縄文木製品学習 9
1 企画展観覧
市立市川考古博物館で2019.07.06~09.08の期間開催されている企画展「大地からのメッセージ-外かん自動車道の発掘成果-」を観覧してきました。
この企画展に先行する遺物一部展示を観覧したり、関連文化講演会を聴講したりしていますので大いに期待して観覧しました。2019.07.13記事「市立市川考古博物館主催縄文文化講演会学習メモ」
会場は市川歴史博物館の2階です。想像した以上に多用な遺物が展示され、自分の期待感以上で、好奇心を大いに掻き立て、満たしてくれる展示内容でした。
パンフレット(300円)も充実しています。
企画展パンフレット(A4)
土器についてみれば縄文早期から後期までの多様な出土物が展示され、土器学習を進めている自分にとってはじっくりみたいものばかりです。しかし今回は限られた時間ですから観覧は一番興味のある木製品観覧に的を絞りました。目玉商品の日本最古丸木舟も後回しにしました。
企画展パンフレットの木製品の出ているページ
木製品について気が付いたことや興味が生れましたのでメモしておきます。
2 木製品観覧メモ
木製品観覧メモ 1
「木製品の未製品(用途不明)」という説明のある木製品現物を観覧しました。未製品(あるいは破損品)という表現が気になります。海辺(海水が出入りする場所)に未製品を3本きれいに並べて置くという状況は考えづらいです。先端が一部欠けているような状況をもって未製品(あるいは破損品)と呼んでいるみたいですが、その欠けが意図的な行為や彫刻である可能性を西根遺跡出土木製品観察体験から感じます。
観察スケッチや精細な写真撮影はあると思いますが、土器と異なり木製品はそれ以上にふみこんだ検討・考察はだれも行っていないと思います。
「木製敲打具(物を敲く)」という説明のある木製品を観覧しました。敲打具という説明は自分の意表を突くものでした。
何を敲打したのか興味が広がります。
魚や海藻を敲打して食物として消化しやすくしたり、おいしくしたのか?
貝を敲打して実を取り出しやすくしたのか?
丸木舟を敲打して音を出し、出航や寄港の合図にしたのか?
土器に動物皮を張って太鼓をつくり、その太鼓を敲打して海辺の音楽(祭祀)が行われたのか?
敲打具という説明の背景には専門家の深い知識が控えていると考えますので、その知識を是非とも摂取したいと希望します。
なお、敲打した場所と考えられる先端膨らみを老眼に鞭打って観察すると、多面形の集合として構成されています。そして、面と面が交わる稜線が新鮮に残されているようでした。
自分には先端部分でモノを打ったり、あるいは撫でまわしたりして摩耗している様子は感じられませんでした。多面形集合で全体の丸みを出した多面体が現出した直後のような印象を受けました。
これらの木製品は未製品(破損品)とか敲打具ではなく、そのものが使われた直後に埋納された本製品であり、同じ機能を有する「イナウ」であるという個人仮説の確からしさを感情レベルで深めることができました。
木製品観察メモ 2
長い棒状木製品2本が出土状況とおなじように並べて展示してありました。
そのうち短い方には縛った跡や微細な矩形穿孔を複数観察することができました。(長い方も類似の微細刻等の跡が多数あります。)これらの特徴は西根遺跡木製品と同じです。特に微細な(3~4mm×2~3mm?)矩形穿孔は鋭利な石器工具で草花、昆虫羽根、鳥羽等を刺しこんで一時的に飾った跡と空想しますが、工具は回していません。工具でモノを押し込んだ時、その先端が矩形をしています。その点が大いに疑問で残ります。錐に使う石器でこれまでに観察した実物は、グリグリ回して使うので先端が丸くなっていました。
黒曜石で錐を作ると、先端が四角錐になるものができるということでしょうか?
