2025年12月15日月曜日

有吉北貝塚北斜面貝層 堆積順番による貝層区分

 Shell Layers on the North Slope of the Ariyoshikita Shell Mound: Shell Layer Classification by Depositional Sequence


The shell layer classification of the north slope of the Ariyoshikita Shell Mound (pure shell layer → shell-rich layer → shell-poor layer) is based on the volume ratio of shell content. This classification is only valid at a specific cross-section. Expanding the cross-section or crossing cross-sections makes it impossible to trace the continuity of the shell layers. Therefore, I decided to change the shell layer classification to one based on depositional sequence. This opens up the possibility of tracing the shell layer classification across the entire surface.


有吉北貝塚北斜面貝層の貝層区分(純貝層→混土貝層→混貝土層)は貝殻分量の体積比に基づいています。この区分は特定断面ポイントだけで通用します。断面を拡げたり、断面をまたぐと貝層連続性を追跡できなくなります。そこで、貝層区分を堆積順番に基づく区分に変更することにしました。これにより貝層区分を面的に追跡できる可能性が生まれます。

1 発掘調査報告書における貝層区分


発掘調査報告書における貝層区分

発掘調査報告書における有吉北貝塚北斜面貝層の貝層区分(純貝層→混土貝層→混貝土層)は貝殻分量の体積比に基づいています。この区分は観察した特定断面ポイントだけで通用します。断面を拡げたり、断面をまたぐと貝層連続性を追跡できなくなります。これは斜面に投棄された全ての貝層が重力と葡行により貝殻分量の体積比が上から下に向けて大きく変化するためです。

セクション図には次のような記載がみられ、貝層が上部では貝混入率が低く(混土率が高く)、下部で高い(純貝層になる)という現実の姿が表現されています。

「高い方の部分には混土率が高く、下方にしたがい純貝層に近い」(S1について)

2 堆積順番に基づく貝層区分


堆積順番に基づく貝層区分

発掘調査セクション図では、貝層堆積順番が分層されています。この分層を現場写真の様子と対応させることができます。現場写真から貝層層相の様子(白い貝層か、黒い貝層かなど)を読み取ることができます。これらの情報、つまりセクション図分層区分と現場写真の対応から、堆積順番を示す貝層区分が可能であると考え、11断面でその試案を作成しました。

なお、貝殻が土と混ざりあっているのか(混土貝層、混貝土層)、砂と混ざりあっているのか(混砂貝層、混貝砂層)という区分が結果として、貝層形成の時期と関係していることを指摘できます。つまり、11断面で言えば、混砂貝層、混貝砂層は11断面附近ガリー侵食中から後の一定期間に、混土貝層、混貝土層はその後のガリー侵食の影響が収まった時期に対応しています。

3 貝層発達段階


貝層発達段階

3-1 第1段階

・11断面附近におけるガリー侵食の進行→基底砂層形成、崩落層形成、崩落砂層形成(貝混入、貝投棄あり)、混貝砂層形成(斜面性貝層)、混砂貝層形成(ガリー流路最下部)

・ガリー流路(断面垂直方向)のダムアップ→崩落層前面にK層(黒褐色土)形成

・ガリー流路ダムアップの解消→K層(黒褐色土)の上部侵食、混砂貝層形成(ガリー流路)

3-2 第2段階

・R1層(黒褐色混土貝層)、S1層(混土貝層)、R2層(黒褐色混土貝層)、S2層(混土貝層)形成

(R1層、S1層、R2層、S3層に対応するガリー流路堆積層がない。上流でのガリー侵食が虚弱で、堆積物材料の供給が無かったことを示唆する。)

3-3 第3段階

・R3層(黒褐色混土貝層)、混土貝層(ガリー流路堆積層)形成

(ガリー流路堆積が急速に進み、その時期がR3層に対応する。急激なガリー流路堆積は上流でのガリー侵食活発化による堆積物材料の多量供給を示唆する。)

3-4 第4段階

・S3層(混土貝層)形成

(混土貝層の量が多く、S3層形成期間が長かったか、貝採取量が多かったかなどの検討が課題となる。)

(ガリー流路堆積がほとんどない。上流におけるガリー侵食が虚弱で堆積物材料の供給がほとんどなかったと想定される。)

4 貝層形成に関わる主な営力


貝層形成に関わる主な営力

5 メモ

・R1層、S1層、R2層、S2層、R3層、S3層、K層の命名だけでは説明が困難なので、他の貝層も今後全て命名することにします。

・第1段階前半の事象つまり11断面附近でのガリー侵食進行にともない崩落層が生じた機構について検討を深めることにします。崩落層には貝や土器が含まれています。崩落層中に「ブロックではない貝層」も報告されていますから、崩落層形成中にも貝層投棄が行われた可能性があります。

・第1段階後半の地象つまりK層の形成やその上部侵食などの地学事象はとてもダイナミックであるので、検討を深めることとします。

・11断面貝層の検討からガリー流路上部の侵食の様子を推定することができそうです。

・貝層検討の次のステップは、11断面の検討を前後の断面(10断面、剥ぎ取り断面、12断面)に敷衍していくことです。


0 件のコメント:

コメントを投稿