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2019年6月10日月曜日

雷下遺跡等3遺跡から出土した棒状木製品に関する鳥形作業仮説

縄文木製品学習 6

2019.06.09記事「異なる2遺跡から出土した棒状木製品の意匠近似性」で木製品をアとイに分類して、アはイナウに関連するような祭具、イはキケウシパスイに関連するような祭具であると作業仮説を立てました。作業仮説を立てることにより、仮説自体の真贋は別にして、そのモノの認識を深める過程を短縮できると考えたからです。
同じような趣旨から、木製品アについてその作業仮説をもう一歩踏み込んで検討してみました。実物を閲覧しない段階で踏み込んだ作業仮説を立てることは大きなリスクを伴います。しかしすぐに実物閲覧の機会が得られる可能性が不明ですから、趣味活動の楽しみを継続発展させるためにあえて空想を掻き立ててみます。

1 棒状木製品 ア の資料追加
茂原市渋谷貝塚から出土している棒状木製品もアと同じ用途の製品である可能性があります。

茂原市渋谷貝塚出土の棒状木製品 挿図
発掘調査報告書から引用

茂原市渋谷貝塚出土の棒状木製品 写真
発掘調査報告書から引用
この棒状木製品は2019.01.26記事「茂原市渋谷貝塚出土木製品」で検討していますが、当時は木製利器として捉えていました。

参考 茂原市渋谷貝塚の位置

2 水鳥の形状と棒状木製品アの形状の類似
2-1 水鳥の形状
水鳥の首から頭部にかけての形状が棒状木製品アの形状に似ているように感じることができます。

飛翔する水鳥の形状

飛翔する水鳥の首から頭部にかけての形状区分

水鳥の首から頭部にかけての形状区分を棒状木製品アに対応させると次のようになります。

2-1 雷下遺跡出土棒状木製品アと水鳥形状区分

雷下遺跡出土棒状木製品アと水鳥形状区分

2-2 亀田泥炭遺跡出土棒状木製品アと水鳥形状区分

亀田泥炭遺跡出土棒状木製品アと水鳥形状区分

2-3 渋谷貝塚出土棒状木製品アと水鳥形状区分

渋谷貝塚出土棒状木製品アと水鳥形状区分

3 メモ
・棒状木製品は発掘調査報告書の挿図や写真を見る限り、全体形状が鳥形であるような感触を受けます。鳥形のイナウであると作業仮説します。
・西根遺跡出土丸木木製品も鳥と関連するイナウであると仮想し、その後の鳥形の祖形でもあると考えました。
・現物を観覧・閲覧できる機会を得られれば、この鳥形仮説の真贋の程が直観できると考えます。
・雷下遺跡出土棒状木製品アのうち2点は市立市川考古博物館で今夏展示されるらしいという情報がありますので、今から楽しみです。

2019年1月26日土曜日

茂原市渋谷貝塚出土木製品

縄文木製品学習 1

縄文木製品の学習を始めることにします。趣旨は西根遺跡出土イナウ似木製品と同様の縄文木製品が千葉県遺跡から出土しているかどうか調べることにあります。
縄文後期イナウ似木製品の意匠と解釈」参照
学習方法は私家版千葉県遺跡DB(原典はふさの国文化財ナビゲーションダウンロードデータ)から木製品出土遺跡を検索して、その遺跡の発掘調査報告書記載データを調査する方法です。
なおイナウ似木製品の類似製品を見つけ出す学習ですから丸木舟、弓など利用目的が明白な木製品は扱いません。
この記事では茂原市渋谷貝塚出土木製品を学習します。

1 渋谷貝塚の概要

渋谷貝塚の位置

渋谷貝塚の位置
渋谷貝塚は九十九里浜海岸平野の最も内側の第一砂堤の内側の沖積低地に位置します。

トレンチ断面 3T
「茂原市渋谷貝塚発掘調査報告書」(平成8年度、千葉県教育委員会)から引用
遺物包含層にかかる発掘断面の概要は次のようになります。

上層 黒褐色泥炭層・・・遺物包含層、堀之内式が圧倒的
中層 貝層・・・ハマグリ・チョウセンハマグリ・ダンベイキサゴ、破砕貝が多い。貝層直上から貝層中に多くの獣骨(シカ・イノシシのほかクジラ、サメ)出土
下層 黒褐色泥土層・・・遺物包含層、遺物少ない、加曽利E式主体

このようなトレンチが崩壊したとき、上層の黒褐色泥炭層から木製品が出土しました。

2 木製品

木製品
「茂原市渋谷貝塚発掘調査報告書」(平成8年度、千葉県教育委員会)から引用

木製品写真
「茂原市渋谷貝塚発掘調査報告書」(平成8年度、千葉県教育委員会)から引用
発掘調査報告書の記載はつぎのようになっています。
「8は3Tの遺物包含層から出土した杭状木製品である。下半部の加工痕は、かなり平滑な仕上げがなされており、比較的鋭利な工具で加工したことが窺える。出土当初は杭と考えたが、杭にしては短く不安定な形態をしており、加工が入念である。所属時期については、出土状況が明確でないので断定はできないが、土器の出土状況や木製品自体の加工の具合から、縄文時代の所産である可能性を指摘しておく。」
「長さ430.00㎜、幅69.00㎜、厚さ-、重量-、材質(未鑑定)」

3 メモ
・握りの部分と本体部分が分かれ、かつ角度がついています。本体部分の先端は平べったくなっています。
・握りと本体の間に角度がついているのでテコの原理を利用する、あるいは物に当てやすい(殴打しやすい)など、腕の力を利用する道具のようだとの印象が最初に浮かびます。
・根茎類を掘る道具と考えると本体が膨らんでいて不都合です。
・魚叩き棒(鮭叩き棒)はバット形のものが多いですが、WEBを検索すると本体部分が広がっているものもあります。生き物を殴打する道具の可能性も考えられます。しかし単純殴打ならば先端の平べったくなった部分は不必要です。
・先端の平べったくなった部分は口を開ける(狭い切り口からこじ開ける)ような機能であるかもしれないという空想もうまれます。
・クジラやサメが出土している貝塚ですから、それら大型動物の解体道具かもしれません。
・全体の形状が機能を表現しているように見える特定製品のような感じを受けますから、全国遺跡木製品をくまなく調べれば必ず類似品がみつかり、その用途を特定できるに違いないと考えます。
・イナウとは関係ないようです。