この企画展には何回も足を運びたいと思います。
2019年7月24日水曜日
2019年6月11日火曜日
雷下遺跡出土木製品意匠の意味
縄文木製品学習 8
雷下遺跡出土木製品(木製品イ)意匠の意味について考察してみました。
当初の想定でキケウシパスイではないかと踏んでいましたので、それが出ている図書のページをめくってみました。
髯揚箆(ひげあげべら)イクパスイ
金田一京助・杉山寿栄男共著「アイヌ芸術 木工編」(昭和17年発行、昭和48年復刻)から引用改変
驚いたことに、キケウシパスイ4例のうち2例は植物(の紐?)が付いています。棒にモノがついているのです。
この写真を見て、雷下遺跡等から出土している木製品イの全周する溝はモノを縛り付けて、それが滑り落ちないようにするためのガイド溝であることが直観できました。おそらく間違いのないところだと感じることができます。
さらに金田一京助・杉山寿栄男共著「アイヌ芸術 木工編」の説明を読むと、キケウシパスイの尖った方は鳥の嘴をあらわし、嘴に酒をつけて周囲にふりかけるとキケウシパスイというイナウが鳥の役割をして神に願いを確実に届けるとう趣旨の記述が書かれています。(戦前アイヌのキケウシパスイに関する記述)この記述は現在も引用-孫引用をくりかえして使われているようです。
雷下遺跡出土木製品イの本質を考える上で、キケウシパスイ、鳥、イナウなどのキーワードを仮説することは重要であることが感得できました。
雷下遺跡出土木製品は何かを紐で結んでいた。匙状先端は酒を振りかけるためかもしれない
参考 Wikipediaのイクパスイの項 抜粋
イクパスイ(ikupasuy)は、アイヌ民族が儀式で使用する木製の祭具で、カムイ(神)・先祖に酒などの供物をささげる際、人とカムイの仲立ちをする役割を果たすものとされた。
名称は ikuが「酒を飲む」、pasuyが「箸」の意である。
日本語では「(カムイに)酒を捧(ささげる)箸」として、捧酒箸と訳される。
カムイノミ(神事)やシンヌラッパ(先祖供養)など、酒を用いる祈りには欠かせず、このほか個人的な祈りに際しても用いられた。
用いる際は、その先を酒につけて酒の滴を火やイナウに振りかけ、神・先祖に捧げて祈祷する。人間の言葉は直接カムイに届かないとされているが、イクパスイを介することで人間の言葉は(たとえ不足や誤りがあったとしても)カムイに正確に届けられる。また、捧げた一滴の酒はカムイモシㇼ(kamuy-mosir:神々の世界)に一樽にもなって届き、カムイたちも同様に酒を酌み交わすとされた。
1930年に行われたイオマンテの様子。膳の上の椀に載せられたへら状の物がイクパスイ
キケウㇱパスイ
イクパスイの一種であると同時にイナウの一種でもある。kike が「削りかけ」、us「~がつく」、pasuy「箸」の意で、日本語では削り掛けつき捧酒箸と訳される。
主にヤナギ、ミズキなどの白木で作られ、一部の地域を除いて文様を施すことはない。上面1~4ヵ所に削りかけがあり、数や形は家系によって異なる。
大祭に際してとくに重要な祈りに用いられ、イナウ同様儀式が終わると火にくべたり祭壇に納めて火のカムイへの捧げ物としたため、原則として儀式のたびに新しく作られているが、一部の地域では複数回使用されたこともある。
雷下遺跡出土木製品(木製品イ)意匠の意味について考察してみました。
当初の想定でキケウシパスイではないかと踏んでいましたので、それが出ている図書のページをめくってみました。
髯揚箆(ひげあげべら)イクパスイ
金田一京助・杉山寿栄男共著「アイヌ芸術 木工編」(昭和17年発行、昭和48年復刻)から引用改変
驚いたことに、キケウシパスイ4例のうち2例は植物(の紐?)が付いています。棒にモノがついているのです。
