土坑における排泄の空想 2

土坑に木で2本足場を組み、2のように排泄した状況を空想すると、土坑形状は現代和式トイレと似たものになります。
ピットは大便の溜として、ピット以外の底部は小便受けとして機能します。

今後、底部端ピット1の出土物、空間位置など詳しく検討すれば縄文トイレ発見に向かう重要仮説を構築できそうです。

土坑断面図kj法が有用なヒントを提供してくれました。



2018年4月3日火曜日

土坑断面図kj法分析 中間感想

大膳野南貝塚後期集落 土坑の再検討 18

1 最初のkj法結果
大膳野南貝塚後期集落の土坑全264基の断面図(土層メモ付平面断面図)をIllustrator画面にばら撒いてkj法により「似たもの同士」を集めて島を作ってみました。

kj法結果 似たもの同士の土坑の島
次のような島ができました。

土坑の島
2018.04.01記事「土坑断面図kj法分析 粗ごなし」では皿形タイプ、中間形タイプ、円筒形タイプ、深円筒形タイプ、ピット付属タイプという用語をつかったのですが、この用語では自分がイメージする似たもの同士分けに合わないような気がしますので皿タイプ、フライパンタイプ、鍋タイプ、タンブラータイプ、底部ピット付タイプに変えました。

各タイプの例を示すと次のようになります。

平底皿

平底フライパン

平底鍋

平底タンブラー

底部ピット付1

2 感想
ア 皿タイプについて
皿タイプはモノの貯蔵のためとは考え難いです。
現段階では埋葬やモガリに関係したものが多いと直観しますが、そのような直観に妥当性があるのかどうか、出土物や空間関係等の他情報を総合して検討を深めるつもりです。
2018.03.15記事「土坑墓」参照

イ フライパンタイプについて
くびれフライパン(オーバーハングフライパン)があり、それはモノの貯蔵に関連していると推測できるのでフライパンタイプのなかに貯蔵機能を備えたものがあることは確実です。フライパンタイプと鍋タイプ、タンブラータイプの貯蔵に関する何らかの差異がどのようなものであるのか知りたいと思います。

ウ 鍋タイプとタンブラータイプについて
鍋タイプもタンブラータイプも貯蔵機能が主な機能であると考えますが、2つの間には機能の違いがあると直観しますので、その機能の違いについて検討を深めます。

エ 底部ピット付タイプについて
底部ピット付タイプはピットが無い場合とは異なる機能がついていると考え、独立させました。
底部ピットの存在は次のような機能の存在を想起させます。
・ピットに地下水が逃げることによる底面乾燥(乾燥を必要とするモノの貯蔵)
・貯蔵物から染み出る水分の排水
・排泄物の溜(トイレ)
・ピットに貯まる水の汲み取り(井戸)

オ 底部ピット付多数について
底部ピット付多数3基のうち2基は貯蔵や発酵機能などのための屋根付土坑であったと考えています。
2018.03.14記事「小ピットのある土坑」参照

カ 区分のあいまいさ
皿タイプ、フライパンタイプ、鍋タイプ、タンブラータイプの間の形状は連続変化していて切れ目はありません。ですからその間に引いた境界は自分自身の直観と恣意そのものです。厳密さはまったくありません。
しかし、平べったいものから深いものまでを4段階に分けたこと自体に意味があると考えます。もしこのような区分に意味があると判れば、あとから統計的手法でいくらでも厳密な区分定義を行い、微調整することが可能です。

キ 土坑機能に関連する要因
kj法分析を行う中で次のような要因が土坑機能を推察する上で重要であると感じました。しかしkj法では多変数を同時に扱えないので、これらの要因を含めてより総合的な多変量解析が必要であると感じました。kj法はそのための入口にすぎないと感じました。
・斜面に立地する土坑
・土坑の規模
・特殊立体形状の土坑(左右非対称形など)
・漆喰貝層
・出土物
・連続分布、集中分布

ク これからの分析
このkj法をもう少し精緻化してから、それに基づいたGIS分析をおこない、皿タイプや底部ピット付タイプの利用目的に迫りたいと思います。さらに見込があれば分類のための多変量解析にチャレンジしたいと思います。



2018年4月1日日曜日

土坑断面図kj法分析 粗ごなし

大膳野南貝塚後期集落 土坑の再検討 17

大膳野南貝塚後期集落の土坑全264基の断面図(土層メモ付平面断面図)をIllustrator画面にばら撒いてkj法を開始しました。目的は自分自身が納得できる合理的な断面類型区分を行い土坑機能検討に役立てるためです。

精細な検討をする前の粗ごなしが終わりましたのでメモします。

土坑断面図kj法分析 粗ごなしの画面上の経過

粗ごなしでは断面形を皿形タイプ、中間形タイプ、円筒形タイプ、深円筒形タイプ、ピット付属タイプの5つに分類できました。

土坑断面図kj法分析 粗ごなし
粗ごなしは264枚の断面図を「自分のモノにする」「自分の意識支配下に置く」ような意味あいを持たせる自分独自の行動です。
全て直観即決で似たものどうしの断面図を近くに寄せて島をつくります。間違いは後でいくらでも直しますから厳密さは全く求めません。
最初からこのような分類項目にしようという考えは一切ありません。最初から分類基準を設けてしまってはkj法になりません。
似た者同士を集めそれに名前を付けたら5つになったということです。

皿形タイプ 66基
皿型のように感じた断面図を集めたものです。

中間形タイプ 91基
皿型タイプと円筒形タイプの中間形状のものを集めたものです。中間形はさらにいくつかに区分できそうですが、今はこの状況でまとめておきます。

円筒形タイプ 46基
円筒形で浅いものを円筒形タイプとしました。

深円筒形タイプ 18基
円筒形で深いものを深円筒形タイプとしました。フラスコ形形状のものも含めます。

ピット付属タイプ 43基
底にピットが付属する土坑はピットがないものと比べて特定の機能が付いていると考えられることから、独立して集めたいという直観があり集めました。

粗ごなしで生まれた5タイプは分析を深める過程でそのまま残存することは無いと考えますが、まずは5タイプに分けたことを記録しておきます。