縄文社会消長分析学習 113
有吉北貝塚発掘調査報告書には北斜面貝層断面図が全部で15図掲載されていて、その内訳は縦断面図1枚、横断面図14枚です。横断面図4枚には詳細な観察記録が付いています。この貝層断面図を詳細に分析して見ることにします。この記事では縦断面図1枚と詳細観察記録のある横断面図4枚を観察して、直観レベルの感想をメモして、自分が何に興味を持っているのか意識してみるとともに、これからの作業を企画します。
1 北斜面貝層主要断面図観察から浮かぶ感想
北斜面貝層主要断面図
ア 混貝土層の形成の仕方
縦断面図左端(ガリー谷頭付近)では次のように、貝層形成直前は切り立った侵食面が、貝層形成後は混貝土層による空間充填が観察できます。これから、混貝土層は縄文人が貝殻をばら撒いて、一方斜面上方から土が崩れ落ちてきて、それらが混ざりあってできたと一つの考えが浮かびます。
混貝土層の出来方
しかし、それほど多量の土が上方斜面から好都合に落ちてくるものであるのか、自分には大きな疑問となります。
縄文人が貝殻を撒いたことは確実です。一方その場所に土が移動してきたことも確実です。
自分はその土の移動に縄文人が意図的にかかわっているのではないだろうかと疑っています。
横断面6、11における左岸斜面の混貝土層も同様に土の供給に縄文人がかかわっている可能性を検討し、否定なり肯定なりの判断をしなければなりません。
イ 遺物多出層準としての混貝土層
遺物が多出する層準が混貝土層であり、純貝層からの遺物出土は少なくなっています。この事象をデータで確かめるとともに、その理由について知る必要があります。
ウ 大局地層変化の意味
北斜面貝層の大局地層変化は下から混貝土層→混土貝層→純貝層という順番になっています。なぜ最初に混貝土層が形成されるのか、その意味を探りたいと思います。
エ 土層、砂層について
土層、砂層堆積の背後に縄文人による土層、砂層移動というかかわりがあるのか、ないのか検討を深め結論を得ることにします。
2 今後の作業
ア 基礎情報として断面別に混貝土層・混土貝層・純貝層・土層・砂層等項目別面積を求めます。それから斜面貝層全体の項目別容積の分布を推計します。
イ アの結果から断面別に貝殻量と土・砂量の比を求め、その分布について分析します。
ウ 近隣貝塚の斜面貝層断面図を収集し、有吉北貝塚北斜面貝層断面図と比較してみます。
3 メモ
一言でいうならば、北斜面貝層とは単純に貝殻を捨てた場所ではなく、貝殻を捨てる行為を軸に展開された人工埋め立て活動現場であると作業仮説しています。この作業仮説を肯定できるか、否定できるか決着させて結論を得たいと希望しています。
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