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2023年2月25日土曜日

土偶(東金市鉢ヶ谷遺跡) 観察記録3Dモデル

 Clay figurine (Hachigaya Site, Togane City) Observation record 3D model


I created a 3D model of a clay figurine excavated from the Hachigaya site in Togane City, which has features similar to the national treasure Jomon Venus. I was lucky enough to see the back. What is the donut shape on the back?


国宝縄文のビーナスに似た特徴をもつ東金市鉢ヶ谷遺跡出土の土偶の3Dモデルを作成しました。運よく背面も観察できました。背面ドーナツ状形状は何でしょうか。

1 土偶(東金市鉢ヶ谷遺跡) 観察記録3Dモデル

土偶(東金市鉢ヶ谷遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター令和4年度特別展「遺物から見える地域文化の発達 縄文時代前期後葉~末葉」

撮影月日:2023.02.16


展示の様子


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3DF Zephyr v6.513で生成 processing 201 images

Clay figurine (Hachigaya site,Togane City) Observation record 3D model

Location: Chiba Buried Cultural Property Research Center Reiwa4 Special Exhibition "The development of local culture seen from relics: the latter half of the early Jomon period to the final period of the early Jomon period" 

Shooting date: 2023.02.16

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.513 processing 201 images


3Dモデルの動画

3Dモデルの画像

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開


GigaMesh Software Frameworkによる展開

3 展示説明

展示では次の説明が掲示されています。

「土偶・深鉢・鉢

県指定文化財

東金市教育委員会所蔵

出土遺跡 鉢ヶ谷(はちがや)遺跡

(千葉県東金市小野)

現在の東金インターチェンジ近くにある遺跡。縄文時代中期の土坑(どこう)から出土した。土坑の底面付近から土偶(どぐう)が1点、ミニチュアの深鉢(ふかばち)1点(五領ヶ台Ⅱ式)、鉢が2点まとまった状態で出土。土偶のお腹付近は何かで突いたとおもわれ、器面が荒れている。一緒に出土した鉢の中には白色の塗膜(とまく)が残っており、同色の液体が入っていたと考えられる。このことから、鉢で土偶のお腹を突く行為がおこなわれたと想定される。これほど雄弁(ゆうべん)に土偶を用いた儀式の内容をしることができる資料は大変貴重である。出土した土偶の形は国宝縄文のビーナスに代表される長野方面の土偶とよく似ており、胎土も地元のものとは異なるので、交流により持ち込まれた可能性もある。」

・観察検討メモは次の記事に掲載します。

4 参考 撮影ポイント


撮影ポイント

3Dモデルは運よく背面も結像しました。


2020年12月4日金曜日

縄文中期初頭椀形土器(東金市鉢ヶ谷遺跡)の観察

 縄文土器学習 505

千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」で展示されている鉢ヶ谷遺跡土坑出土椀形土器の3Dモデルを作成して観察しました。

1 縄文中期初頭椀形土器(東金市鉢ヶ谷遺跡) 観察記録3Dモデル 

縄文中期初頭椀形土器(東金市鉢ヶ谷遺跡) 観察記録3Dモデル 

土坑出土遺物、千葉県有形文化財(2002) 

撮影場所:千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」 

撮影月日:2020.11.10 

ガラス面越し撮影 

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.014 processing 101 images


展示の様子


展示の様子


展示の様子


3Dモデルの動画

2 メモ

・展示では内面が良く見えるように斜めに置かれていますが、3Dモデルでは正置しました。

・注口が付いています。

・上村秀明・西野雅人著「東金市鉢ヶ谷遺跡出土の中空円錐形土偶について-土坑に一括埋納された中期初頭の土偶と土器」(千葉縄文研究6、2016.04.30、千葉縄文研究会)では次のように記載されています。

「丸底で口径7.1 ㎝、器高3.6 ㎝を測る。黒色の内面全体に白色系の付着物がみられる。やや黄色味を帯びた白色ないしクリーム色で、塗膜状を呈する。付着の仕方は2 種類以上あり、写真4-dのようにやや幅広い痕跡がつく部分や、cのような刷毛目状の部分がみられる。刷毛目状の痕跡は、0.5 ㎜弱のピッチで、1 単位8 条以上を確認できる。付着した物質の正体は不明だが、こうした痕跡を残すことから、かなり粘性を持った液体とみられる。付着の仕方が一様でないことから、内面を塗彩したものではなく、椀形土器は、この液体を何かに塗布するときに使われたパレット状の容器であり、塗布には指や刷毛等が使われたと推察される。外面の器面調整は丁寧に行われているが、内面は付着物により観察できない。」


参考 3Dモデルでみる刷毛目状痕跡

・上記論文を読むまでは、内面の大きな「傷」模様はこの土器の研究者が分析用に付着物を削り取った跡であると想像していました。しかしそうではなく、出土したそのままの状況であることがわかりました。土偶と小型土器3点のセットについての興味がますます増大します。

・土偶祭祀の小道具が小型土器3点であるとの見立てが強まります。

2020年12月3日木曜日

縄文中期初頭舟形土器(東金市鉢ヶ谷遺跡)の観察

縄文土器学習 504 

千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」で展示されている鉢ヶ谷遺跡土坑出土舟形土器の3Dモデルを作成して観察しました。

