ラベル 道具 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 道具 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2019年9月19日木曜日

道具と意欲

縄文土器学習 262

観念思考のメモです。
昨晩たまたま目に飛び込んできたテレビ番組で道具と意欲に関する発言があり、縄文土器について連想が及びましたのでメモします。

1 武器と攻撃意欲
長岡藩河合継之助がアメリカ商人からガトリング砲(機関砲)2門を購入し、結局北越戦争でそれを使い、戦いに敗北していった様子をテレビ歴史番組で放送していました。その番組のなかで女流脳学者が「武器を持つと人の攻撃意欲は100倍も強まることがある」旨説明していました。その通りだと納得しましたが、武器に限定しないで道具一般でも同じことが言えるのではないだろうかと直観しました。

2 道具(3Dモデル作成パソコンソフト)と学習意欲(3Dモデル作成意欲)
自分に当てはめると道具(3Dモデル作成パソコンソフト)を入手してから、学習意欲(3Dモデル作成意欲)が急激に高まったことは明白です。
道具(ある事柄を実現する機能)の所持が意欲(ある事柄を実現したいと考える欲)を増進させることは自分に限らず人類共通であると直観します。

3 デザインされた縄文土器と食事満足感増幅意欲
土器を発明した縄文人が、ある時デザインされた土器、装飾を施した土器の方が煮沸機能一点ばりの土器より食事がおいしいことを発見したのだと思います。
土器の機能に食事満足感増幅機能(煮たものをよりおいしく食べる機能)があることを発見したのです。
それ以来、食事満足感増幅意欲を満たすために波状口縁とか大きな把手とか、さらに火焔土器にいたるまでの各種デザインを施し、食事満足感増幅意欲を満たしてきたと考えます。
食事を美味しく食べ、食べた後の満足感を得るために土器にいろいろなテーマで形状デザインを施し、装飾を加えたのだと思います。
煮沸してそこから食べ物を汲みだすという実用機能だけからみると著しい障害があったとしても、その土器を使うことによってトータルの食事満足感が大きかったのだと思います。

現代のファッションショーなどみると、生活活動では不自由であることが明白な衣服が多く出品されます。しかし、それを着ることで実用不自由さを十分にカバーして満足感を得られるので出品されるのだと思います。極端なデザインの縄文土器と極端なデザインの現代衣類は双方ともに実用性を犠牲にしても人々に満足感を与えることが出来るという点で共通しています。

土器に各種情念とか神話とかを投影してデザインし、実用機能はある程度は犠牲にしたのが縄文社会であったと考えます。

4 実用機能土器の誕生
精製土器と粗製土器という区分がありますが、粗製土器とはつまり実用土器であるということです。
個人で使う土器はまだしも、組織(集団)で使う土器(いわば業務用土器)に「いちいち時間をかけて情念を投影するといった余裕はないよ。俺たちは忙しいんだ。」という縄文社会が縄文中期以降増えたと考えます。
・精製土器と粗製土器の割合を分析すれば、その社会の組織性(集団で保存食をつくるなどの組織活動の発展)が判るかもしれません。

尖石縄文考古館展示縄文土器
 

2019年1月26日土曜日

茂原市渋谷貝塚出土木製品

縄文木製品学習 1

縄文木製品の学習を始めることにします。趣旨は西根遺跡出土イナウ似木製品と同様の縄文木製品が千葉県遺跡から出土しているかどうか調べることにあります。
縄文後期イナウ似木製品の意匠と解釈」参照
学習方法は私家版千葉県遺跡DB(原典はふさの国文化財ナビゲーションダウンロードデータ)から木製品出土遺跡を検索して、その遺跡の発掘調査報告書記載データを調査する方法です。
なおイナウ似木製品の類似製品を見つけ出す学習ですから丸木舟、弓など利用目的が明白な木製品は扱いません。
この記事では茂原市渋谷貝塚出土木製品を学習します。

1 渋谷貝塚の概要

渋谷貝塚の位置

渋谷貝塚の位置
渋谷貝塚は九十九里浜海岸平野の最も内側の第一砂堤の内側の沖積低地に位置します。

トレンチ断面 3T
「茂原市渋谷貝塚発掘調査報告書」(平成8年度、千葉県教育委員会)から引用
遺物包含層にかかる発掘断面の概要は次のようになります。

上層 黒褐色泥炭層・・・遺物包含層、堀之内式が圧倒的
中層 貝層・・・ハマグリ・チョウセンハマグリ・ダンベイキサゴ、破砕貝が多い。貝層直上から貝層中に多くの獣骨(シカ・イノシシのほかクジラ、サメ)出土
下層 黒褐色泥土層・・・遺物包含層、遺物少ない、加曽利E式主体

このようなトレンチが崩壊したとき、上層の黒褐色泥炭層から木製品が出土しました。

2 木製品

木製品
「茂原市渋谷貝塚発掘調査報告書」(平成8年度、千葉県教育委員会)から引用

木製品写真
「茂原市渋谷貝塚発掘調査報告書」(平成8年度、千葉県教育委員会)から引用
発掘調査報告書の記載はつぎのようになっています。
「8は3Tの遺物包含層から出土した杭状木製品である。下半部の加工痕は、かなり平滑な仕上げがなされており、比較的鋭利な工具で加工したことが窺える。出土当初は杭と考えたが、杭にしては短く不安定な形態をしており、加工が入念である。所属時期については、出土状況が明確でないので断定はできないが、土器の出土状況や木製品自体の加工の具合から、縄文時代の所産である可能性を指摘しておく。」
「長さ430.00㎜、幅69.00㎜、厚さ-、重量-、材質(未鑑定)」

3 メモ
・握りの部分と本体部分が分かれ、かつ角度がついています。本体部分の先端は平べったくなっています。
・握りと本体の間に角度がついているのでテコの原理を利用する、あるいは物に当てやすい(殴打しやすい)など、腕の力を利用する道具のようだとの印象が最初に浮かびます。
・根茎類を掘る道具と考えると本体が膨らんでいて不都合です。
・魚叩き棒(鮭叩き棒)はバット形のものが多いですが、WEBを検索すると本体部分が広がっているものもあります。生き物を殴打する道具の可能性も考えられます。しかし単純殴打ならば先端の平べったくなった部分は不必要です。
・先端の平べったくなった部分は口を開ける(狭い切り口からこじ開ける)ような機能であるかもしれないという空想もうまれます。
・クジラやサメが出土している貝塚ですから、それら大型動物の解体道具かもしれません。
・全体の形状が機能を表現しているように見える特定製品のような感じを受けますから、全国遺跡木製品をくまなく調べれば必ず類似品がみつかり、その用途を特定できるに違いないと考えます。
・イナウとは関係ないようです。