2025年5月27日火曜日

貝層発達史(貝層区分と土器型式)

 Shell layer development history (shell layer division and pottery type)


A 3D spatial analysis of the slope shell layer on the north slope of the Ariyoshi Kita Shell Mound revealed that the shell layer development period was from the Nakabyo to Kasori EⅡ new stage. This is a groundbreaking achievement in that it established a method to link shell layer division and pottery type.


有吉北貝塚北斜面貝層の斜面性貝層について、土器型式との対応を3D空間で分析し、貝層発達時期が中峠式~加曽利EⅡ式新段階であることを明らかにしました。貝層区分と土器型式のリンク方法を確立した点で画期的成果です。

1 貝層区分と土器型式の対応

土器型式情報付土器3D分布モデルと貝層区分を3D空間の中で対応させる

土器3D分布モデルと貝層区分(貝層大区分及び斜面性貝層細区分)を3D空間の中で対応させて、貝層区分別土器型式データ数をカウントして整理しました。カウント範囲は検討空間から1m離れた領域まで含めました。

カウント方法は、検討空間内(10断面と11断面の間、幅2m)は貝層区分3Dモデルに内包されるデータをカウントしました。検討空間外(10断面と11断面からそれぞれ1mまで離れた領域)のデータはそれぞれの断面にオルソ投影して、その場所の貝層区分でカウントしました。

おおよそ、次の対応が観察できました。


貝層と土器型式との関係 表


貝層と土器型式との関係 断面表示

二次堆積層、斜面性貝層R1層、S1層:中峠式

斜面性貝層R2層:加曽利EⅠ式

斜面性貝層S2層:加曽利EⅡ式古段階

斜面性貝層S3層:加曽利EⅡ式新段階

データ(土器3D分布モデル)が流路性貝層に偏っていることと、座標精度がもともと良くないというハンデはあるものの貴重な情報が得られました。斜面性貝層発達の時期的枠のイメージを持つことができました。


R3層と流路性貝層の急激な堆積が対応する

なお、流路性貝層で加曽利EⅡ式中段階が9、加曽利EⅡ式中~新段階が12とデータ数が多くなっています。このデータの空間的層位は流路性貝層の堆積が急激に進行した部分(画像の緑色の部分)であることから、斜面性貝層R3層(褐色貝層)の時期に対応することになります。この対応(R3層と加曽利EⅡ式中段階、中~新段階の対応)はR3層下位のS2層が加曽利EⅡ式古段階に対応し、R3層上位のS3層が加曽利EⅡ式新段階と対応する結果と整合的です。

このことから、R3層の土器型式対応を間接的ながら、次のように考えることができます。

斜面性貝層R3層:加曽利EⅡ式中段階、中~新段階

11断面付近で急激な堆積があり、上流で激しい浸食作用があった時期に上流で大量の加曽利EⅡ式中段階、中~新段階土器が投棄されたことが、結果的に判明しました。

2 貝層と土器型式の対応の考え方


貝層と土器型式の対応の考え方

ポンチ絵に示すように、出土した土器の型式を指標とする場合、斜面性貝層では大雑把ですが、地層累重の法則が成立し、流路性貝層は見かけ上成立しないと考えます。斜面性貝層でも、斜面上部における浸食の影響がありうるので、出土した土器型式の最新のものがその貝層に対応することになります。

3 メモ

有吉北貝塚北斜面貝層の斜面性貝層について、土器型式との対応を3D空間で分析し、貝層発達時期が中峠式~加曽利EⅡ式新段階であることが、今回分析で新たに明らかになりました。この結果のみならず、貝層区分と土器型式のリンク方法を確立した点でも今回研究成果は画期的です。今回の3D空間分析方法は本邦貝塚研究で初出であると考えます。本邦考古学一般でも、地層と土器型式関係の3D空間分析方法という点で初出かもしれません。


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