この写真を見て、雷下遺跡等から出土している木製品イの全周する溝はモノを縛り付けて、それが滑り落ちないようにするためのガイド溝であることが直観できました。おそらく間違いのないところだと感じることができます。
さらに金田一京助・杉山寿栄男共著「アイヌ芸術 木工編」の説明を読むと、キケウシパスイの尖った方は鳥の嘴をあらわし、嘴に酒をつけて周囲にふりかけるとキケウシパスイというイナウが鳥の役割をして神に願いを確実に届けるとう趣旨の記述が書かれています。(戦前アイヌのキケウシパスイに関する記述)この記述は現在も引用-孫引用をくりかえして使われているようです。
雷下遺跡出土木製品イの本質を考える上で、キケウシパスイ、鳥、イナウなどのキーワードを仮説することは重要であることが感得できました。
雷下遺跡出土木製品は何かを紐で結んでいた。匙状先端は酒を振りかけるためかもしれない
参考 Wikipediaのイクパスイの項 抜粋
イクパスイ(ikupasuy)は、アイヌ民族が儀式で使用する木製の祭具で、カムイ(神)・先祖に酒などの供物をささげる際、人とカムイの仲立ちをする役割を果たすものとされた。
名称は ikuが「酒を飲む」、pasuyが「箸」の意である。
日本語では「(カムイに)酒を捧(ささげる)箸」として、捧酒箸と訳される。
カムイノミ(神事)やシンヌラッパ(先祖供養)など、酒を用いる祈りには欠かせず、このほか個人的な祈りに際しても用いられた。
用いる際は、その先を酒につけて酒の滴を火やイナウに振りかけ、神・先祖に捧げて祈祷する。人間の言葉は直接カムイに届かないとされているが、イクパスイを介することで人間の言葉は(たとえ不足や誤りがあったとしても)カムイに正確に届けられる。また、捧げた一滴の酒はカムイモシㇼ(kamuy-mosir:神々の世界)に一樽にもなって届き、カムイたちも同様に酒を酌み交わすとされた。
1930年に行われたイオマンテの様子。膳の上の椀に載せられたへら状の物がイクパスイ
キケウㇱパスイ
イクパスイの一種であると同時にイナウの一種でもある。kike が「削りかけ」、us「~がつく」、pasuy「箸」の意で、日本語では削り掛けつき捧酒箸と訳される。
主にヤナギ、ミズキなどの白木で作られ、一部の地域を除いて文様を施すことはない。上面1~4ヵ所に削りかけがあり、数や形は家系によって異なる。
大祭に際してとくに重要な祈りに用いられ、イナウ同様儀式が終わると火にくべたり祭壇に納めて火のカムイへの捧げ物としたため、原則として儀式のたびに新しく作られているが、一部の地域では複数回使用されたこともある。
雷下遺跡出土木製品の詳細観察
縄文木製品学習 7
市川市雷下遺跡(6)(縄文早期)から出土した木製品(木製品イ)について発掘調査報告書写真を拡大して詳細観察しました。
1 観察した木製品
発掘調査報告書で次のように記載されている木製品1の2つのピースについて観察しました。
「加工が明瞭な木製遺物は7点あった。1は、トネリコ属トネリコ節の心持ち丸木材の表面を削り、横断面が楕円形となるように加工した棒状品である。断片化した3点が同一地点から出土しており、加工の様相、樹種と木取りの特徴が同じであることから同一個体と判断され、一端がすぼまる棒状と復元される。」
木製品
発掘調査報告書から引用
2 観察
雷下遺跡出土木製品の意匠 1
雷下遺跡出土木製品の意匠 2
2つのピースともに全周切込みがあり、その一部がえぐられています。また一方の端は丸木を斜め方向にわざと凹凸をつけて形状が匙状に見えるようにカットされています。そのカット面は極めて新鮮ですからカットされてから多数回にわたって使われた様子は皆無です。
1では面取り、圧着痕らしきものが観察できます。
2では小孔1つと縛り跡らしきものが観察できます。
2つのピースともに、作られた後1回使われ、その後遺棄されたように想像できます。
