縄文社会消長分析学習 116
有吉北貝塚北斜面貝層の貝層断面について学習しています。この記事では貝層区分結果を統計的に分析します。
1 貝層区分データが掲載されている貝層断面
北斜面貝層の貝層区分データが掲載されている貝層断面は次の4断面です。
第2断面
第6断面
第11断面
第14断面
貝層区分のうち、貝殻を含有している区分数は第14断面を除く3断面で合計54あります。
2 貝層分類別区分数
54貝層区分を貝層分類(純貝層、混土貝層、混貝土層の分類)別にみると次のグラフになります。
貝層分類別区分数
このグラフから純貝層→混土貝層→混貝土層の順に断面積が大きくなり、従ってその容積も大きくなることが推察できます。今後作業では実際に断面積を計測して、その様子を確かめる予定です。
3 主体となる貝種別区分数
主体となる貝種区分数をまとめると次のようになります。
主体貝種別貝層区分数
ハマグリ→ハマグリ・イボキサゴ→イボキサゴの順になります。貝層区分からみると有吉北貝塚北斜面貝層では主要貝種はハマグリとイボキサゴに絞られます。
4 混土率と破砕率
貝層区分データの多くに混土率と破砕率が掲載されています。そのデータをまとめると次のようになります。
混土率-破砕率
純貝層とは混土率0%、混土貝層は混土率≦50%、混貝土層は混土率>50%と定義されているようです。
また純貝層あるいはそれに近い混土貝層では破砕率は大変低くなっています。この状況を次の図に書き込みました。
混土率-破砕率 書き込み
純貝層あるいはそれに近い混土貝層では破砕率が大変小さく、混土率が大きくなると破砕率はばらけます。破砕率が大きなものも小さなものも存在します。この事象が何を意味するのか、重要な検討課題になると考えます。
自分の問題意識は、食料として利用した後の貝殻をそのまま投棄すれば純貝層が形成されますが、その純貝層が元となり風雨にさらされて、あるいは水流に流されて混土貝層や混貝土層が形成されることはかなり限られていると想定します。むしろ破砕率の大きな混土貝層や混貝土層の多くは縄文人の営為(現代風にいえば土木工事)でつくられたのではないかと考えています。
5 イボキサゴの破砕率が大きいことの理由
貝層区分の説明の中にイボキサゴの破砕率がハマグリなどとくらべて特に高いと注記されているものがあります。
「イボキサゴの破砕が多い」旨特記のあるもの
これまでの検討で、イボキサゴは他の貝と異なり貝が小さいため、実(肉)を取り出しにくいので、貝殻ごと潰してそれに水を入れて比重により貝殻と実を分離した可能性を想像しています。
6 貝層区分の例
第2断面D
混土貝層、混土率20%、破砕率35%
第2断面P2
混土貝層、混土率35%、破砕率50%
第2断面O
混貝土層、混土率60%、破砕率60%
第2断面P
混貝土層、混土率70%、破砕率60%
7 感想
北斜面貝層の混土貝層、混貝土層の成因を解き明かすことが北斜面貝層形成のナゾにせまります。
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