2021年12月21日火曜日

旧石器時代洞窟壁画 スペイン切手 その3

 Paleolithic cave painting Spanish stamp Part 3


Of the 10 types of Spanish Paleolithic cave painting stamps (issued in March 1967), I observed a mural painting that killed a person with a bow and arrow.


スペインの旧石器時代洞窟壁画切手10種(1967年3月発行)のうち、弓矢が出てくる不思議で不気味な壁画2種を観察しました。


スペイン切手 旧石器時代壁画 サルタドーラ洞窟

2ペセタ CVA SARTADORA (CASTELLON)

よく見ると恐ろしい壁画であることが浮かび上がってきます。冠状の飾りを頭に付け、(おそらく)立派なペニスケースを付けた人物が大股で去ろうとしています。体には5本の矢が刺さり、足の矢は貫通しています。男のリーダーとかシャーマンとか社会的地位のある人物を弓矢で成敗している図柄です。この壁画がどのような状況を表現しているのか色々な仮説が浮かび上がります。1 敵対する相手集団のリーダーを射撃して、逃走させている勝利の様子。2 シャーマンが体に矢を付けて受傷しているような姿になり、苦しむ様子を踊り、自分たち集団の強さを確認している祭祀の様子。3 リーダーが体中に矢を受けても相手集団に襲いかかろうとしている勇敢な姿の様子。


再掲 スペイン切手 旧石器時代洞窟壁画 モレーラ洞窟

40センチモ CVA MORELLA (CASTELLON)

狩りの道具である弓矢が集団間の争い(戦闘)に使われています。

2021.12.13記事「旧石器時代洞窟壁画 スペイン切手


スペイン切手 旧石器時代洞窟壁画 シングル洞窟

3.50ペセタ

CVA CINGLE (CASTELLON)

5人が片手に弓を片手に矢の束を持って、集団行進(走)しています。この図柄を見た最初の印象は狩りに関する踊りであるというものでした。しかし、弓矢を集団間の戦闘にも使っている社会であることがわかると、この図柄から、別の印象が浮かびます。5人の人物が武器を持ち統制されて移動している様子は、敵対集団にたいして戦闘能力を有していることを表現しているのだと考えることができます。動物を狩る踊りではなく、戦闘を鼓舞する踊りのように見えてきます。

なお、4人の足の間にはブラブラしたものがありますから男ですが、1人にはそれがありません。女性狩人(戦闘員)かも知れません。


2021年12月20日月曜日

旧石器時代洞窟壁画 スペイン切手 その2

 Paleolithic cave painting Spanish stamp Part 2


Of the 10 types of Spanish Paleolithic cave painting stamps (issued in March 1967), I enjoyed 3 types of hunting landscape murals using bows and arrows.


2021.12.13記事「旧石器時代洞窟壁画 スペイン切手」の続きです。

スペインの旧石器時代洞窟壁画切手10種(1967年3月発行)のうち、弓矢をつかった狩り風景壁画3種を楽しみました。


スペイン切手 旧石器時代洞窟壁画 レミヒア洞窟

4ペセタ CVA REMIGIA (CASTELLON)

カモシカを弓矢で3人が狩っています。2人は弓で矢を射っているところです。一番大きな人は弓と矢の束を一緒に持っています。右の1人は弓を腰につけて、狩場に馳せ参じています。カモシカにはすでに矢が刺さっています。3人の人は又にぶら下がっているモノがありますから男であることがわかります。大きく描かれた男が父親、小さく描かれた男が息子かもしれません。


スペイン切手 旧石器時代洞窟壁画 カバージョの洞窟

6ペセタ CVA DE LOS CABALLOS (CASTELLON)

大きな角のあるオスシカ1頭と多数のメスシカ、コジカの群れを4人が弓矢で狩っています。矢の束が足元に置いてあります。4頭のメスシカには既に矢が刺さっています。一番上の人が大きく描かれていますので、狩りチームのリーダーのようです。


スペイン切手 旧石器時代洞窟壁画 レミヒア洞窟

50センチモ CVA REMIGIA (CASTELLON)

3人が弓矢を手にイノシシを追っています。左端の人は弓矢を手にイノシシから逃げています。イノシシ狩り接近戦の緊迫した様子が描かれています。イノシシには既に矢が3本ほど刺さっています。一番上の人が一番大きく描かれていて、狩りのリーダーのようです。全力でイノシシを追う様子が水平にまで開いた両足で表現されています。リーダーの両足には2種のアンクレットが付いています。



2021年12月19日日曜日

加曽利貝塚博物館 縄文講座 「祇園原貝塚」の受講

 Attendance of a lecture on "Gionbara Shell Mound"


I attended a lecture on "Gionbara Shell Mound". The instructor is Mr. Narumi Shinobusawa of the Ichihara City Board of Education.

