2019年12月20日金曜日

2点並んで出土した縄文中期深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 291

尖石縄文考古館に展示されている「2点並んで出土した縄文中期深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡)」の観察記録3Dモデルを作りました。強いガラス面反射にも関わらず思いのほか上等に作成できました。なお土器模様は複雑で、その意味を一瞥で理解することはとてもできません。

2点並んで出土した縄文中期深鉢形土器(茅野市下ノ原遺跡) 観察記録3Dモデル
撮影場所:尖石縄文考古館
撮影月日:2019.09.13
4面ガラス張りショーケース越しに撮影
私の3Dシーン写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 51 images(Masquerade機能利用)

撮影写真の一例

2点ならんで出土した様子の説明

感想と考察
1 2点並んで出土した意味
大小の土器が並んで出土する特徴的な例として次の2例をすぐに思い浮かべます。

異形台付土器 加曽利貝塚 加曽利B3式期
加曽利貝塚博物館展示

五領ヶ台式土器 上谷遺跡 埋納土器 上谷遺跡
八千代市郷土博物館展示

下ノ原遺跡の例も含めて、いずれも大小土器の様子から夫婦を思い浮かべてしまいます。
いずれのペア土器も、男女が会う(交合する)ことによる増殖(妊娠出産)にかかわる祭祀で使われたものであるととりあえず作業仮説的に空想しておきます。どれも2点が完形で出土していて、その点の共通性がどのような活動(思考)から導かれているのか、興味が湧きます。

2 2点土器の模様
2点の土器ともに真上からみると土器開口部そのものを「玉」とした「玉抱三叉文」を形成しています。また小土器には玉から球状物体が頭を出す立体的な「玉抱三叉文」を観察できます。出産の状況を暗示している土器です。
土器模様の詳しい観察はこれから行うことにします。
なお2点の土器ともに模様が4単位であり、それぞれ微妙に異なる様子はリズミカルであり、四季とか天体運航との関係があるのかどうか、気になります。

3 土器における出産状況の表現の感想
2点の土器ともに「玉抱三叉文」が表現され、小土器のほうは赤ん坊の頭が産道から見える様子を表現していて、模様とはいえリアルです。
それほど出産にこだわる意味が分かってきたような気がしています。
縄文人男女が(つまり全縄文人が)子孫を残すことが何物にも代えがたい使命であると考えていたのだと思います。子孫を残すことが人生の最大で最高の目的であったのだと思います。子孫を残せればそれこそが幸福であったのだと思います。
生まれた子供の多くが育つ前に死んでしまうため、できるだけ多く出産数を稼ぐ必要があります。そのため、出産そのものに対する喜びが大きかったのだと思います。
出産のリアルな表現、あるいは模様化抽象化した表現で土器を修景して、それで煮炊きして食事をすれば、その食事は特段においしかったのだと想像します。
食材が多少粗末でも、出産を描いた土器で調理すれば、出来上がった料理は美味しくなるという現実が存在していたのだと思います。

……………………………………………………………………

参考 カメラ配置

2019年12月19日木曜日

蛇体把手付深鉢形土器(茅野市尖石遺跡)観察記録3Dモデル

縄文土器学習 290

尖石縄文考古館に展示されているいくつかの蛇体把手付深鉢形土器のうち一つについて比較的出来のよい3Dモデルができましたので掲載します。

蛇体把手付深鉢形土器(茅野市尖石遺跡) 観察記録3Dモデル 
縄文中期前半 
長野県宝 
撮影場所:尖石縄文考古館 
撮影月日:2019.09.13 
4面ガラス張りショーケース越しに撮影 
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 89 images

