2022年11月13日日曜日

有吉北貝塚の中期集落終末期(加曽利EⅢ式期)の不思議

 The Mystery of the Late Ariyoshi Kita Shell Mound Village Final Stage (Kasori EIII Period)


Mystery deepened by studying the shell layer on the north slope of Ariyoshi Kita Shell Mound.

Although the number of pit dwellings decreased sharply at the end of the Ariyoshi Kita Shell Mound (Kasori EIII period), the volume of discarded shell layers was almost the same as in EII. At the same time, clam shell layers were formed. Clams also get bigger. The relationship between resources and population is strange.


有吉北貝塚北斜面貝層の学習をする中で、深まった不思議がありますのでメモします。

有吉北貝塚終末期(加曽利EⅢ式期)に竪穴住居数は急減するのに、投棄貝層体積は前の期である加曽利EⅡ式期とほとんど同じで、かつハマグリ純貝層が形成されます。ハマグリの大きさもEⅠやEⅡより大きくなっています。資源と人口の関係考察の重要情報になると、おそらく思います。

1 貝層形成時期の把握

貝層が観察される全ての貝層断面について、時期別土器破片3D分布情報と対照して層位の時期区分を行いました。時期区分はEⅢ(土器群12)、EⅡ(土器群10・11)、S(土器群2~9)の3区分です。


貝層時期区分結果 断面2の例


時期区分検討の様子 断面2の純貝層がEⅢであると推定した根拠 (Blender3D空間) 第2断面付近の加曽利EⅢ土器破片分布

時期区分検討の様子 断面2の純貝層がEⅢであると推定した根拠 (Blen


der3D空間) 加曽利EⅢ土器破片は純貝層より下位に位置している。


時期区分検討の様子 断面2の純貝層がEⅢであると推定した根拠 (Blender3D空間) 加曽利EⅢ土器破片は純貝層より下位に位置している。

この検討により、北斜面貝層にみられるハマグリ主体純貝層は加曽利EⅢ式期に形成されたことがわかりました。


加曽利E式期に形成されたハマグリ主体純貝層

2 貝層の時期別体積

断面別に検討した貝層形成時期情報を貝層断面別体積情報に投影すると次のようになります。


断面別時期別貝層体積

この時期別貝層体積を集計して竪穴住居数と対照させると次のようになります。


時期別竪穴住居数と貝層体積の関係

このグラフに撚り、竪穴住居軒数当り(人口当り)貝層体積を考えると、S→EⅡ→EⅢと時間が経過するたびに貝投棄量が急増します。EⅢ期の竪穴住居軒数当り(人口当り)貝層体積は信じられないほどの貝収量を得ていたことが判ります。そして収穫した貝がハマグリが多く、それを純貝層で残しています。

3 竪穴住居数と貝の大きさ

次に発掘調査報告書に掲載されている貝大きさグラフと竪穴住居数グラフを対応させたグラフをつくりました。


竪穴住居数と貝の大きさ

このグラフから、竪穴住居数がピークとなった加曽利EⅠ式期のハマグリ大きさが最も小さく、EⅡ→EⅢと大きくなります。発掘調査報告書では人口減による採集圧が弱まったことと資源管理が行われた2つの要因によりハマグリの大きさが回復した旨分析されています。

4 考察

ハマグリ大きさ情報と時期別貝層体積グラフ統合して考えると、次のような事象を想定できます。

●想定できる事象…広域地域で、加曽利EⅠ式→加曽利EⅡ式→加曽利EⅢ式と竪穴住居数が減少した(人口が減少した)。その結果、内湾・干潟広域で採集圧が弱まりハマグリの大きさが大きくなった。加曽利EⅢ式になると近隣集落の多くが消滅して最後まで残存した有吉北貝塚集落の人々は人口は急減して見る影もないが、貝採集は競争相手がいない「取りたい放題」であった。その結果、小人数で莫大なハマグリを採集し、それを純貝層として残した。

このような想定を行うと加曽利EⅡ式→加曽利EⅢ式へ人口が急減した主な要因が食料資源にかかわらないことになります。社会維持や発展の最大原動力である食料の確保はできるのに、人口急減が生じています。人口急減について、外部要因(感染症など)も考える必要がありそうです


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