I became interested in topics such as the topographical characteristics of the shell mound village, graveyards and human bone accumulation, Jomon people's food, stone tools for making shell rings, and the origin of obsidian, which differs depending on the water system of the village.


加曽利貝塚博物館第2回縄文時代研究講座「市原市指定史跡祇園原貝塚-千年続いた縄文のムラ-」(講師 市原市教育委員会博物館準備室長 忍澤成視)を12月18日に受講しました。抽選で30名のみ参加という超難関(?)を無事通過してのうれしい参加です。講演参加者には9月に開催された祇園原貝塚シンポジウムの資料が配られました。


講演風景

加曽利貝塚博物館特別展「市原市指定史跡祇園原貝塚-千年続いた縄文のムラ-」の展示はこれまで3回観覧し、多数の遺物について3Dモデルを作成して観察してきました。その観察で祇園原貝塚について興味が深まっていますので、この講演は自分にとって学習意義がとても大きいものです。

講演では市原市祇園原貝塚の調査経緯、調査で判った主な特性、今後開館する市原歴史博物館での展示方法などについて、興味深い話題が次から次へと披露されました。この記事では自分が特段に面白いと感じた項目だけをメモします。

1 浅い窪地をとりまく居住地と貝塚

もともとの浅い谷地形を取り囲み居住地が形成されたとのことです。興味深いことはその浅い窪地は長い年月で埋まることが考えられるが、実際は浅い窪地を削って埋まらないようにしていたことが確認されたとのことです。窪地を削った様子の情報は表示されませんでしたが、現場で確認されているとこのことです。今後発掘調査報告書等でその確認データをみつけて学習したいと思いました。加曽利貝塚北貝塚、南貝塚も同じように中央に窪地がありますから、祇園原貝塚と同じように削られていたのか、興味が湧きます。

また年代が新しくなるに従って竪穴住居の位置が中央広場中心に近づく様子や、竪穴住居の入り口が中央広場方向につくられている様子の説明がありました。


集落の様子

講演映像から引用

2 墓地と人骨集積

人骨、多遺体埋葬(合葬)、土器棺葬(幼児)が集中する場所が5箇所にあり、それらが時代別の居住地近くであるとの説明がありました。また、再葬を示す「人骨集積」があり、後期前半の葬送儀礼との説明があり、興味が湧きます。


葬送の違いを説明する写真

講演映像から引用

3 祇園原縄文人の食

祇園原縄文人の食について詳しい説明がありました。一言で要約すると陸上動物、魚貝類ともに特定の種にあまりこだわらないで多様な種を幅広く食べていたことが判ってきたとのことでした。陸上動物ではシカやイノシシに偏ることなく、ウサギやタヌキ、…ヘビやカエル…などを。魚貝類ではイボキサゴを貝類のメインとし、魚ではクロダイやスズキだけでなく、小形のイワシ、アジあるいは淡水のコイ、フナなども幅広く食べていたとこのことです。イボキサゴは旨味成分として活用し、ドングリなどのでんぷんを美味しく食べるために使っていたようです。このような柔軟性ある食生活が縄文社会継続の背景にあるとの説明でした。


魚類の説明

講演映像から引用

…………………

祇園原貝塚からゴカイ棲管製垂飾が出土しています。この講演で祇園原縄文人の食性の柔軟性が強調されました。それにより、祇園原縄文人はゴカイを食べていたとの自分の想定の確からしさが高まったと感じました。

…………………

4 貝輪づくり用石器

貝輪づくり用石器発見というとても興味深い話がありました。最初何に使う石器であるか不明だったのですが、貝輪づくりイベントでヒントを得て、その石器が貝輪づくりに使われていたことが判ったとのことです。銚子付近だけで採れる固い砂岩だそうです。


貝輪づくり用石器

講演映像から引用

5 近隣集落で異なる黒曜石原産地

祇園原貝塚の近隣の同時代集落で水系が異なる遺跡の黒曜石産地が全く異なっているという興味深い話がありました。水系が移動経路になっていて、それが異なると交易が大きく異なっていたという地理的ネットワーク的にきわめて興味い事象です。


遺跡と水系の様子

講演映像から引用



2021年12月17日金曜日

ミニチュア土器の3Dモデル観察

 3D model observation of miniature pottery


We observed 7 miniature pottery exhibited at the Kasori Shellmound Museum special exhibition with a 3D model. Miniature pottery is a rare Jomon period "second tool" that survived the Yayoi period.