撮影写真の一例

3Dモデル

3Dモデル
ヘビの頭をよくみると小さな目が表現されています。

……………………………………………………………………
補遺
webサイト「縄文記号の世界」(武居竜生先生)2018.03.21記事「第7回 縄文土器の女性記号「女性自身」」にこの土器について説明図とともに次のような記述があり、土器文様の理解を深めることができました。
この深鉢には口の部分に把手(とって)が一つあります。手前側はとぐろを巻いた蛇になっていて、反対側は女性自身と思われる造形になっています。この把手は、蛇(男性を表す記号と考えています。)と女性自身(女性)で『男性と女性が愛し合っている』ことを表していると考えます。つまり、 彼らは女性自身を土器に配置することで女性の存在そのものを表していたと考えます。
3Dモデルを上から見ると、この記述が対象とする図像を詳しくみることができます。

2019年12月18日水曜日

縄文中期有孔鍔付土器(富士見町新道遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 289

長野県富士見町新道(あらみち)遺跡出土有孔鍔付土器の観察記録3Dモデルを作成しました。諏訪市博物館藤森栄一記念コーナーに展示されている土器を博物館の許可を得て撮影し掲載するものです。

縄文中期有孔鍔付土器(富士見町新道遺跡) 観察記録3Dモデル
撮影場所:諏訪市博物館藤森栄一記念コーナー
撮影月日:2019.09.13
許可:撮影及びweb掲載は諏訪市博物館の許可による
ピラミッド型ガラスショーケース越しに撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 128 images(Masquerade機能利用)

撮影写真の1例
撮影及びweb掲載は諏訪市博物館の許可による

説明パネル
撮影及びweb掲載は諏訪市博物館の許可による

藤森栄一記念コーナーの様子
撮影及びweb掲載は諏訪市博物館の許可による

藤森栄一記念コーナーの様子
撮影及びweb掲載は諏訪市博物館の許可による

感想・興味・考察
1 土器の「人面」模様
富士見町史上巻ではこの土器の模様の1つを人面として紹介しています。

富士見町史上巻における人面紹介

イチョウ模様が人面である説明(富士見町史上巻)

一方、この土器をよく観察すると、イチョウのような模様とともに別の三日月のような模様も存在しています。

縄文中期有孔鍔付土器(富士見町新道遺跡)のイチョウ模様と三日月模様(画面はオルソ投影画面)
イチョウ模様が対向して2つ、三日月模様が対向して2つ表現されています。イチョウ模様と三日月模様は強く関連する(対になっている)模様です。そして、三日月模様が人面でないことは明らかです。
この様子から、イチョウ模様は人面として描かれたものではなく、富士見町史上巻で詳しく説明しているように、ある観念的な二つの三日月を表現していて、その二つの三日月と対で一つの三日月も表現されていると仮想します。
イチョウ模様(ある観念的な二つの三日月)は物語や神話を伴うもので、そのイメージが土偶人面にも好んで使われたのかもしれません。
なお、イチョウ模様と三日月模様がまるで額縁に納まっているように造形されています。

2 藤森栄一
諏訪市博物館を訪れて私は藤森栄一と縄文農耕論というものに知りました。今後その人物や著作について興味を持ちたいと思います。

……………………………………………………………………

参考 縄文中期有孔鍔付土器(富士見町新道遺跡)のカメラ配置


2019年12月17日火曜日

渦巻文、流線文、波線文、波紋文

縄文土器学習 288

2019.12.16記事「唐草文Ⅱ期深鉢(埋甕)(伊那市御殿場遺跡) 観察記録3Dモデル」に引き続き、同じく伊那市創造館に展示されている同時期の縄文土器4点の3Dモデルを作成しました。

唐草文Ⅱ期深鉢(埋甕)(伊那市御殿場遺跡2号住居) 観察記録3Dモデル
撮影場所:伊那市創造館
撮影月日:2019.09.12
3面ガラス張りショーケース越しに撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 19 images(Masquerade機能利用)

展示の様子
中央が唐草文Ⅱ期深鉢(埋甕)(伊那市御殿場遺跡2号住居)、左は縄文中期中葉深鉢(伊那市月見松遺跡)、右(一部)は唐草文Ⅱ期深鉢(埋甕)(伊那市御殿場遺跡3号住居)(2019.12.16記事扱い)

