花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.4〔仮説〕律令国家の直線道路、東海道水運支路の検討>3.4.155 墨書土器指標と建物指標のクロスによる遺跡評価
八千代市北海道遺跡のこれまでの検討で、「竪/掘」値(T)の分級(2015.06.18記事「八千代市北海道遺跡の「竪/掘」値(タテホリチ)」参照)と墨書土器対竪穴住居出土率(S)の分級(2015.06.22記事「八千代市北海道遺跡の墨書土器出土状況」参照)を行いました。
このTとSの分級図を並べてみると次のようになります。
北海道遺跡のTとSの分級図
この分級結果に基づいて、TとSのクロスによるゾーン評価をしました。
ゾーン評価基準(試案)は2015.06.12記事「墨書土器指標を用いた遺跡評価思考実験」で検討したものです。
TとSのクロスによるゾーン評価基準(試案)と評価結果 北海道遺跡
参考 TとSのクロスによるゾーン評価基準(試案)と評価結果 白幡前遺跡
参考 TとSのクロスによるゾーン評価基準(試案)と評価結果 井戸向遺跡
この評価結果を分布図にすると次のようになります。
TとSのクロスによるゾーン特性の検討 北海道遺跡
参考 TとSのクロスによるゾーン特性の検討 白幡前遺跡・井戸向遺跡
北海道遺跡の場合、指標を用いて検討するとⅣゾーンのみが業務地区となり、他のゾーンは全て一般集落地区となりました。
さて、Ⅲゾーンでは銙帯やハマグリが出土していて、以前の記事(2015.06.19記事「八千代市北海道遺跡 銙帯とハマグリ」参照)で違和感をメモしておきましたが、この違和感について考察しておく必要があります。
Ⅲゾーンは掘立柱建物の少なさや墨書土器出土率の少なさから一般集落地区として評価しました。しかし、銙帯、ハマグリが出土していて官人の存在と奢侈活動の跡を残した支配層の存在が暗示されます。官人と支配層は結局同じ対象であると考えてよいと思います。
一般集落地区で官人が活動していた理由を次のように考えます。
Ⅲゾーンは台地面と河岸段丘面の間にある斜面に主に立地しています。これから、斜面下すぐに湧水が存在し、その湧水を飲料水として活用する集落であったと考えます。
この集落は自然発生的に生れたのではなく、律令国家によって計画的に配置されたものであると考えると、この集落はⅢゾーン南西の台地面や西の須久茂谷津農業開拓の開発拠点であった可能性を感じ取ることができます。
Ⅲゾーンをこの付近一帯の農業開発拠点の居住地区、Ⅳゾーンを収穫物出荷のための倉庫地区として考え、居住地区の支配管理、倉庫地区の管理運営をそれぞれ官人が行っていたと考えると、Ⅲゾーンから銙帯とハマグリ出土、Ⅳゾーンから銙帯出土の理由が合理的に説明できます。
Ⅲゾーンの住人は主にブルーカラーですから墨書土器出土率が低く、Ⅳゾーン住人はサービス業務従事ですからホワイトカラー的であり墨書土器出土率は高くなり、この面でも合理的解釈ができます。
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