2022年11月26日土曜日

有吉北貝塚北斜面貝層の土器投棄パターン検討

Examination of the pottery dumping pattern of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound

The topography and stratigraphy of the shell layer on the northern slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound was estimated from the shell layer cross-section. Then, the patterns of earthenware fragment dumping were classified into the slope dumping type and the valley bottom sedimentation type. Finally, I deduced the reality of the dumping pattern.

有吉北貝塚北斜面貝層における土器破片出土位置の地形・貝層層位を貝層断面図から推定して、土器破片投棄パターンを斜面投棄型と谷底堆積型に分類して把握し、投棄パターンの実態を推察しました。
1 投棄パターンの分類

投棄パターン分類
斜面地形、斜面貝層から出土する土器破片は斜面上から投棄された土器の一部であると考え、斜面投棄型として分類しました。
低平地形、谷底堆積貝層から出土する土器破片は次の2つの要因によりその場に堆積したものと考え、合わせて谷底堆積型として分類しました。
1 斜面投棄型の土器破片が重力と水流により低平地形、谷底堆積貝層まで落ちてきた(流れてきた)
2 低平地形、谷底堆積貝層の空間で土器が破壊されその場、あるいは水流の影響を受けて下流に堆積した
2 阿玉台式(第2~5群)土器の投棄パターン

阿玉台式(第2~5群)土器の投棄パターン
土器破片数は12点だけですが、谷頭部における斜面投棄型5点が特徴的です。
3 中峠式(第6群)土器の投棄パターン

中峠式(第6群)土器の投棄パターン
土器破片数は88点でそのうち斜面投棄型が79点を占めます。斜面上部から下方に土器を投げ、その破片が散らばった様子が観察できます。中峠式(第6群)土器投棄パターンから、斜面から投棄された土器破片が谷底低平地に到達するものはわずかであることが推察できます。
4 加曽利EⅠ式(第7・8群)土器の投棄パターン

加曽利EⅠ式(第7・8群)土器の投棄パターン
土器破片数は20点で11点が斜面投棄型、9点が谷底堆積型となります。
5 加曽利EⅡ式(第9群)土器の投棄パターン

加曽利EⅡ式(第9群)土器の投棄パターン
土器破片総数は31点で斜面投棄型18点、谷底堆積型13点です。斜面投棄型は谷頭部と下流左岸(西岸)斜面に集中しています。
6 加曽利EⅡ式(第10・11群)土器の投棄パターン

加曽利EⅡ式(第10・11群)土器の投棄パターン
土器破片総数は445点です。この数値は実際に出土した土器破片数の一部のようです。斜面投棄型120点、谷底堆積型319点となり、谷底堆積型が斜面投棄型の2.7倍になります。中峠式土器の投棄パターンから、斜面に投棄された土器破片のうち谷底低平地にまで到達するものはごく少数であると考えられるので、加曽利EⅡ式(第10・11群)土器は縄文人が谷底部までやってきて、そこで土器を破壊したり、投棄したりすることが多かったと推察できます。
斜面投棄型は主に谷頭部と下流左岸斜面に集中します。谷底堆積型は谷頭部と下流左岸斜面を結ぶ谷底部です。ほとんどの貝層断面図では谷底部で貝層-土層境界面がみられ、それは水流が流れる時の流心線に対応すると考えますが、谷底堆積型はその貝層-土層境界面をまたいで分布することから、水流に起因する分布ではなく、人為的分布(場所を特定した投棄)であるこを推察できます。
土器破片全体の分布パターンはS字状のカーブを成していますが、それは縄文人の動線を示していて、その背後にはS字状動線が生じるような野外祭壇や祭場の分布が存在していたと推測します。
7 加曽利EⅢ式(第12群)土器の投棄パターン

加曽利EⅢ式(第12群)土器の投棄パターン
土器破片数は106で谷底堆積型が64点で斜面投棄型41点を上廻ります。谷底堆積型の分布重心は加曽利EⅡ式(第10・11群)土器より下流に移動します。
8 阿玉台式~加曽利EⅢ式(第2~12群)土器の投棄パターン

阿玉台式~加曽利EⅢ式(第2~12群)土器の投棄パターン
2~7の情報集成図です。この図から「土器投棄パターンからみたゾーン区分」を試みてみました。

有吉北貝塚北斜面貝層 土器投棄パターンからみたゾーン区分
斜面投棄ゾーンは4ゾーンから構成していると考えます。土器投棄量からみて谷頭投棄ゾーンと斜面投棄ゾーン3の2つがメインです。谷底投棄ゾーンは谷頭投棄ゾーンと斜面投棄ゾーン3を連結するように分布します。各ゾーンにはそれぞれ異なった機能が存在していたと推測します。その機能の姿には他の出土遺物情報と土器情報を総合的に分析することで迫りたいと思います。
9 中峠式(第6群)土器投棄パターン 3Dモデル
中峠式(第6群)土器投棄パターン 3Dモデル
有吉北貝塚北斜面貝層
黄色…斜面投棄型 79
赤色…谷底堆積型 8
3D model of Nakabyo style (Group 6) pottery dumping pattern
North Slope Shell Layer of Ariyoshi Kita Shell Mound
Yellow... Slope dump type 49
Red... Valley bottom deposition type 8
10 参考 加曽利EⅡ式(第10・11群)土器投棄パターン 3Dモデル
加曽利EⅡ式(第10・11群)土器投棄パターン 3Dモデル
有吉北貝塚北斜面貝層
黄色…斜面投棄型 120
赤色…谷底堆積型 319
黒色…不明 6
3D model of Kasori EII style (10th and 11th groups) pottery dumping pattern
North Slope Shell Layer of Ariyoshi Kita Shell Mound
Yellow... Slope dump type 120
Red... Valley bottom deposition type 319
Black...Unknown 6
11 参考 加曽利EⅡ式(第10・11群)土器投棄パターン3Dモデルの動画

加曽利EⅡ式(第10・11群)土器投棄パターン3Dモデルの動画

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