縄文中期中葉深鉢(伊那市月見松遺跡) 観察記録3Dモデル
https://skfb.ly/6Pxup

縄文中期中葉有孔鍔付土器(伊那市月見松遺跡) 観察記録3Dモデル
https://skfb.ly/6Pxuq

縄文中期中葉椀形土器(伊那市月見松遺跡) 観察記録3Dモデル
https://skfb.ly/6Pxus

これらの3Dモデルを作成しながら土器文様を詳しく観察すると渦巻文、流線文、波線文、波紋文が特徴的に使われているのでメモしておきます。

1 渦巻文、流線文、波線文

渦巻文と波線文の組み合わせ
唐草文Ⅱ期深鉢(埋甕)(伊那市御殿場遺跡3号住居)

渦巻文、流線文の組み合わせと波線文 
唐草文Ⅱ期深鉢(埋甕)(伊那市御殿場遺跡3号住居)

じっくりかんさつすればするほど次のような対応関係が自分には感得されてしまいます。
渦巻文…湧泉の様子、つまり湧泉文
流線文…水の流れ、つまり流水紋
波線文…水の細流の流れ、つまり小川文
地図記号や略図地図表現がそのまま土器に書かれたような印象を受けます。

唐草文Ⅱ期深鉢(埋甕)(伊那市御殿場遺跡3号住居)における特徴的な文様

2 他の土器における渦巻文、流線文、波線文、波紋文
この特徴的な文様…水・河川に関係するかもしれない文様…が他の同時代土器にも使われているので、これら一連の文様に強い興味を持ちます。

唐草文Ⅱ期深鉢(埋甕)(伊那市御殿場遺跡2号住居)における特徴的な文様


縄文中期中葉深鉢(伊那市月見松遺跡)における特徴的な文様

3 感想
縄文人にとって飲料水は湧泉から得ていたと考えられますから、湧泉の存在は生活の基本条件であり、それを渦巻文として用いることは十分にありうることであると考えます。
湧泉から川が発出するので、川が土器に描かれることはごく自然な出来事であると考えることできると思います。
これらの文様が使われている縄文土器情報を集め、時間的・空間的にこの文様がどのように分布しているのか検討を深めたいと思います。

なお、次の文様も渦巻文の一種であるといえるのかもしれません。興味が興味を呼びます。

水噴出を表現するかもしれない文様






2019年12月16日月曜日

唐草文Ⅱ期深鉢(埋甕)(伊那市御殿場遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 287

伊那市創造館展示の唐草文Ⅱ期深鉢(埋甕)(伊那市御殿場遺跡)の観察記録3Dモデルを作成しました。

唐草文Ⅱ期深鉢(埋甕)(伊那市御殿場遺跡) 観察記録3Dモデル
撮影場所:伊那市創造館
撮影月日:2019.09.12
3面ガラス張りショーケース越しに撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 34 images(Masquerade機能利用)

展示風景

観察と感想
1 口縁部の渦巻と波線 
口縁部が「縄」のような隆線で4つに区分され、それぞれの区分の中に2つの区画が作られています。2つの区画の間には渦巻とそれから伸びる波線が沈線で書かれています。

口縁部の渦巻と波線
渦巻と波線から湧泉とそれにより生じる細流をイメージしました。
もし湧泉と細流ならば、それが2つの区画の間を流れていることから、2つの区画は人間活動領域を表現していると推察できるかもしれません。
伊那谷に見られる解析された段丘や扇状地の様子を描写しているようにも感じられます。
渦巻はすべて右巻きです。

2 胴部の渦巻と4本線
胴部に沈線で渦巻とそれから垂下する4本(3~5本)の直線が2段にわたって描かれています。このセットが口縁部区画に対応して8つ(1つは撮影不能)存在しています。上の渦巻は右巻き、下の渦巻は左巻きで統一されています。
また、この渦巻直線2段セットの間に沈線で波線が描かれています。

