縄文木製品の学習を始めることにします。趣旨は西根遺跡出土イナウ似木製品と同様の縄文木製品が千葉県遺跡から出土しているかどうか調べることにあります。
「縄文後期イナウ似木製品の意匠と解釈」参照
学習方法は私家版千葉県遺跡DB(原典はふさの国文化財ナビゲーションダウンロードデータ)から木製品出土遺跡を検索して、その遺跡の発掘調査報告書記載データを調査する方法です。
なおイナウ似木製品の類似製品を見つけ出す学習ですから丸木舟、弓など利用目的が明白な木製品は扱いません。
この記事では茂原市渋谷貝塚出土木製品を学習します。
1 渋谷貝塚の概要
渋谷貝塚の位置
渋谷貝塚の位置
渋谷貝塚は九十九里浜海岸平野の最も内側の第一砂堤の内側の沖積低地に位置します。
トレンチ断面 3T
「茂原市渋谷貝塚発掘調査報告書」(平成8年度、千葉県教育委員会)から引用
遺物包含層にかかる発掘断面の概要は次のようになります。
上層 黒褐色泥炭層・・・遺物包含層、堀之内式が圧倒的
中層 貝層・・・ハマグリ・チョウセンハマグリ・ダンベイキサゴ、破砕貝が多い。貝層直上から貝層中に多くの獣骨(シカ・イノシシのほかクジラ、サメ)出土
下層 黒褐色泥土層・・・遺物包含層、遺物少ない、加曽利E式主体
このようなトレンチが崩壊したとき、上層の黒褐色泥炭層から木製品が出土しました。
2 木製品
木製品
「茂原市渋谷貝塚発掘調査報告書」(平成8年度、千葉県教育委員会)から引用
「茂原市渋谷貝塚発掘調査報告書」(平成8年度、千葉県教育委員会)から引用
発掘調査報告書の記載はつぎのようになっています。
「8は3Tの遺物包含層から出土した杭状木製品である。下半部の加工痕は、かなり平滑な仕上げがなされており、比較的鋭利な工具で加工したことが窺える。出土当初は杭と考えたが、杭にしては短く不安定な形態をしており、加工が入念である。所属時期については、出土状況が明確でないので断定はできないが、土器の出土状況や木製品自体の加工の具合から、縄文時代の所産である可能性を指摘しておく。」
「長さ430.00㎜、幅69.00㎜、厚さ-、重量-、材質(未鑑定)」
「長さ430.00㎜、幅69.00㎜、厚さ-、重量-、材質(未鑑定)」
3 メモ
・握りの部分と本体部分が分かれ、かつ角度がついています。本体部分の先端は平べったくなっています。
・握りと本体の間に角度がついているのでテコの原理を利用する、あるいは物に当てやすい(殴打しやすい)など、腕の力を利用する道具のようだとの印象が最初に浮かびます。
・根茎類を掘る道具と考えると本体が膨らんでいて不都合です。
・魚叩き棒(鮭叩き棒)はバット形のものが多いですが、WEBを検索すると本体部分が広がっているものもあります。生き物を殴打する道具の可能性も考えられます。しかし単純殴打ならば先端の平べったくなった部分は不必要です。
・先端の平べったくなった部分は口を開ける(狭い切り口からこじ開ける)ような機能であるかもしれないという空想もうまれます。
・クジラやサメが出土している貝塚ですから、それら大型動物の解体道具かもしれません。
・全体の形状が機能を表現しているように見える特定製品のような感じを受けますから、全国遺跡木製品をくまなく調べれば必ず類似品がみつかり、その用途を特定できるに違いないと考えます。
・イナウとは関係ないようです。
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