2015年6月19日金曜日

八千代市北海道遺跡 銙帯とハマグリ

花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.4〔仮説〕律令国家の直線道路、東海道水運支路の検討>3.4.152 八千代市北海道遺跡 銙帯とハマグリ

1 八千代市北海道遺跡から出土した銙帯
銙帯は官人が活動していた証拠であると考え、銙帯出土が官人の活動=律令国家の組織活動の存在の指標になると考え、このブログでは重視しています。

八千代市北海道遺跡から出土した銙帯は次の3点です。

北海道遺跡出土銙帯
参考に大型鉸具出土情報も加えました。大きさから馬具であると考えます。
銙帯・大型馬具スケッチは「八千代市北海道遺跡 -萱田地区埋蔵文化財調査報告書Ⅱ- 本文編、図版編」(1985、住宅・都市整備公団 首都圏都市開発本部・財団法人千葉県文化財センター)から引用

2点がⅢゾーンから、1点がⅣゾーンから出土しています。
Ⅲゾーンは掘立柱建物が1つだけで、白幡前遺跡・井戸向遺跡の検討ではミッションをもつ職務集団の活動の場ではなく、農業集落的性格がゾーンであると考えていますから違和感が生じます。

参考までに白幡前遺跡と井戸向遺跡の出土情報を再掲します。

井戸向遺跡・白幡前遺跡出土銙帯

井戸向遺跡ではⅣゾーンで掘立柱建物が少ないのですが、銙帯が2点出土し、その理由として、墨書土器文字情報等も踏まえて、そのゾーンが開発中の現場であり、官人が現場事務所に常駐していたというようなイメージで捉え、掘立柱建物が少ないことと銙帯出土の関係を解釈しました。

北海道遺跡のⅢゾーンではどのように考えるべきか、今後別の情報(指標)が揃った段階で検討します。

この記事では、Ⅲゾーンに違和感が生じたことを、遺跡特性を理解する上で重要な手がかりとなる違和感であると予感して、記録しておきます。

2 参考 遺跡別銙帯数の検討
遺跡別出土銙帯数は白幡前遺跡9、井戸向遺跡4、北海道遺跡3となります。先回りして権現後遺跡を調べると7となります。

銙帯出土が官人の活動=律令国家の組織活動の存在の指標になると考えているのですから、銙帯出土数は官人の活動量(官人数)=律令国家の組織活動量(=律令国家からみた拠点重要度)に比例すると考えることは極自然の成り行きです。

参考 萱田地区4遺跡の銙帯出土数

3 八千代市北海道遺跡から出土したハマグリ
萱田地区は東京湾から分水界を隔てた場所であり、東京湾産ハマグリ出土は奢侈活動が行なわれた証拠であり、その背景に権力の存在を感じることができます。銙帯と並び、ハマグリも律令国家の組織活動に関わる指標と考えられます。

八千代市北海道遺跡から出土したハマグリ(ハマグリをメインとした貝層)は次の3箇所です。

北海道遺跡ハマグリ出土竪穴住居跡

出土箇所は何れもⅢゾーンです。

銙帯出土と同じように、白幡前遺跡の検討を踏まえると違和感が生じます。

Ⅲゾーンは掘立柱建物は1つだけだけれども、そこに官人もいれば奢侈行動ができる権力者もいたということです。

Ⅲゾーンは萱田地区全体の中でどのような機能を果たしていたのか、興味がつのります。

白幡前遺跡ではミッションを異にする職務集団がゾーン毎に配置されていたように観察できたのですが、そうした様子とだいぶ趣が異なります。

この違和感・趣が異なることはこの記事に記録しておき、墨書土器の文字情報整理等が済んだ段階で、課題として検討・解決します。

参考として白幡前遺跡貝層出土遺構分布図を示します。

白幡前遺跡貝層出土遺構

井戸向遺跡からハマグリは出土していません。

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