2018年11月8日木曜日

日本遺跡概要 1

現在、千葉県遺跡DB作成作業を行っていて意識が千葉県に集中してしまっていますが、興味における視野狭窄症にならないように、参考までに日本全体の遺跡データを眺めて、千葉県の意味を考えてみました。
WEBを検索すると「参考資料:平成24年度 周知の埋蔵文化財包蔵地数」という文化庁資料がダウンロードできますで、その数値表を県別グラフにして眺めてみました。

1 遺跡総数

遺跡総数
数値は重複集計(種別遺跡数の合計)されているようですから実際の遺跡サイト数ではありませんが、遺跡総数のイメージ的比較はできると考えます。
千葉県が全国2位であり、かつ東日本のなかではダントツの1位であり、千葉県の「歴史濃度」がとても濃いことがわかります。

2 旧石器時代集落跡・散布地数

旧石器時代集落跡・散布地数
千葉県は全国3位であり、東京都1位、神奈川県7位、埼玉県9位などが含まれる関東圏が全国でも有数の旧石器時代人生活域であったことがわかります。

3 縄文時代集落跡・散布地数

縄文時代集落跡・散布地数
千葉県は全国4位であり縄文人が好んで生活した場所であることがわかります。1位岩手県、2位北海道、3位長野県の面積は千葉県より広いので、単位面積あたり遺跡数を集計すれば千葉県の縄文遺跡密度はそれらの県よりも上位になると推測します。

4 貝塚数

貝塚数
千葉県がダントツの1位であり、貝塚文化は千葉県が中心に展開したと考えて間違いないと思います。貝塚学習に関して千葉県は申し分のないフィールドです。

5 古墳・横穴数

古墳・横穴数
千葉県は4位となりますが、東日本ではダントツの1位になる点に着目します。古墳時代には東国開拓・進出の前線拠点として上総・下総が中央から見て重要な地域であったことを物語っていると考えます。

6 感想
旧石器時代、縄文時代、古代で千葉県(という現在行政区域が存在する房総半島とその周辺域)が列島全体の視点からみて枢要な役割を果たした地域であると直観できました。学習のしがいがあるというものです。
このような俯瞰的視点も備えつつ千葉県遺跡DB作成作業を進めたいと考えます。
次の記事で上記グラフを分布図にしてみることにします。

2018年11月5日月曜日

千葉県遺跡の概要

現在、千葉県遺跡DB作成作業を行っていますが、その原典となるふさの国文化財ナビゲーション(WEBサイト、千葉県教育委員会)のダウンロードデータの概要をメモしておきます。

1 総遺跡数
はじめてふさの国文化財ナビゲーションから遺跡データをダウンロードしたのは2014年です。
2014.08.14記事「埋蔵文化財電子ファイルを入手する」参照
この時の総遺跡数と現在の総遺跡数を比較するとつぎのようになります。

千葉県遺跡数
千葉県には埋蔵文化財が約2万件存在すると言えます。
2014年から2018年の間に225件の遺跡が増加しています。この増加分の多くは牧関連遺跡のようです。

2 時代別遺跡数

千葉県時代別遺跡数
時代をまたがる遺跡が多いので、数値は重複してカウントされています。
古墳時代遺跡数が1万超と多いのは古墳そのものが多いためです。次いで縄文時代遺跡が6681件と多く、おそらく千葉県文化財の大きな特徴になると思われます。奈良平安時代遺跡も多く、蝦夷戦争や東北開発の拠点としての開発集落の多さを物語っていると考えられます。

3 種別遺跡数

種別遺跡数
数値は重複しています。
土器などの遺物出土が確認された包蔵地が8554件、次いで古墳5775件、塚2580と続きます。古墳の場合1遺跡に多数の古墳が内包されている場合も多いので、築造物としての古墳数はもっと大きな数になると考えられます。
貝塚は755件で千葉県種別ランクでは7番目となりますが、県別に貝塚数をみるとダントツの全国1位になる多さです。(文化庁H24データでは1位千葉県739件、2位茨城県381件、3位沖縄県348件…全国計3948件です。)

4 遺跡データの活用
2014年の学習では最初は遺跡数について自治体別に集計して検討学習しました。
その後アドレスマッチングにより遺跡をGISにプロットして、そのデータをヒートマップ分析するなどして学習に使いました。
現在では遺跡の緯度・経度によりGISに正確にプロットできるようになり、遺跡データの学習分析における使い勝手が向上しています。遺跡の種別や時代別分析だけでなく、「遺構概要」を使ったり、「千葉県の歴史」の遺跡事例データ(708遺跡)を使ったりして質の高い学習分析が可能となります。