加曽利貝塚博物館特別展「-市原市史跡指定-祇園原貝塚 千年続いた縄文のムラ」で展示されていたミニチュア土器7点を3Dモデルで観察しました。ミニチュア土器は弥生古墳と生き残った稀な縄文時代「第二の道具」です。

1 ミニチュア土器7点(市原市根田祇園原貝塚) 観察記録3Dモデル 7 miniature pottery

ミニチュア土器7点(市原市根田祇園原貝塚) 観察記録3Dモデル 7 miniature pottery

縄文時代後晩期

撮影場所:加曽利貝塚博物館特別展「-市原市史跡指定-祇園原貝塚 千年続いた縄文のムラ」

撮影月日:2021.12.02


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

実寸法付与

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 86 images

7 miniature pottery (Neda Gionbara shell mound, Ichihara city) Observation record 3D model

Late-Final Jomon period

Location: Kasori Shellmound Museum Special Exhibition "-Designated as a historic site in Ichihara City-Gionbara Shell Mound, Jomon village that lasted for a thousand years"

Shooting date: 2021.12.02

Shooting through a glass showcase

Give actual dimensions

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.010 processing 86 images


3Dモデルの動画

2 メモ

2-1 大きさ

実寸法を付与した3Dモデルから7点のミニチュア土器寸法を計測しました。


ミニチュア土器の寸法


参考 オルソ投影 上から


参考 オルソ投影 正面

小林達雄編「総覧縄文土器」の「ミニチュア土器」(菅野和郎)ではミニチュア土器を口径・最大径とも10㎝以内におさまるものと規定していますが、7点はほぼその範囲におさまります。

2-2 手抉(たくじり

縄文時代ミニチュア土器は神への供え物容器として使うなどの祭器(「第二の道具」)であったと考えられます。ミニチュア土器は供え物とはいえ実用的機能を備えていることから「第二の道具」としては稀なこととして、弥生古墳へと生き残って使われていきました。日本書紀にも手抉(たくじり)として登場します。

精選版日本国語大辞典「手抉(たくじり)」

〘名〙 古代に、土をまるめて指先でその中をくじりくぼめて作った粗末な土器。神前への供え物を盛ったものか。

※書紀(720)神武即位前戊午年九月「天の手抉八十枚〈手抉、此をば多衢餌離(タクジリ)と云ふ〉」

次の小型甕は2011年8月千葉市埋蔵文化財調査センターで閲覧した千葉市花見川区子和清水遺跡古墳時代住居出土遺物ですが、その大きさから供献用土器と考えられています。


千葉市花見川区子和清水遺跡古墳時代住居出土小型甕(千葉市埋蔵文化財調査センター所蔵)


実測図 発掘調査報告書から引用

10年前はこの供献用土器のルーツがはるか縄文時代まで遡るとの知識はありませんでした。今再びこの古墳時代供献用土器観察をふりかえると、縄文時代学習が弥生時代古墳時代学習にとっても必須であることがよく理解できます。

2011.09.19記事「子和清水遺跡の出土物閲覧6




2021年12月16日木曜日

ゴカイ棲管製垂飾の観察

 Observation of Polychaeta burrow decoration


I observed the Polychaeta burrow decoration exhibited at the Kasori Shellmound Museum special exhibition with a 3D model. I think that Polychaeta were not only delicious as food, but also effective as fishing bait. Therefore, I imagined that the Jomon people loved Polychaeta by making burrow decorations.