渦巻直線2段セット+波線の様子
渦巻は湧泉であり、直線はそれから生じる川の流れであるとイメージしました。段丘崖下の湧泉の水が集まって川の流れを形成している様子を想像してしまいます。波線は段丘面にある浅い谷の流れかもしれません。

3 「土器正面」という意識
胴部に書かれている8つ(1つは観察不能)の渦巻直線2段セットの上部渦巻が2カ所で頸部・胴部区画線をわざと上書きしています。この上書きは土器正面を確定させる意識的行為であると考えます。

土器正面がC面である様子
BとCの間の上書きが激しく、CとDの間の上書きが少ないことから、C面が正面であると考えます。
また、C→D→A→Bという順番が存在していて、その順番が何らかの活動に使われていたと考えます。

土器の模様から浮かんだ上記イメージが妥当なものであるのかどうか、さらに学習を進めて、評価できるようにしたいと思います。

2019年12月15日日曜日

縄文時代研究講座 米倉貴之先生講演の聴講

縄文土器学習 286
2019.12.15に千葉市生涯学習センターで開催された加曽利貝塚博物館主催の縄文時代研究講座「県内他地域からみた加曽利貝塚の様相-印旛地域との比較-」を聴講しました。講師は加曽利貝塚博物館学芸員米倉貴之先生です。
加曽利貝塚博物館企画展「あれもEこれもE-加曽利E式土器(印旛地域編)-」(2019.11.16~2020.3.1)と連動した講演です。

講演会の様子

●講演内容
・講演では企画展に展示されている土器が発掘された遺跡のいくつかを紹介しながら、その遺跡と加曽利貝塚との比較をするというかたちで話が進みました。
・最終結論として印旛地域遺跡の加曽利E式土器は「意匠充填系」「横位連携弧線系」が多いのに対し、加曽利貝塚ではこれらのE式土器出土は皆無にちかくほとんどが「キャリパー形」であることが指摘されました。
・また、竪穴住居分布からみた遺跡構造(集落分散傾向)は、印旛地域も加曽利貝塚も密集中心部とはなれた少数からなり、同じパターンであることが確認できたと話がありました。
・同時に加曽利貝塚の発掘面積は全体の8%程度であり、今後発掘が進めば新しい情報が加わり、加曽利貝塚の認識が大いに変わる可能性があるとの指摘もありました。

●感想
・印旛地域と加曽利貝塚とでは加曽利E式土器の器形が少し違うという指摘は、これまでの各地博物館観覧での印象と合うような気がします。多数作成した3Dモデルの整理作業のなかで、この指摘がどの程度あらわれるか、楽しみです。
・加曽利貝塚と千葉市域の遺跡では加曽利E式土器の器形が共通していて、それと印旛地域とが違うという文脈で講演を理解しましたが、そのような理解でよいか、自分の観察で確かめてゆくことにします。それでよいのなら、東京湾沿いの貝塚ゾーンではキャリパー形土器であり、印旛沼・鹿島川流域では非キャリパー形という区分になり、生業の在り方と関連するのかもしれません。
・ただし、印旛地域の遺跡は加曽利EⅢ・EⅣが多く、加曽利貝塚では加曽利EⅠ・EⅡが多いという時間の平仄があっていないという問題が残されています。加曽利EⅠ~EⅣの全期を通じて印旛地域と加曽利貝塚(及び近隣千葉市遺跡)とでは器形が異なるといえるかどうか、確認する必要があります。
・学習課題はたくさんうまれましたが、この講演で器形の地域差の指摘があったことは、自分にとって刺激になり、格好の学習促進剤となりました。

……………………………………………………………………

参考 加曽利貝塚博物館企画展「あれもEこれもE-加曽利E式土器(印旛地域編)-」(2019.11.16~2020.3.1)パンフレット


驚愕!? パネル文土器と天文 富士見町史上巻の仮説

縄文土器学習 285

藤内式深鉢形土器(伊那市西箕輪 金鋳場遺跡)のストーリー性を直観させる区画4面模様に特段の興味を持ち、それを深めています。
2019.12.12記事「藤内式深鉢形土器(伊那市西箕輪 金鋳場遺跡) 観察記録3Dモデル