1 縄文中期初頭舟形土器(東金市鉢ヶ谷遺跡) 観察記録3Dモデル 

縄文中期初頭舟形土器(東金市鉢ヶ谷遺跡) 観察記録3Dモデル 

土坑出土遺物、千葉県有形文化財(2002) 

撮影場所:千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」 

撮影月日:2020.11.10 

ガラス面越し撮影 

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.014 processing 113 images


展示の様子


展示の様子


展示の様子


3Dモデルの動画

2 メモ

・展示左に把手があり、手前側が欠けています。

・器面の外面・内面ともに微小の点が密生していて、写真をアップすると粘土に多量の砂(鉱物)がふくまれていて、それが点としての突起、あるいはその砂(鉱物)が脱落した跡の点としての穴であることがわかります。このような砂(鉱物)が多量に含まれている粘土で作られた土器を、それとして意識して観察したのは、自分ははじめてです。


舟形土器内面の拡大写真

・全体の形状について自分がイメージするものはカラスウリの実やアケビの実を半分にした形です。もしかしたら食用や薬用に使ったこれらの有用実をイメージした木製品容器がつくられ、その木製品容器のミニチュアを土器として作成し、祭祀道具として使ったのかもしれません。


舟形土器オルソ投影画像(上から)


2020年11月29日日曜日

土坑から一緒に出土した小型深鉢(東金市鉢ヶ谷遺跡)

 縄文土器学習 502

千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」で展示されている鉢ヶ谷遺跡土坑出土遺物4点の1点である小型深鉢の3Dモデルを作成して観察しました。

1 縄文中期初頭小型深鉢(東金市鉢ヶ谷遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文中期初頭小型深鉢(東金市鉢ヶ谷遺跡) 観察記録3Dモデル

土坑出土遺物、千葉県有形文化財(2002)

撮影場所:千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」 

撮影月日:2020.11.10 

ガラス面越し撮影 

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.013 processing 103 images


展示の様子


展示の様子


説明パネル


3Dモデルの動画

2 メモ

・この土器は展示パネルに説明されているように、房総ではめずらしい中期土偶と一緒に完形で出土した土器3点のうちの1点です。

・この土坑は祭祀的意味がある空間(墓?)で、土偶をメインとして小型深鉢、舟形土器、椀形土器が祭壇のように配置されて利用された跡(埋葬祭祀跡?)であると想像します。

・小型深鉢は祭祀専用の容器であり、実生活で使う土器とは全く別につくられたミニチュア製品であると考えます。

・西野雅人著「縄文中期土偶からみた集団の地域間交流」(第10回北陸貝塚研究会)によればこの深鉢は口径・器高11㎝で五領ヶ台Ⅱ式後半に比定されています。


2020年11月5日木曜日

中空土偶[河童形土偶](東金市鉢ヶ谷遺跡)の3Dモデル作成と観察

 縄文土器学習 489

千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」に展示されている中空土偶[河童形土偶](東金市鉢ヶ谷遺跡)の3Dモデルを作成し観察しました。この土偶は縄文中期前葉頃における房総と中部高地を結びつける重要遺物であると考えています。

1 中空土偶[河童形土偶](東金市鉢ヶ谷遺跡) 観察記録3Dモデル

中空土偶[河童形土偶](東金市鉢ヶ谷遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文中期五領ヶ台式期、土坑出土遺物

撮影場所:千葉県立中央博物館令和2年度企画展「ちばの縄文」

撮影月日:2020.10.27

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.009 processing 70 images


展示の様子


実測図

「千葉県の歴史 資料編 考古4(遺跡・遺構・遺物)」から引用


3Dモデルの動画

2 観察

詳しい観察は順次行いますが、一瞥して、腹中央孔の回りに花びら様の模様が存在し、それをよく見ると意図的に表面部分だけが破壊された跡であることがわかります。破壊される前の土偶の表面(原面)がところどころに残っていますから、かなり手加減して破壊されています。破壊は丸い鉛筆程度の棒(あるいは石器?)でつついて破壊したように観察できます。

印象としては完全な土偶の一部を意図的儀式的に壊して土偶に埋納したと想定できます。同じ河童形土偶の系譜に位置する「縄文のビーナス」(長野県茅野市棚畑遺跡)も足を一部壊して埋納されています。


腹中央の意図的破壊部分の様子

3 問題意識

この土偶に関して次の記事で、縄文中期における房総と中部高地の関係を次のように考察しました。

2020.07.09記事「「縄文のビーナス」と系譜を同じにする千葉県出土土偶

2020.07.15記事「房総における縄文中期土偶の検討課題

・中央高地中期土偶の影響力が房総土偶拒否地帯(貝塚地帯)を飛び越えて九十九里に及んでいます。影響力が飛び地的に及んでいる様子は銚子産コハク製品が中期土偶の本拠地・本山ともいえる棚畑遺跡に届いていることからも明白です。

・房総中期貝塚社会が土偶を拒否している様子と土偶文化の影響力を執拗に拡大しようとしている中央高地社会の「対立」「せめぎ合い」「土地争い」のような様相を感じることができます。

・中空土偶[河童形土偶](東金市鉢ヶ谷遺跡)の実物観察とその観察記録3Dモデル作成という予期しなかった機会に遭遇しましたので、房総縄文社会と中部高地縄文社会の関係解明に取り組みたいと思います。


縄文中期土偶検討イメージ図