3 参考 匝瑳市亀田泥炭遺跡(縄文後・晩期)出土木製品の観察
棒状木製品2の意匠
棒状木製品4の意匠
4 考察
・雷下遺跡出土木製品と亀田泥炭遺跡出土木製品の意匠が「類似」しているという域をこえて「同一」であると形容したくなるような近似性を感じることができます。
・楕円形の長い棒状木製品を一旦つくり、それを分割して特殊意匠を施して単位木製品を複数作ったと考えられます。
・特殊意匠は縄文早期も縄文後・晩期も「えぐりを伴う全周切込み」「材を斜め方向に凹凸をつけ(匙状にして)カットしている」です。
・さらに2遺跡出土物ともにカット面が新鮮で使いまわした様子は全く感じられません。
市川市雷下遺跡(6)(縄文早期)から出土した木製品(木製品イ)について発掘調査報告書写真を拡大して詳細観察しました。
1 観察した木製品
発掘調査報告書で次のように記載されている木製品1の2つのピースについて観察しました。
「加工が明瞭な木製遺物は7点あった。1は、トネリコ属トネリコ節の心持ち丸木材の表面を削り、横断面が楕円形となるように加工した棒状品である。断片化した3点が同一地点から出土しており、加工の様相、樹種と木取りの特徴が同じであることから同一個体と判断され、一端がすぼまる棒状と復元される。」
木製品
発掘調査報告書から引用
2 観察
雷下遺跡出土木製品の意匠 1
雷下遺跡出土木製品の意匠 2
2つのピースともに全周切込みがあり、その一部がえぐられています。また一方の端は丸木を斜め方向にわざと凹凸をつけて形状が匙状に見えるようにカットされています。そのカット面は極めて新鮮ですからカットされてから多数回にわたって使われた様子は皆無です。
1では面取り、圧着痕らしきものが観察できます。
2では小孔1つと縛り跡らしきものが観察できます。
2つのピースともに、作られた後1回使われ、その後遺棄されたように想像できます。
3 参考 匝瑳市亀田泥炭遺跡(縄文後・晩期)出土木製品の観察
棒状木製品2の意匠
棒状木製品4の意匠
4 考察
・雷下遺跡出土木製品と亀田泥炭遺跡出土木製品の意匠が「類似」しているという域をこえて「同一」であると形容したくなるような近似性を感じることができます。
・楕円形の長い棒状木製品を一旦つくり、それを分割して特殊意匠を施して単位木製品を複数作ったと考えられます。
・特殊意匠は縄文早期も縄文後・晩期も「えぐりを伴う全周切込み」「材を斜め方向に凹凸をつけ(匙状にして)カットしている」です。
・さらに2遺跡出土物ともにカット面が新鮮で使いまわした様子は全く感じられません。
次の記事でこの木製品イの意匠の意味について考察します。
2019年1月26日土曜日
茂原市渋谷貝塚出土木製品
縄文木製品学習 1
縄文木製品の学習を始めることにします。趣旨は西根遺跡出土イナウ似木製品と同様の縄文木製品が千葉県遺跡から出土しているかどうか調べることにあります。
「縄文後期イナウ似木製品の意匠と解釈」参照
学習方法は私家版千葉県遺跡DB(原典はふさの国文化財ナビゲーションダウンロードデータ)から木製品出土遺跡を検索して、その遺跡の発掘調査報告書記載データを調査する方法です。
なおイナウ似木製品の類似製品を見つけ出す学習ですから丸木舟、弓など利用目的が明白な木製品は扱いません。
この記事では茂原市渋谷貝塚出土木製品を学習します。
1 渋谷貝塚の概要
渋谷貝塚の位置
渋谷貝塚の位置
渋谷貝塚は九十九里浜海岸平野の最も内側の第一砂堤の内側の沖積低地に位置します。
トレンチ断面 3T
「茂原市渋谷貝塚発掘調査報告書」(平成8年度、千葉県教育委員会)から引用
遺物包含層にかかる発掘断面の概要は次のようになります。
上層 黒褐色泥炭層・・・遺物包含層、堀之内式が圧倒的
中層 貝層・・・ハマグリ・チョウセンハマグリ・ダンベイキサゴ、破砕貝が多い。貝層直上から貝層中に多くの獣骨(シカ・イノシシのほかクジラ、サメ)出土
