2021.07.10木更津干潟で行われた令和3年イボキサゴ採取会で採取したイボキサゴの観察記録3Dモデルを作成しました。
1 イボキサゴ 観察記録3Dモデル
イボキサゴ 観察記録3Dモデル2021.07.10木更津干潟で採取
2021.07.15撮影
令和3年イボキサゴ採取会(7月)の様子
イボキサゴ採取の様子
イボキサゴ撮影の様子
イボキサゴ観察記録3Dモデルの動画
2 感想
ア イボキサゴ模様・色彩の多様さ
千葉市埋蔵文化財調査センター所長西野雅人先生からいただいたイボキサゴ採取会資料に次の記述があります。
「イボキサゴの模様や色は個体ごとに違っています。この特徴は二枚貝にはよく見られますが巻貝ではきわめて珍しいです。巻貝のほうがきれいなものが多いですが基本的に同じ色をしているんです。」
確かにどのイボキサゴも同じ模様・色彩をしているものはありません。初めて知りました。
イ イボキサゴ模様・色彩の美しさ
イボキサゴは小さなものですが美しい巻貝として感じることができます。水に濡れている時はより色彩が鮮やかになります。よく見ると模様に小突起が連続しているものもあります。極端にいえば1つ1つが宝石のような感じすらします。
このような「美しい」と感じる気持ちは縄文人にもあったに違いありません。
…………………
このように思考している中で、誰かがささやくような心理感覚のなかで、縄文人がイボキサゴを大切なものとして保存したものが出土した例を印旛郡市文化財センター研究紀要2で見たことがあることを思い出しました。
坂戸草刈堀込遺跡発見の台付鉢形土器と収納されていた貝殻
高橋誠・林田利之・小林園子(2001):縄文集落の領域と「縄文流通網」の継承 -佐倉市坂戸草刈堀込遺跡発見の晩期貝層から-、印旛郡市文化財センター研究紀要2 から引用
イボキサゴを主体とする貝殻が収納されていた土器が出土した遺跡は海岸から直線距離10㎞以上はなれています。研究では貝を交易で入手したことは確実であると論じています。自分は、交易で入手した貝殻のうち特にきれいなモノを選んで収集し、土器に入れて大切にしていた縄文人がいたと理解します。
ウ 実の採りにくさ
イボキサゴの実(肉)の採りにくさを身をもって体験しました。楊枝等で引っ掻けても、2本の楊枝でつまんでも中実全部を引張りだすことはほとんど不可能です。このような特性から、イボキサゴの実の食べ方は他の貝とは違うようだと理解できました。自分はこれまで、アサリやシジミのように時間をかけて小さな実をとりだしていたに違いないと考えていました。しかしそのようにすると、実が途中で切れて、半分以上は殻に残ってしまい、食べられません。有吉北貝塚におけるイボキサゴの出土状況をみると、イボキサゴの破砕率は他の貝種と比べて特段に高くなっています。このことから、採ったイボキサゴを容器にいれてそのまま破砕して、そこに水を入れて、殻と実の比重の違いを利用して実(肉の部分+ドロドロの内蔵部分)だけを巧みに溶出利用していたと想像できます。実といっても肉とドロドロ内蔵が一緒ですから、魚醤のような利用の仕方を想定すると、単純なタンパク源ではない、付加価値の高い製品を作っていたと想像できます。
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