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2020年3月7日土曜日

文様浮彫展開写真を楽しむ

縄文土器学習 369

縄文土器の3Dモデルからその展開写真をGigaMesh Software Frameworkにより即座に作成できるようになり、縄文土器学習が加速しています。
この活動の中で、単純な展開写真だけを利用するのではなく、展開写真をより見やすいものにする工夫をしています。その一つが展開写真(2次元)に改めて立体性を付与して文様を浮き彫りにする工夫です。それをこのブログでは文様浮彫展開写真と名付けています。
文様浮彫展開写真は文様をより理解しやすいように写真を調整しているのですが、その調整の過程で様々な色調のものができます。それらの多種色調写真をみていると、学習上の興味とは離れて、観賞対象としての価値もあるような気もしてきましたので密かに楽しんでいます。
この記事では加曽利貝塚博物館常設展に展示されている称名寺式深鉢形土器(千葉市餅ヶ崎遺跡)の文様浮彫展開写真を紹介します。

1 称名寺式深鉢形土器(千葉市餅ヶ崎遺跡) 観察記録3Dモデル

称名寺式深鉢形土器(千葉市餅ヶ崎遺跡) 観察記録3Dモデル
撮影場所:加曽利貝塚博物館
撮影月日:2019.12.27
許可:加曽利貝塚博物館の許可により全周多視点撮影及び3Dモデル公表
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 93 images
2 GigaMesh Software Frameworkによる展開写真作成

GigaMesh Software Frameworkによる展開写真作成の様子

GigaMesh Software Frameworkで作成した展開写真 テクスチャモデル

GigaMesh Software Frameworkで作成した展開写真 ソリッドモデル

3 文様浮彫展開写真の作成

文様浮彫展開写真の作成プロセス
ブログ「花見川流域を歩く番外編」2020.02.24記事「GigaMesh Software Frameworkで作成した縄文土器展開写真に立体性を与える方法

テクスチャモデルのハイパス処理画像

ソリッドモデルのハイパス処理画像

文様浮彫展開写真 その1

文様浮彫展開写真 その2

文様浮彫展開写真 その3

4 感想
文様浮彫展開写真その1が学習上の必要性により開発した最終画像です。
文様浮彫展開写真その2とその3は別の調整(テクスチャモデルとソリッドモデルのオーバーレイ方法調整)により作成したものです。
その2やその3はその1の補助画像として作成したものです。土器の色合いや撮影環境によってはその1ではなくその2やその3などの補助画像によって細部がよりわかりやすくなることがままあります。
縄文土器の画像を見る際に、「天然色」(現在存在するモノの色)に近い画像(その1)は大事ですが、画像解析処理感が激しい画像(その2やその3)は学習から離れて親しみや興味をもつことがあります。
いつの間にか創作物のような対象物として眺めていて、その美しさに見とれて楽しんでいるのだと思います。


2020年2月15日土曜日

許可撮影 称名寺式深鉢形土器(千葉市餅ヶ崎遺跡)観察記録3Dモデル

縄文土器学習 346

加曽利貝塚博物館から許可をいただき、常設展展示土器である称名寺式深鉢形土器(千葉市餅ヶ崎遺跡)の周回多視点撮影を行い観察記録3Dモデルを作成しましたので検討します。

1 称名寺式深鉢形土器(千葉市餅ヶ崎遺跡)に関する問題意識と3Dモデル作成
加曽利貝塚博物館常設展展示の称名寺式深鉢形土器(千葉市餅ヶ崎遺跡)については、昨年の加納実先生講演で興味深いお話を聞きし、興味を持ちました。また展示観察によりすでに何回か記事にし、3Dモデルも2回ほど作成してます。
2019.02.17記事「加納実先生講演「縄文時代中期終末から後期初頭の様相」学習メモ
2019.05.14記事「称名寺式土器 餅ヶ崎遺跡
こうした興味のなかで、展示土器の沈線が特段に深く、その影響が土器内面にデコボコとして反映されているのではないだろうかという見立てをしました。
しかしガラス越し撮影による3Dモデルではその観察を十分にすることができませんでした。
そこでこの土器を机の上に置き周回多視点撮影して難の少ない3Dモデルを作成し、沈線と土器内面のデコボコの関係を精細に検討することを決意しました。
加曽利貝塚博物館に土器閲覧申請したところ、その許可を得て撮影が12月末に実現しました。さらに作成した3DモデルからGigaMesh Software Frameworkによる展開写真作成等が可能となり問題意識に関する解明が進みだしましたので、その内容をメモすることにします。

2 3Dモデル
次のとおり土器外面すべて(ただし底部は除く)と内面全てを3Dモデルにすることができました。3Dモデルとしての出来ばえは優良なものとなりました。


称名寺式深鉢形土器(千葉市餅ヶ崎遺跡) 観察記録3Dモデル
撮影場所:加曽利貝塚博物館
撮影月日:2019.12.27
許可:加曽利貝塚博物館の許可により全周多視点撮影及び3Dモデル公表
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 93 images

撮影写真の1枚

カメラ位置図

3 展開図作成
GigaMesh Software Frameworkにより3Dモデルの展開写真を外面、内面について作成しました。

土器外面展開写真

土器内面展開写真
(視点は土器内部に存在するので外面展開写真と左右が逆になっています。)

4 沈線文様の抽出
深く広い沈線を外面展開写真でトレースしました。

沈線トレース図
深く広い沈線で囲まれたJ字(逆J字)模様や+模様が浮かび上がります。この模様には縄文が施されています。つまり縄文が図として利用されています。称名寺式土器以前は縄文は地として利用されてきましたからデザイン面における大きな逆転が称名寺式土器で行われたといわれています。
また2段構成文様の上段の+模様の一つの両端が跳ね上がり他の+模様と差別的に描かれています。この差別からこの土器の正面は両端跳ね上がり+模様のところであると推察します。

土器正面の推察
J字(逆J字)模様は植物の芽を、+模様は植物の葉を連想しました。

次の記事でこの沈線模様が土器内面凹凸に影響しているかどうか検討します。

2019年8月21日水曜日

称名寺式深鉢形土器の観察記録3Dモデル作成

縄文土器学習 241

習志野市の藤崎3丁目南遺跡D地点から出土した称名寺式深鉢形土器の観察記録3Dモデルを作成しました。
360度近くの写真撮影が出来ましたので3Dモデルとしては質の高いものができました。

称名寺式深鉢形土器(埋甕) 藤崎3丁目南遺跡 観察記録3Dモデル
撮影場所:習志野市教育委員会
撮影月日:2019.08.20
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.506 processing 36 images

称名寺式深鉢形土器(埋甕) 藤崎3丁目南遺跡の様子
この土器は柄鏡型住居の入口部から埋甕として出土し、内部から骨粉状物質が見つかりました。胞衣壺として使われ周産期幼児の亡骸が入れられたのかもしれません。

称名寺式深鉢形土器資料 発掘調査報告書から引用
藤崎3丁目南遺跡D地点埋蔵文化財発掘調査報告書(2014、習志野市教育委員会)

この土器は習志野市で最初の称名寺式土器出土例です。
称名寺式期は加曽利EⅡ式期という縄文最高人口ピークと次のピークである加曽利B2式期の間の最も人口衰退した時期であり、この時期の集落の様子の学習のきっかけになる土器です。

習志野市教育委員会ご担当者の心こもった対応によりこの土器を観察することができました。こころからお礼申し上げます。
8月20日は幾つかのラッキーが重なったわたしにとっての特異日となりました。

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参考
千葉県土器形式別遺跡数