下層 黒褐色泥土層・・・遺物包含層、遺物少ない、加曽利E式主体
このようなトレンチが崩壊したとき、上層の黒褐色泥炭層から木製品が出土しました。
2 木製品
木製品
「茂原市渋谷貝塚発掘調査報告書」(平成8年度、千葉県教育委員会)から引用
木製品写真
「茂原市渋谷貝塚発掘調査報告書」(平成8年度、千葉県教育委員会)から引用
縄文木製品の学習を始めることにします。趣旨は西根遺跡出土イナウ似木製品と同様の縄文木製品が千葉県遺跡から出土しているかどうか調べることにあります。
「縄文後期イナウ似木製品の意匠と解釈」参照
学習方法は私家版千葉県遺跡DB(原典はふさの国文化財ナビゲーションダウンロードデータ)から木製品出土遺跡を検索して、その遺跡の発掘調査報告書記載データを調査する方法です。
なおイナウ似木製品の類似製品を見つけ出す学習ですから丸木舟、弓など利用目的が明白な木製品は扱いません。
この記事では茂原市渋谷貝塚出土木製品を学習します。
1 渋谷貝塚の概要
渋谷貝塚の位置
渋谷貝塚の位置
渋谷貝塚は九十九里浜海岸平野の最も内側の第一砂堤の内側の沖積低地に位置します。
トレンチ断面 3T
「茂原市渋谷貝塚発掘調査報告書」(平成8年度、千葉県教育委員会)から引用
遺物包含層にかかる発掘断面の概要は次のようになります。
上層 黒褐色泥炭層・・・遺物包含層、堀之内式が圧倒的
中層 貝層・・・ハマグリ・チョウセンハマグリ・ダンベイキサゴ、破砕貝が多い。貝層直上から貝層中に多くの獣骨(シカ・イノシシのほかクジラ、サメ)出土
下層 黒褐色泥土層・・・遺物包含層、遺物少ない、加曽利E式主体
このようなトレンチが崩壊したとき、上層の黒褐色泥炭層から木製品が出土しました。
2 木製品
木製品
「茂原市渋谷貝塚発掘調査報告書」(平成8年度、千葉県教育委員会)から引用
「茂原市渋谷貝塚発掘調査報告書」(平成8年度、千葉県教育委員会)から引用
発掘調査報告書の記載はつぎのようになっています。
「8は3Tの遺物包含層から出土した杭状木製品である。下半部の加工痕は、かなり平滑な仕上げがなされており、比較的鋭利な工具で加工したことが窺える。出土当初は杭と考えたが、杭にしては短く不安定な形態をしており、加工が入念である。所属時期については、出土状況が明確でないので断定はできないが、土器の出土状況や木製品自体の加工の具合から、縄文時代の所産である可能性を指摘しておく。」
「長さ430.00㎜、幅69.00㎜、厚さ-、重量-、材質(未鑑定)」
「長さ430.00㎜、幅69.00㎜、厚さ-、重量-、材質(未鑑定)」
3 メモ
・握りの部分と本体部分が分かれ、かつ角度がついています。本体部分の先端は平べったくなっています。
・握りと本体の間に角度がついているのでテコの原理を利用する、あるいは物に当てやすい(殴打しやすい)など、腕の力を利用する道具のようだとの印象が最初に浮かびます。
・根茎類を掘る道具と考えると本体が膨らんでいて不都合です。
・魚叩き棒(鮭叩き棒)はバット形のものが多いですが、WEBを検索すると本体部分が広がっているものもあります。生き物を殴打する道具の可能性も考えられます。しかし単純殴打ならば先端の平べったくなった部分は不必要です。
・先端の平べったくなった部分は口を開ける(狭い切り口からこじ開ける)ような機能であるかもしれないという空想もうまれます。
・クジラやサメが出土している貝塚ですから、それら大型動物の解体道具かもしれません。
・全体の形状が機能を表現しているように見える特定製品のような感じを受けますから、全国遺跡木製品をくまなく調べれば必ず類似品がみつかり、その用途を特定できるに違いないと考えます。
・イナウとは関係ないようです。
2019年1月3日木曜日
千葉県遺跡分布地図帳 木製品
