千葉県出土縄文土器の形式学習を始めていて、その最初として隆起線文土器について取り組んでいます。この記事から隆起線文土器出土遺跡を「千葉県の歴史 資料編 考古1(旧石器・縄文時代)」(千葉県発行)掲載事例により学習を始めることにします。最初は市原市南原遺跡です。
1 南原遺跡の位置
南原遺跡の位置
養老川左岸標高約80mの台地縁辺部に位置します。
→地形をよく見ると小櫃川から延びる支谷の最上流部に遺跡が位置していて、この付近が台地平坦面の狭窄部になっていることがわかります。台地面を移動する獣を待伏せして捕獲するにはうってつけの場所です。
2 隆起線文土器
「出土層位はソフトローム層上部の暗褐色土層で、ソフトローム層中からの遺物出土はほとんど無かった。」
出土土器
「千葉県の歴史 資料編 考古1(旧石器・縄文時代)」(千葉県発行)から引用
「出土した隆起線文土器には、貼付した粘土紐をキザミによって短く分断したもの(図2-1)、 貼付した粘土紐を指頭圧により波状にしたもの(2~6)、 きわめて細い粘土紐がジグザグ状を呈するもの(7・8)、 口縁端部のつまみあげによる盛り上がり部分か波状を呈するもの(9)、 粘土紐の上に刺突・キザミを施すもの(10~13)がある。このほかに、粘土粒を貼り付けたもの(14・15)もある。なお、5については胎土中に獣毛もしくは人間の毛が混入されている可能性がある。」
→図版の模様を説明文により理解することが、残念ながらほとんどできませんでした。肝心要の情報を直観レベルで感得できません。写真や実物を見る機会を設けたいと思います。
追記 2019.01.19
市原市埋蔵文化財調査センターに問い合わせたところ、出土土器現物は南山大学(名古屋)が所蔵していて、センターでは写真もないとのことです。残念ですが、この遺跡の土器閲覧はとりあえず諦めます。
→記述を読むと少なくとも6種の異なる模様の作り方があるようです。それだけ多種の模様の土器が同じ時間断面で使われていたことがどのような意味があるか、着目して学習を進めます。6種の異なる模様土器が異なる個人(あるいは集団)の作で、それがこの場所にそろった(集合した)ということであるのか、6種の異なる模様は流行の時間差を表現していて、ある程度の長期間その場所に廃用土器のかけらが継続して捨てられたということなのか…、多様な推測が成り立ちます。
→出土土器片が小片ばかりです。全国の遺跡でも草創期土器はほとんど小片ばかりの出土のようです。小片ばかりが出土することにどのような意味があるか、今後着目して学習をすすめます。廃用土器は徹底して破壊したという特別な行為があったのではないだろうかと、後代縄文人の土器破壊行為から、憶測します。
3 有舌尖頭器
出土石器
「千葉県の歴史 資料編 考古1(旧石器・縄文時代)」(千葉県発行)から引用
「出土した石器(写真1)には,有舌尖頭器・尖頭器・石鏃・削器・石錐・石斧・彫器・楔形石器などがある。有舌尖頭器(写真1)は18点が出土している。石材は黒色緻密質安山岩が最も多く、ついで細粒砂岩・珪岩が若干ある。大きさは、最小のもので約2cm、 大きなものでも約7~ 8cm程度、主体となるものは約4~5cmの小型のものである。扶りの入る狭長の逆三角形の舌部を有するもの、舌部両側縁が緩やかに内湾して裾広がりの形態を示すもの、一側縁のみ湾曲する非対称な形態のものがある。」
4 まとめ
「南原遺跡の調査時点では、隆起線文士器の調査事例は少なく、隆起線文土器群と有舌尖頭器の出土は、草創期土器群の研究の進捗に大きく寄与するものとなった。」
5 参考 千葉県の隆起線文土器出土遺跡
千葉県隆起線文土器出土遺跡
千葉県隆起線文土器出土遺跡
0 件のコメント:
コメントを投稿