2018年11月1日木曜日

当面のブログ活動について

今年夏までに大膳野南貝塚学習や西根遺跡イナウ似木製品関連学習など縄文時代学習に熱中してきていますが、秋口から自分が望む縄文時代学習のレベルを確保する(学習の底上げを図る)ために本来学習を縮小して大半の時間を私家版データベース作成に費やしています。本来学習活動を中断してでも私家版データベースを作成してそれを自由に使えるようにすることが結果として本来学習活動を大幅に加速できると判断したからです。

この記事では、私家版データベース作成が今しばらく続きますのでその状況を報告するとともに私家版データベース作成作業中のブログ活動方針をメモします。

1 作成している私家版データベース
1-1 千葉県遺跡DBテーブル
・基本情報源…ふさの国文化財ナビゲーション(千葉県教育委員会)ダウンロードデータ
・レコード数…20130
・フィールド(項目)…遺跡ID、遺跡コード、遺跡名、遺跡名かな、住所、時代、種別、立地、遺構概要、文献、備考、緯度、経度、水系、その他
・作業アプリ…File Maker(結果はExcel等にエクスポート)
1-2 「千葉県の歴史」DBテーブル
・基本情報源…「千葉県の歴史 資料編 考古1~4」(千葉県教育委員会)(紙資料を独自に電子化)
・ページ数…総計4318ページ
・遺跡事例(総数708)は千葉県遺跡DBとGIS空間でリレーション
・表現アプリ…File Maker(pdf表示)
1-3 参考 千葉県遺跡DBとGIS空間でリレーションさせるDBテーブル
ア 千葉県墨書土器DBテーブル(明治大学公開)
イ 千葉県小字DBテーブル(角川地名事典付録小字リスト 紙資料を独自に電子化)

2 私家版データベース作成中のブログ活動
私家版データベース作成は集中作業を要するものですが、これまで学習一般に熱中するあまり放置してきたものです。この度この集中作業に取り組んだので一定の成果を得るまで食いつきたいと思います。その間は学習一般に熱中することはできないことであると考えます。そこでデータベース集中作業の合間に次のような「気軽な」記事を時々書きたいと思います。
・「千葉県の歴史 資料編考古4(遺跡・遺構・遺物)」の項目別学習記事(受け身的学習)
・「千葉県の歴史 資料編考古1(旧石器・縄文時代)」の説明記事及び遺跡事例学習記事(受け身的学習)
・私家版データベースの作成や活用策等に関する感想
・本来学習テーマ(縄文時代学習)に関するメモや感想
・その他

なお私家版データベースに関する技術的興味はブログ花見川流域を歩く番外編に記事として書きます。

花見川の風景

2018年10月30日火曜日

遺跡DB感想 丸木舟

千葉県遺跡DB(中間試作品)は20130レコードが収録されていますが、このデータを対象に一例として丸木舟(船)の検索をしてみました。刳舟(船)、独木舟(船)などのキーワードも含めています。
結果は64レコード(64遺跡)が抽出されました。

丸木舟の抽出結果(一部)

64レコードのうち位置情報が判っている61レコードをQGISにプロットすると次のようになります。

丸木舟抽出結果のQGISプロット(一部)

「千葉県の歴史 資料編 考古4(遺跡・遺構・遺物)」(千葉県発行)には「丸木舟」という項目があり、そこでは丸木舟出土遺跡122とその概略プロット図が掲載されています。

「千葉県の歴史 資料編 考古4(遺跡・遺構・遺物)」(千葉県発行)掲載「丸木舟の出土地」
(残念ですが大賀ハスで有名な落合遺跡の位置は「少しずれている」域を通り越して「間違って」います。)

この二つの情報(遺跡DBの丸木舟情報と丸木舟研究成果)をくらべると研究成果における丸木舟出土遺跡が遺跡DBで直接丸木舟検索で約半分が抽出できることが判ります。
また研究成果で丸木舟出土が確認された遺跡のほとんどを遺跡DBで確認することができます。
このことから丸木舟研究成果の学習(千葉県の歴史資料編考古4(遺跡・遺構・遺物)」の学習)において遺跡DBを活用すれば正確なプロットが可能となり、丸木舟出土遺跡付近の状況や近隣遺跡の情報を知ることが容易になり、学習を深めるツールに活用できることが直観できます。

丸木舟の学習をする場合、「千葉県の歴史」つまり最新研究成果を受け身で知るだけでなく、遺跡DBでその様子をプロットして丸木舟出土遺跡の状況を能動的に理解することが可能となります。