加曽利貝塚博物館特別展「-市原市史跡指定-祇園原貝塚 千年続いた縄文のムラ」で展示されていたゴカイ棲管製垂飾を3Dモデルで観察しました。ゴカイが食料であり美味しかった(珍味?)のでその棲管がペンダントにつかわれたのだと想像しました。

1 ゴカイ棲管製垂飾(市原市根田祇園原貝塚) 観察記録3Dモデル Polychaeta burrow decoration

ゴカイ棲管製垂飾(市原市根田祇園原貝塚) 観察記録3Dモデル Polychaeta burrow decoration

縄文時代後晩期

撮影場所:加曽利貝塚博物館特別展「-市原市史跡指定-祇園原貝塚 千年続いた縄文のムラ」

撮影月日:2021.12.02


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 92 images

Polychaeta burrow decoration (Neda Gionbara shell mound, Ichihara city) Observation record 3D model

Late Jomon period

Location: Kasori Shellmound Museum Special Exhibition "-Designated as a historic site in Ichihara City-Gionbara Shell Mound, Jomon village that lasted for a thousand years"

Shooting date: 2021.12.02

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.010 processing 92 images


3Dモデルの動画

2 メモ

展示製品は棲管の一部を切り取っているだけのようです。表面に見える模様や凹凸は人工ではなく自然のようにみえます。

現代人からみると美しさとか、珍しさなどを感じることが少ないゴカイ棲管を垂飾(ペンダント)にした理由を次のように想像します。

ア ゴカイを食料として、おそらく珍味のような食べ物として珍重していた。

イ 現代と同じようにゴカイを釣りの餌として使っていて、魚がよく釣れる餌として重宝していた。

ウ アとイから、ゴカイは生活にとって重要な生き物であると考え、その棲管で垂飾(ペンダント)をつくり、ゴカイ愛を深めた。

webを検索して、ベトナムや中国でゴカイを使った料理があることを知りました。


2021年12月15日水曜日

認知考古学の意義について気が付く cognitive archeology

 Be aware of the significance of cognitive archeology


By reading "The First Archeology" by Takehiko Matsuki ((Chikuma Primer New Book), I can now understand the significance of "cognitive archeology" that I had not understood before at an intuitive level. Both Jomon people and modern people can understand it. It is a method of observing relics using the principle of having the same feelings.


松木武彦「はじめての考古学」(ちくまプリマー新書)を通読して最初のメモを作りました。

ブログ芋づる式読書のメモ2021.12.14記事「松木武彦「はじめての考古学」(ちくまプリマー新書)

その後、噛んでいるスルメの味が美味しくなるように、徐々にこの図書の意義の大きさについて気が付き出しました。この記事では認知考古学の意義について初めて気が付きましたのでメモします。

1 認知考古学に最初に触れた時の印象

思い出すと、2021年1月のNHKのBSTV番組「英雄たちの選択 古代人のこころを発掘せよ」で松本直子さんの縄文土偶に関する心理実験の紹介がありました。

外国人留学生を対象に土偶の顔について感想を聞き、中期土偶は女性的であり、子どもに近くかわいい印象である、後期以降の土偶は男性的であり、大人びた印象だというような結論が紹介されていました。

その時はこの認知考古学と銘打った心理実験の意義について判りませんでした。むしろあまり意味がないような印象でがっかりしました。自分も50年近く前になりますが、風景に関する心理実験をおこないある工学系学会で発表したことがあります。その時の体験から、松本直子さんの心理実験の様子はよく理解できるつもりですが、考古学的意義が理解できませんでした。


土偶の変化

松木武彦「はじめての考古学」(ちくまプリマー新書)から引用

2 認知考古学の意義が判った瞬間

「松木武彦「はじめての考古学」(ちくまプリマー新書)」を読んでいる中で次の文章にぶちあたりました。

「縄文時代の人も現代人も、同じホモ・サピエンスなので、脳や身体の生得的機能は共通しています。正確に言うと、遺伝子レベルでは「進化」しているのですが、たかだか一万年程度では、遺伝子レベルの変化は、形質(目に見える心や身体の特徴)には表れません。パソコンでいうとまつたく同じ機種です。ですから、顔の表情の認知(泣いているか笑つているか、喜んでいるか悲しんでいるか、などの感情の読み取り)も、縄文人と現代人はまつたく同じです。また、現代人でも民族を超えてまつたく同じです。日本人の悲しい表情がアフリカ人には楽しい表情、などということはありえません。あつたら、円滑な国際交流などはできないでしよう。」

この文章を読んで、「そうだったのか、顔表情認知は縄文人も現代人類もおなじだから、現代人類が読み取る顔面遺物の表情は、それを作った縄文人が表現しようとする表情と同じだといえるのだ。」と直観的に判りました。松本直子さん業績の紹介はその原理説明だったのだと理解できました。

早速「認知考古学」で調べてみると沢山の専門書が出版されていることを知りました。

3 認知考古学原理の理解

今後「認知考古学」関連図書を入手して認知考古学学習を深めたい思いますが、まず松木武彦「はじめての考古学」(ちくまプリマー新書)を読んだだけの情報で自分の理解をまとめておきます。今後の学習遍歴記録とするためです。


(専門書を読む前の)認知考古学原理の理解

4 問題意識

4-1 土偶と土版の意義の違いが認知考古学でわかる?