私家版千葉県遺跡DB地図帳 21 木製品
私家版千葉県遺跡DBの全レコード(20130)を分布図を通じて概観する活動を行っています。現在、項目(フィールド)「遺構・遺物」の記載キーワードを検索してその地物を含む遺跡の分布図例を作成しています。この記事では木製品(木器、丸木)の分布図を作成してみました。
1 木製品の分布
私家版千葉県遺跡DB地図帳 木製品分布 106
参考 縄文時代限定遺跡で丸木舟・櫂等以外の木製品が出土する遺跡
参考 木製品出土縄文時代限定遺跡(丸木舟・櫂等を除く)
2 メモ
・木製品分布図は全時代を対象として抽出したものです。
・木製品出土遺跡のうち縄文時代限定遺跡を対象にして、かつ丸木舟・櫂等具体製品が明白なものを除いたデータの分布図と情報が参考に掲げたものです。
・この参考は千葉県縄文時代遺跡から既にイナウ似木製品が出土しているかどうか確かめたいという私の切実な興味から(場をわきまえずに)作成したものです。
・とりあえずこの6遺跡の木製品がどんなものか予備調査として発掘調査報告書にあたって調べてみるつもりです。
・(西根遺跡木製品は西根遺跡発掘調査報告書刊行が最近のため遺跡DBには反映されていません。)
参考
縄文後期イナウ似木製品の意匠と解釈
イナウ似木製品の観察
私家版千葉県遺跡DBの全レコード(20130)を分布図を通じて概観する活動を行っています。現在、項目(フィールド)「遺構・遺物」の記載キーワードを検索してその地物を含む遺跡の分布図例を作成しています。この記事では木製品(木器、丸木)の分布図を作成してみました。
1 木製品の分布
私家版千葉県遺跡DB地図帳 木製品分布 106
参考 縄文時代限定遺跡で丸木舟・櫂等以外の木製品が出土する遺跡
参考 木製品出土縄文時代限定遺跡(丸木舟・櫂等を除く)
2 メモ
・木製品分布図は全時代を対象として抽出したものです。
・木製品出土遺跡のうち縄文時代限定遺跡を対象にして、かつ丸木舟・櫂等具体製品が明白なものを除いたデータの分布図と情報が参考に掲げたものです。
・この参考は千葉県縄文時代遺跡から既にイナウ似木製品が出土しているかどうか確かめたいという私の切実な興味から(場をわきまえずに)作成したものです。
・とりあえずこの6遺跡の木製品がどんなものか予備調査として発掘調査報告書にあたって調べてみるつもりです。
・(西根遺跡木製品は西根遺跡発掘調査報告書刊行が最近のため遺跡DBには反映されていません。)
参考
縄文後期イナウ似木製品の意匠と解釈
イナウ似木製品の観察
2018年10月27日土曜日
遺跡DB感想 縄文・木製品
約2万件の千葉県遺跡DB調整作業のうち主に首から下の肉体を使う単純整形力仕事のメドがつき、遺構概要等コンテンツの主部が姿を現してきました。残るは首から上の思考を伴うファイル操作になりました。めざす暫定完成にはまだ時間がかかりますが仮製品を利用してその使い勝手を試してみました。
印西市西根遺跡で出土した縄文後期木製品がイナウ似であり、縄文時代木製祭具であるという仮説を設ける学習を最近しました。
「縄文後期イナウ似木製品の意匠と解釈~印西市西根遺跡出土品の実見・分析・考察~」参照
同様のイナウ似木製品が千葉県から出土していないかどうか以前から気になっていたところです。「杭」などと鑑定され検討対象になっていない遺物があるかもしれません。
そこで仮DBで「縄文」「木製品」をキーワードに検索してみました。
仮DBにおける「縄文」「木製品」をキーワードとする検索結果 Excelエクスポート(部分)
21遺跡が抽出され、縄文時代木製品が出土したと考えられる遺跡が多く含まれます。丸木弓、丸木舟など具体的製品名が表示されているものもありますが、単に木製品とかかれたものもあります。
これらの遺跡について文献をたどればもしかしたらイナウ似木製品にたどりつくことができるかもしれません。イナウ再発見になるかもしれません。