GIS連動千葉県遺跡DBに対する学習活用の期待が高まります。千葉県遺跡DBを中間試作品から概成製品に格上げできるように作業を進めます。


2018年10月27日土曜日

遺跡DB感想 縄文・木製品

約2万件の千葉県遺跡DB調整作業のうち主に首から下の肉体を使う単純整形力仕事のメドがつき、遺構概要等コンテンツの主部が姿を現してきました。残るは首から上の思考を伴うファイル操作になりました。めざす暫定完成にはまだ時間がかかりますが仮製品を利用してその使い勝手を試してみました。

印西市西根遺跡で出土した縄文後期木製品がイナウ似であり、縄文時代木製祭具であるという仮説を設ける学習を最近しました。
縄文後期イナウ似木製品の意匠と解釈~印西市西根遺跡出土品の実見・分析・考察~」参照

同様のイナウ似木製品が千葉県から出土していないかどうか以前から気になっていたところです。「杭」などと鑑定され検討対象になっていない遺物があるかもしれません。
そこで仮DBで「縄文」「木製品」をキーワードに検索してみました。

仮DBにおける「縄文」「木製品」をキーワードとする検索結果 Excelエクスポート(部分)
21遺跡が抽出され、縄文時代木製品が出土したと考えられる遺跡が多く含まれます。丸木弓、丸木舟など具体的製品名が表示されているものもありますが、単に木製品とかかれたものもあります。
これらの遺跡について文献をたどればもしかしたらイナウ似木製品にたどりつくことができるかもしれません。イナウ再発見になるかもしれません。
イナウ似木製品にたどりつけなくても、千葉県縄文時代木製品カタログの出発資料をつくることができます。

GIS連動千葉県遺跡DBが利用できるようになることの意義の大きさを体感しました。

2018年10月21日日曜日

遺跡DB感想 文献のない遺跡の重要さ

約2万件の千葉県遺跡のうち「文献のない遺跡」が13765件(暫定)で全体の68.8%となります。「文献のない遺跡」のうち備考欄に調査実施が記述されているものが683件(暫定)あり、「文献のない遺跡」全体の約5%を占めます。当該遺跡を対象とした正式調査が行われた遺跡のほとんどは文献として記録されているようです。
「文献のない遺跡」の95%はこれまで正式な発掘調査は行われていないけれども自治体文化財行政担当官現場を足であるいて調べてきた貴重な遺跡であると言えます。
「文献のない遺跡」といえどもDB遺構・遺物概要には詳細な記載があるものが多く、長年にわたる貴重な情報集積結果が表現されていると言えます。
遺跡DBの使い勝手を改善することによって、貴重な「文献のない遺跡」情報の有効活用がはじめて可能になります。
詳しく調査され詳細な発掘調査報告書が発行されている遺跡を核として活用し、その知識を面的に敷衍する因子として「文献のない遺跡」を学習利用したいと思います。

風景

2018年10月19日金曜日

遺跡DB感想 低地の縄文遺跡

約2万ある千葉県遺跡を立地「低地」、時代「縄文」で検索してみました。170件(暫定)の遺跡が抽出されました。特徴ある遺跡ばかりで、海浜の漁獲物製品化作業場遺跡、丸木舟が出土するミナト遺跡、破壊土器が集中する祭祀遺跡、狩場近くの動物解体遺跡、墓域を含む遺跡などがふくまれています。
検索をより緻密にすれば(例 微高地、平地などの検索も行い沖積地や水辺の縄文遺跡を見つける)より多くの低地遺跡を見つけることができそうです。
低地の縄文遺跡を学習することによって縄文社会の様子をより立体的に捉えられることは確実です。
低地の縄文遺跡については数も悉皆的に扱える範囲になりますから、全ての文献等(発掘調査報告書等)を閲覧して知識を増やすプロジェクトをいつか立ち上げたいと思います。

なお、因みに立地「低地」時代「旧石器」で検索したところ5件の遺跡が検出されました。詳しく吟味する必要がありますが、低地から旧石器ブロックが出土している遺跡が含まれていることは確実であり、どうしてそのような状況が生まれるのか、海進・海退や地殻変動の影響などの要因も含めて興味がつのります。

花見川風景

2018年10月17日水曜日

遺跡DB感想 神社と遺跡との関係

約2万の千葉県遺跡データの中で「立地」に神社や神社境内などの記述があるものが324(暫定)あります。遺跡の種別と時代の対応のイメージは次のようになり類別がかなりはっきりしています。
……………………………………………………………………
●「立地」に神社・神社境内等が記述されている遺跡
貝塚(縄文~古代)17
集落跡(縄文~古代)11
包蔵地(縄文~古代)80