縄文晩期前葉の人面付土版(千葉市内野第1遺跡)(千葉市埋蔵文化財調査センター所蔵)を認知考古学の観点で観察すれば、縄文人は顔面を可愛く(幼く)表現していると考えられます。一方、後晩期土偶は松本直子さん実験により「怒り」「嫌悪」「男性的」であると理解されます。つまり土偶と土版の評価が正反対になります。この結果から、土偶と土版は顔面をふくむという共通点があるにもかかわらず、その機能や利用法が異なることが推定できます。土偶は壊され、土版は完形が多いということも土偶と土版の違いを浮彫にします。

4-2 本能レベルの感情と文化レベルの感情

本能に直結するような感情(女性的、男性的、悲しみ、驚き・・・)は確かに縄文人も現代人類も同じだと直観できます。しかし、文化に関連する感情(死生に関する感情、性(生殖)に関する感情、神(自然)に関する感情、食料や財物に関する感情・・・)は時代によって大きく異なってくることは当然です。そうした状況の中で、認知考古学がどのような方法で自らの有用性を確立しようとしているのか、詳しく知りたくなります。


2021年12月13日月曜日

旧石器時代洞窟壁画 スペイン切手

 旧石器時代洞窟壁画 スペイン切手

Paleolithic cave painting  Spanish stamp


As a hobby, I got 10 kinds of Spanish Paleolithic cave painting stamps (issued in March 1967) in "Collecting Archaeological Stamps of the World".

The Morella cave painting depicts a battle between groups with a bow and arrow as a weapon. For the first time, I learned about the Paleolithic conflict.


趣味としての「世界の考古学切手収集」の中でスペインの旧石器時代洞窟壁画切手10種(1967年3月発行)を入手しました。購入金額は10種でなんと¥130-です。考古学趣味の楽しみの大きさに釣り合わない、驚くほどの廉価です。


壁画10種のweb購入画面

10種にはアルタミラ洞窟を含めて、スペイン各地9洞窟の旧石器時代壁画が含まれています。

10種全部をこの記事で一挙に紹介しようとしたのですが、画像処理している中で突然、壁画価値の大きさに気が付きました。そこで1点づつじっくり鑑賞・思考していきたいとおもいます。


スペイン切手 旧石器時代洞窟壁画 モレーラ洞窟

40センチモ CVA MORELLA (CASTELLON)

この壁画を見た最初の印象は5人が弓を持って乱舞している様子だと思いました。しかし、よく見るとなんと矢が刺さった人物が2人いて、別の2人には今にも飛んできた矢が刺さりそうです。左の2人と右の3人が弓矢で戦っている様子を表現しています。生死を賭けた争いが壁画のテーマとなっています。狩場をめぐる2集団の縄張り争いでしょうか。


モレーラ洞窟壁画の解釈

負傷しつつもC・D・EがBを取り囲み一斉に矢を射っています。縄張りに侵入した外敵集団A・Bを我がC・D・E集団が負傷にもめげないで勇敢に立ち向かい撃退しつつある壁画だと想像します。

旧石器時代人の武器を使った集団的戦いを壁画にみるとはこれまで思ってもみないことでした。

この壁画に対する専門家の見解を知りたいものです。


モレーラ洞窟の場所 Google map画面引用


2021年12月12日日曜日

発泡・変形している土器片(市原市祇園原貝塚) 観察記録3Dモデル

 Foaming and deforming earthenware pieces (Gionbara shell mound, Ichihara city) Observation record 3D model


A piece of earthenware that is foaming and deforming was exhibited at the Kasori Shellmound Museum special exhibition. This is a rare exhibition. I observed the situation with a 3D model.

It seems that it was made as a result of the fire festival being held for a long time.