イナウ似木製品にたどりつけなくても、千葉県縄文時代木製品カタログの出発資料をつくることができます。
GIS連動千葉県遺跡DBが利用できるようになることの意義の大きさを体感しました。
印西市西根遺跡で出土した縄文後期木製品がイナウ似であり、縄文時代木製祭具であるという仮説を設ける学習を最近しました。
「縄文後期イナウ似木製品の意匠と解釈~印西市西根遺跡出土品の実見・分析・考察~」参照
同様のイナウ似木製品が千葉県から出土していないかどうか以前から気になっていたところです。「杭」などと鑑定され検討対象になっていない遺物があるかもしれません。
そこで仮DBで「縄文」「木製品」をキーワードに検索してみました。
仮DBにおける「縄文」「木製品」をキーワードとする検索結果 Excelエクスポート(部分)
21遺跡が抽出され、縄文時代木製品が出土したと考えられる遺跡が多く含まれます。丸木弓、丸木舟など具体的製品名が表示されているものもありますが、単に木製品とかかれたものもあります。
これらの遺跡について文献をたどればもしかしたらイナウ似木製品にたどりつくことができるかもしれません。イナウ再発見になるかもしれません。
イナウ似木製品にたどりつけなくても、千葉県縄文時代木製品カタログの出発資料をつくることができます。
GIS連動千葉県遺跡DBが利用できるようになることの意義の大きさを体感しました。
2018年8月14日火曜日
縄文後期イナウ似木製品の実見
縄文後期イナウ似木製品の観察と解釈例 1
現在、六通貝塚をはじめ大膳野南貝塚近隣遺跡検討を進めていますが、都合により上記テーマのシリーズ記事を割り込ませます。上記テーマは2017年9月~10月に連載記事で一度検討しましたが、今回そのとりまとめを行う中でより合理的解釈ができましたので再度記事化します。
1 西根遺跡出土木製品(杭状加工品)の実見
2017年6月28日に大多喜町に所在する千葉県教育委員会森宮分室にて西根遺跡出土木製品(杭状加工品)を実見することができました。液体に入れて特別に保存している木製品であり、閲覧申し込み時点では実見が実現できるかどうか確約がとれなかったのですが、当日実見することができました。
西根遺跡出土木製品(杭状加工品)
担当官の方に上面と下面を裏返して見せていもらいました。自分で手に取ることは不可であり、かつビニール袋と液体がなす反射光で手に取れる遺物観察とは大いに違う制限のある観察となりました。しかし、驚きの発見を3点にもわたってすることができました。発掘調査報告書記述には無い明瞭な細工2種と付属物を確認できたのです。
2 発掘調査報告書における木製品(杭状加工品)の記述
木製品(杭状加工品)は縄文時代河川敷から多量の加曽利B式土器とともに出土したもので、発掘調査報告書では次のように記載されています。
木製品(杭状加工品)の計測
発掘調査報告書の記述「2の杭は丸木を利用しており、下端は石斧等の刃の痕跡が明瞭に残る。上面は細かな調整痕がみられる。」
2杭 西根遺跡発掘調査報告書から引用
発掘調査報告書では別に出土した赤漆塗り飾弓については特別な調査検討が行われていますが、「杭状加工品」はこの上に引用した記述が全てになります。表皮がはがされた丸木の上下を石斧で成形したところまでの記述が全てです。スケッチもその記述に沿ったものになっています。
3 木製品実見での3つの発見
3-1 刻印の発見
2ヵ所に鋭利な石器で木をえぐった刻印の存在が確認できます。
刻印の発見
3-2 削り跡の発見
多数の斜めに丸木を削った跡の直線が多数存在しています。
削り跡の発見
3-3 小型棒状木製品の発見
袋に数点の小型棒状木製品が同封されています。小型棒状木製品のいくつかには黒く焦げた部分があります。小型棒状木製品はその形状から自然の小枝でないことが判ります。