関連して、藤内式深鉢形土器(伊那市西箕輪 金鋳場遺跡)の時代と近い時代の区画4面模様土器(パネル文土器)に古代中国「淮南子」の天文訓思想を投影して、天文観察者がこの土器を作ったという驚愕の仮説を「発見」しましたので、メモします。

1 天文仮説

井戸尻3号住居址出土の四方眉月文深鉢
富士見町史上巻から引用(該当部筆者小林公明さん)
(土器名に「四方眉月」という解釈を前提とする文言を使っていることに違和感を持ちます。)

井戸尻の天文図象
富士見町史上巻から引用(該当部筆者小林公明さん)

井戸尻3号住居址出土の四方眉月文深鉢に2000年後の古代中国「淮南子」の天文訓思想を投影して模様の解釈をしています。
4つの区画文(パネル文)がそれぞれ4季の天文事象(四季事象)と対応しているとしています。

2 感想
・もしこの仮説が有効なものであるならば、現在興味を深めている藤内式深鉢形土器(伊那市西箕輪 金鋳場遺跡)も同様に天文事象を表現している土器として解釈できる可能性が生まれます。
・伊那市土器を最初見たとき、知識が全くない状態で、この土器はカエルとヘビの四季の様子を表現しているという感想を持ちました。四季と天文は同義です。
・天文仮説が有効であってもらいたいという希望(?)が自分の中に生まれています。

参考 藤内式深鉢形土器(伊那市西箕輪 金鋳場遺跡)
口縁部の4区画の模様を四季に対応するものとして、仮説したくなります。天文仮説を応援したくなります。

・しかし、4つの区画文のデザインそのものから天文事象(四季事象)を暗示する有力情報はくみ取れないようです。天文事象(四季事象)を4つという区画数だけを手掛かりにして、土器に対応させているように感じられます。
・「淮南子」天文訓を一方的に土器に投影しているだけの片思いのようです。
・筆者が、区画とは畑の区画を表現しているという前提にたっていることも違和感を覚えます。
・パネル文土器天文仮説に対して、魅力と反発が混じった複雑な感情を持ちます。

……………………………………………………………………
富士見町史上巻
ブログ芋づる式読書のメモ2018.03.6記事「富士見町史上巻の入手


縄文土器大観にみる藤内式深鉢形土器(伊那市金鋳場遺跡)

縄文土器学習 284

藤内式深鉢形土器(伊那市西箕輪 金鋳場遺跡)のストーリー性を直観させる模様に特段の興味を持ち、その興味を深めています。
2019.12.12記事「藤内式深鉢形土器(伊那市西箕輪 金鋳場遺跡) 観察記録3Dモデル
この土器の模様は「縦位区画文」(パネル文)と呼ばれるもので、懸垂隆帯で器面を縦割りし、その間を矩形や菱形のパネル文で埋め尽くすものです。

藤内式深鉢形土器(伊那市西箕輪 金鋳場遺跡)の模様パターン

懸垂隆帯で区画される4つの面は対向する面の模様がそれぞれ類似していて、かつわずかに異なります。その様子に重大な意味が隠されているようなパターンであると直感しました。このような模様パターンの土器としてどのような事例があるのか、縄文土器大観(小林達雄編集 小学館)で調べてみました。
調べだすと、なんとこの土器そのものが掲載されていることを「発見」しました。

縄文土器大観掲載の藤内式深鉢形土器(伊那市西箕輪 金鋳場遺跡)写真
縄文土器大観から引用

縄文土器大観掲載の藤内式深鉢形土器(伊那市西箕輪 金鋳場遺跡)写真 一部拡大
縄文土器大観から引用

3Dモデルから模様がよくわかるように調整した自分の写真よりはるかに鮮明で正確な写真であり驚きました。写真専門家が特別の撮影装置で撮影したものですから、当然といえば当然です。