発泡・変形している土器片が加曽利貝塚博物館特別展「-市原市史跡指定-祇園原貝塚 千年続いた縄文のムラ」に展示されていました。珍しい展示です。3Dモデルでその様子を観察しました。

1 発泡・変形している土器片(市原市祇園原貝塚) 観察記録3Dモデル Foaming and deforming earthenware pieces 

発泡・変形している土器片(市原市祇園原貝塚) 観察記録3Dモデル Foaming and deforming earthenware pieces 

縄文後期

撮影場所:加曽利貝塚博物館特別展「-市原市史跡指定-祇園原貝塚 千年続いた縄文のムラ」

撮影月日:2021.12.02


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 81 images

Foaming and deforming earthenware pieces (Gionbara shell mound, Ichihara city) Observation record 3D model

Late Jomon  period

Location: Kasori Shellmound Museum Special Exhibition "-Designated as a historic site in Ichihara City-Gionbara Shell Mound, Jomon village that lasted for a thousand years"

Shooting date: 2021.12.02

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.010 processing 81 images


3Dモデルの動画

2 メモ


展示パネル説明

展示パネルでは次のように説明されています。

「祇園原貝塚最大の竪穴住居は、最大長18mもあり、面積にすると通常の住まいの4~5倍もあります。廃絶された建物内には、多量の土器、そして窓際を中心の焼土や炭化物、柱穴の内部などからは、焼けて黒色、白色に変質した、イノシシ・シカなどの獣の部位骨が見つかりました。

また、高温で熱せられたため、極度に変形し、器の表面が泡立ったように変質した土器片もたくさん見つかりました。専門機関によって科学的に分析した結果、1000~1200度で長時間熱を加えないとこの状態にはならないことがわかりました。夜通し続く「火まつり」が行われたのかもしれません。」

炉の熾火の上に絶えず薪をくべることによって炉内が高温になり、近くにおいた土器が発泡・変形したようです。パネル解説にあるように火を伴う祭祀が竪穴住居内で長時間続いたことを発泡・変形土器が指標するようです。


2021年12月11日土曜日

山梨県立考古博物館館長講座第1回「縄文時代の土面と土偶」zoom聴講

 Yamanashi Prefectural Archaeological Museum Director's Lecture 1st "Jomon period soil surface and clay figurines-Jomon society seen from rituals and rituals-" zoom audition


I was able to listen to the 1st lecture by the director of the Yamanashi Prefectural Archaeological Museum, "The soil surface and clay figurines of the Jomon period-Jomon society seen from rituals and rituals-" at zoom.

It was a very interesting story, and there was a lot of information that I couldn't get from specialized books, which was a great help for my learning in the Jomon period. Make a note of the main things that interest you.


2021.12.11午後、山梨県立考古博物館館長講座第1回「縄文時代の土面と土偶-儀礼と祭祀から見た縄文社会-」をzoomで聴講することができました。


「縄文時代の土面と土偶-儀礼と祭祀から見た縄文社会-」開講zoom画面

とても興味深いお話ばかりで、専門図書からは得られないような情報も多く、自分の縄文時代学習の大いに役立ちました。興味をもった主な事柄をメモしておきます。

1 講義内容

次の項目に従ってPowerPointで講義が進みました。PowerPoint資料は事前連絡でpdf版がダウンロード出来、予習ができました。

・土偶の一般的特徴

・出土状況(破壊的)

・機能・用途に関する諸学説

・文様の特殊性と製作者の性格(呪術的)

・土面の特徴と機能

・社会的機能

2 土偶の機能に関する諸説

次の諸説の説明がありました。

・女性の再生産=豊穣・安産

・社会的な再生産(安定)

・自然の恵の再生産=豊穣

・農産物の豊穣:ハイヌベレ型神話

・呪術・呪詛(高橋説)

私は吉田敦彦の図書を読んで、これまで「農産物の豊穣:ハイヌベレ型神話」説による土偶機能解釈に傾倒してきました。そして、最近「なにか違うようだ」と疑問を持ち、顔面付土器における「祖母→母→娘→孫娘」表現から「女性の再生産=豊穣・安産」説に転向しつつあります。そうした学習遍歴のなかで「呪術・呪詛」説を初めて知り、それがどの程度蓋然性があるのかまだ判りませんが、自分の学習意欲は大いにかきたてられます。あおられます。