同封小型棒状木製品
4 木製品が杭でないことを確信し写真分析を開始する
発掘調査報告書にはこの木製品の写真も掲載されていますので検討したところ刻印や削り跡が不鮮明に確認できます。木製品に存在する刻印や削り跡が精細写真として世の中に存在するのですから、写真を入手できれば詳しい分析が可能となります。
この木製品が杭ではなくイナウのような祭具ではないだろうかという疑いを強く持ちますから写真分析による詳細検討実施を決断しました。
早速木製品写真と発掘状況写真の閲覧申請を千葉県教育委員会に行い、写真を入手することができました。詳しい写真分析作業をスタートさせることができました。
つづく
現在、六通貝塚をはじめ大膳野南貝塚近隣遺跡検討を進めていますが、都合により上記テーマのシリーズ記事を割り込ませます。上記テーマは2017年9月~10月に連載記事で一度検討しましたが、今回そのとりまとめを行う中でより合理的解釈ができましたので再度記事化します。
1 西根遺跡出土木製品(杭状加工品)の実見
2017年6月28日に大多喜町に所在する千葉県教育委員会森宮分室にて西根遺跡出土木製品(杭状加工品)を実見することができました。液体に入れて特別に保存している木製品であり、閲覧申し込み時点では実見が実現できるかどうか確約がとれなかったのですが、当日実見することができました。
西根遺跡出土木製品(杭状加工品)
担当官の方に上面と下面を裏返して見せていもらいました。自分で手に取ることは不可であり、かつビニール袋と液体がなす反射光で手に取れる遺物観察とは大いに違う制限のある観察となりました。しかし、驚きの発見を3点にもわたってすることができました。発掘調査報告書記述には無い明瞭な細工2種と付属物を確認できたのです。
2 発掘調査報告書における木製品(杭状加工品)の記述
木製品(杭状加工品)は縄文時代河川敷から多量の加曽利B式土器とともに出土したもので、発掘調査報告書では次のように記載されています。
木製品(杭状加工品)の計測
発掘調査報告書の記述「2の杭は丸木を利用しており、下端は石斧等の刃の痕跡が明瞭に残る。上面は細かな調整痕がみられる。」
2杭 西根遺跡発掘調査報告書から引用
発掘調査報告書では別に出土した赤漆塗り飾弓については特別な調査検討が行われていますが、「杭状加工品」はこの上に引用した記述が全てになります。表皮がはがされた丸木の上下を石斧で成形したところまでの記述が全てです。スケッチもその記述に沿ったものになっています。
3 木製品実見での3つの発見
3-1 刻印の発見
2ヵ所に鋭利な石器で木をえぐった刻印の存在が確認できます。
刻印の発見
3-2 削り跡の発見
多数の斜めに丸木を削った跡の直線が多数存在しています。
削り跡の発見
3-3 小型棒状木製品の発見
袋に数点の小型棒状木製品が同封されています。小型棒状木製品のいくつかには黒く焦げた部分があります。小型棒状木製品はその形状から自然の小枝でないことが判ります。
同封小型棒状木製品
4 木製品が杭でないことを確信し写真分析を開始する
発掘調査報告書にはこの木製品の写真も掲載されていますので検討したところ刻印や削り跡が不鮮明に確認できます。木製品に存在する刻印や削り跡が精細写真として世の中に存在するのですから、写真を入手できれば詳しい分析が可能となります。
この木製品が杭ではなくイナウのような祭具ではないだろうかという疑いを強く持ちますから写真分析による詳細検討実施を決断しました。
早速木製品写真と発掘状況写真の閲覧申請を千葉県教育委員会に行い、写真を入手することができました。詳しい写真分析作業をスタートさせることができました。
つづく
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