洞穴(弥生~古墳)1
古墳(古墳)84
横穴(古墳~古代)8
官衙跡(古代)1

寺院跡(古代~中近世)2
生産跡(古代~近世)2

やぐら(中世~近世)11
砦跡(中近世)1
城館跡(中近世)57
塚(中近世)49
……………………………………………………………………
1件1件の遺跡の状況を詳しく調べることが最初に必要であることは言うまでもありませんが、神社の始まりが遺跡の存在と関わっているものが数多くあることは確実だと考えます。
「立地」に神社と書かれていなくても現場に行けば神社が存在する遺跡も数多くあると想像します。
遺跡データベースを詳しく分析すれば遺跡の存在と神社(信仰の場所)発生との関係を詳しく予察することが出来そうです。

なお、これらの情報のなかで神社つまり信仰の場の発生が縄文時代に遡ることができるものがあるかどうか、特段の興味があります。
どのような情報をあつめれば、あるいはどのような思考をすれば当該神社(信仰の場)の起源が縄文時代にさかのぼると言えるのか、学習を深めることにします。まず縄文-弥生-古墳の社会連続性について学習することにします。

花見川風景



2018年10月15日月曜日

遺跡DB感想 既存集落と古代遺跡の重複関係

水田耕作が行われるようになった弥生時代以降の集落は低地の微高地に立地したものが多かったと考えます。
一方高度成長期以前の下総地方の地形図をみると低地の微高地例えば谷津低地の台地急崖下の微高地には集落が沢山ある景観となっています。
弥生時代や古墳時代や奈良平安時代の水田耕作集落の好立地場所、つまり低地の微高地は近世近代の水田耕作集落の好立地場所とあまり変わらないと想定すると、現代(高度成長期以前)の低地集落は古代集落の場所と重なる場合が多いと考えられます。

遺跡DBの情報で、現代(高度成長期以前)集落の場所で遺構・遺物を発見・発掘した遺跡があるかどうか興味が湧きます。
面的大規模開発等で低地既存集落が発掘調査対象地域に含まれたものがあるかどうか、もしあれば遺構・遺物が出土したのかどうか調べたい(知りたい)と思います。

このような興味の背景に、弥生時代遺跡の数量が時代の短さを考慮しても少なすぎて、多くの弥生時代集落の上に現代集落(高度成長期以前)が重複立地しているからではないかという疑問があるからです。

遺跡DBを使って、集落(住居)遺跡数の時代(時期)別統計を地域別に作成し比較すれば社会の変動に関する情報を得ることができると思いますので、いつか検討してみることにします。

花見川風景


2018年10月13日土曜日

遺跡DB感想 土器形式

遺跡DB(千葉県遺跡DB)の遺構・遺物欄に出土土器形式が掲載されているものが多数あります。
例えばたまたま見ている例(墨総合公園内遺跡)では次の縄文土器形式が掲載されています。

縄文土器[加曽利<B1B2B3EⅢ>,安行<Ⅰ,Ⅱ,Ⅲa,Ⅲb>,阿玉台<Ⅱ,Ⅲ>,称名寺,諸磯,興津,茅山<上層>,浮島<Ⅱ>,五領ケ台,田戸,稲荷台,荒海,花積下層]

このような遺跡別出土土器形式情報を千葉県遺跡全体(遺跡総数約2万)で通覧することは事実上データベースだけでしかできないと考えられます。
データベースが完成したあかつきには土器形式別に出土遺跡を検索してGISにプロットすることはいわば瞬間的にできるようになります。従って、その情報をつかって土器形式の分布変化、つまり縄文遺跡の時期別分布変化について学習したいと今から楽しみにしています。しかし、おそらくいろいろな課題(問題)が生れて単純なかたちで土器形式分布変遷が捉えられないかもしれませんが、そのプロセス自体がチャレンジしがいのある学習になりそうです。この学習のなかで土器形式そのものに関する基礎知識も得たいと思います。

ちなみに上記例の遺跡は文献欄は空白ですからこのデータベースを利用しない限りこの情報を利用することはできません。同じような、文献はないけれども調査がされた遺跡が多数あります。
なお、文献が掲載されている遺跡について、おそらく1万前後あるのではないかと想定しますが(近々正確な数字が判明します)、その文献を閲覧確認することは数量的に事実上不可能であると考えますからデータベースの意義は大変大きいものとなります。

花見川風景