3 土偶を使った模擬埋葬

縄文のビーナスなど幾つかの土偶はほぼ完形でかつ横倒しになって出土するものがあります。これら事例の解釈として、土偶を使って身代わりの埋葬をした可能性の話があり、きわめて注目に値するものだと驚きました。

例えとして、生きていてほしい人のために、その身代わりに土偶を埋葬する呪術があったかもしれないという話。あるいは、生きてほしくない人のために、その人を殺す呪詛として土偶を身代わりに(殺して)埋葬することがあったかもしれないという話。これらの思考は民族誌現場調査が無ければ決して生まれないものだと感心しました。

4 人頭形土製品(前期)の出土状況解釈


人頭形土製品の写真と出土状況

「印旛の原始・古代-縄文時代編-」(2007、財団法人印旛郡市文化財センター)から引用

この人頭形土製品の体は植物で出来ていて、植物の部分だけ失われて人頭形土製品だけの出土となった可能性があるとの説明がありました。確かに人頭形土製品が土坑の端にありますから、体が土坑に存在していたと考えて合理的である可能性を感じます。この遺構と遺物が全体として模擬埋葬であったと考えることも大いにありうることです。高橋龍三郎先生の発想に感心しました。

5 頭にヘビを戴く女

土偶で頭にヘビを戴く例の紹介があり、呪術師とか妖術師である可能性の話がありました。自分がこれまで観察してきた土偶や顔面にヘビを戴くものがあるかどうか、チェックしてい見ることにします。縄文のビーナスの「ヘッドギア」のような頭は何か?

6 土面と結社組織との完形

土面が氏族仲間を越えた結社組織で使われ、秘密の行動とも関係しているとのお話がありました。お話を理解する基礎知識が自分にはないので、今後参考文献を学習することにします。

7 感想

高橋龍三郎先生のお話を聞いて、ずっと前、中沢新一の「人類最古の哲学」「対称性人類学」「愛と経済のロゴス」「神の発明」「熊から王へ」などを面白く読んだことを思い出しました。その内容はほとんど自分の頭に残っていません。しかしそのような中沢新一的世界に足を踏み入れる事になりそうな予感がします。自分の趣味活動(縄文時代学習)が以前の全く別の読書と関連するとしたら大いに面白いことです。趣味(学習)の醍醐味を味わえるかもしれません。学習意欲が増してきます。


2021年12月10日金曜日

籠をまねてつくられた土器(市原市祇園原貝塚)

 Earthenware made by imitating a basket


I observed 4 pieces of earthenware made by imitating a basket with a 3D model. I'm interested in itself, but I'm also interested in the fact that the act of making earthenware that imitates real things has been proved.


籠(編組製容器)をまねてつくられた土器4点が加曽利貝塚博物館特別展「-市原市史跡指定-祇園原貝塚 千年続いた縄文のムラ」に展示されていました。3Dモデルで観察しました。それ自身に興味がありますが、実在物をまねた土器がつくられるという行為が証明されたという点でも興味が湧きます。

1 籠をまねてつくられた土器(市原市祇園原貝塚) 観察記録3Dモデル Earthenware made by imitating a basket

籠をまねてつくられた土器(市原市祇園原貝塚) 観察記録3Dモデル Earthenware made by imitating a basket

縄文後晩期

撮影場所:加曽利貝塚博物館特別展「-市原市史跡指定-祇園原貝塚 千年続いた縄文のムラ」

撮影月日:2021.12.02


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 91 images

Earthenware made by imitating a basket (Gionbara shell mound, Ichihara city) Observation record 3D model

Late-last  period

Location: Kasori Shellmound Museum Special Exhibition "-Designated as a historic site in Ichihara City-Gionbara Shell Mound, Jomon village that lasted for a thousand years"

Shooting date: 2021.12.02

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.010 processing 91 images


3Dモデルの動画

2 メモ

2-1 展示パネルにおける説明


展示パネル 引用

土器が実在物(籠[編組製容器])をまねてつくられるという行為が存在していたことが、この展示で証明されています。

2-2 私の興味

土器が実在物をまねてつくられるという行為が存在する証明がなされたのですから、異形台付土器が実在した装置の形状をまねてフィギュアとしてつくられたという私の仮説(想像)の蓋然性が高まります。そういう観点から籠をまねた土器に興味を持ちます。


異形台付土器が表現している装置のイメージ

2020.07.27記事「異形台付土器の展開写真作成と考察・学習仮説