縄文土器大観は入手以来「つんどく」状態でしたが、この数日ほとんど一日中ページをめくっています。
縄文土器大観による土器模様観察が大変わかりやすく、感動しています。

さらに縄文土器大観を調べると、模様の類似性をいろいろな視点から考えると、対応する土器が多数見つかりました。
パネル文土器で4つの区画があり、対向する区画が類似していてかつ微妙に異なるものがいくつかあります。
今後さらに詳しく検討して、別の情報(天文との関係!?!?…富士見町史上巻)ともからめて、考察を楽しみながら記事を書くことにします。

……………………………………………………………………
生まれて初めて「ヤフオク」なるものに手を染めて、縄文土器大観全4巻を格安で入手しました。

「ヤフオク」で入手した縄文土器大観全4巻
同商品が3回ほど出品され、1回目は様子見、2回目は応札しましたがコツを知らないので逃しました。3回目はコツがわかったので「うまくやり」、結果として予算の半額で落札できました。うれしいのですが、消費税までも不要としていただいた出品者個人の方には申し訳ないような気分にもなります。それが「しくみ」のようですからしかたがありません。入手した図書には使用感がありませんでした。夏頃にこの図書を入手したのですが、その頃はwebで古書として調べて全4巻そろいの商品はありませんでした。

2019年12月12日木曜日

加曽利貝塚博物館復元竪穴住居の被災状況 観察記録3Dモデル

加曽利貝塚博物館に展示されている復元竪穴住居の被災状況を観察するとともに3Dモデルを作成してみました。

加曽利貝塚博物館復元竪穴住居の被災状況 観察記録3Dモデル
撮影場所:加曽利貝塚博物館
撮影月日:2019.12.12
2019年9月以降の2つの台風や豪雨による被災状況
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 79 images

撮影写真の1例

3DF Zephyr Liteの画面

3DF Zephyr Liteの画面 カメラ配置

感想
・9月以降の台風15号、19号等により復元竪穴住居の屋根が被災していて痛ましい状況です。内部の様子を見学できるようになっているのですが、現在は見学中止となっています。
・復旧工事が行われ、学習施設として再開されることを1千葉市民として願います。
・台風15号の強風は尋常ではなく、千葉県各地で人家の屋根が飛んだところが多くあります。我が家でも倉庫が強風で移動してしまい、住み始めて30年以上ですが、初めてでした。
・その強風による被災にしてはかやぶきが崩れている様子が軽微な印象を受けます。縄文時代竪穴住居の様子・強度と復元展示施設としての住居の様子・強度とは関係はないかもしれません。しかし、かやぶき(草ぶき)という点や屋根が地面近くまで下りていて、壁がほとんどないという点では共通しています。本日の観察で、竪穴住居は意外と強風に強いという印象を受けました。風を受ける壁がないということや、広い庇がないために風で屋根が上に巻き上げられることが少ないと感じました。また瓦とかスレートとかトタンとかとくらべてかやぶき(草ぶき)は物として強風の影響を受けにくいように感じます。

史跡加曽利貝塚総括報告書(2017千葉市教育委員会)

史跡加曽利貝塚総括報告書(2017千葉市教育委員会)が刊行され新聞等で話題になったときぜひ学習したいと思いました。しかしその時は大膳野南貝塚発掘調査報告書の学習に熱中していて、後日の楽しみにしていました。
そして、最近この報告書を図書館で借りてみました。

史跡加曽利貝塚総括報告書(2017千葉市教育委員会)
3分冊で856ページです。
目次は次の通りです。

史跡加曽利貝塚総括報告書(2017千葉市教育委員会)主要目次
序章 総括報告書作成の目的と方法
第1章 加曽利貝塚の概要
第2章 加曽利貝塚の調査・研究・保存の歩み
第3章 各調査の内容
第4章 遺物
第5章 動植物と埋葬
第6章 自然科学的分析の成果
第7章 発掘成果のまとめ
第8章 総括
付録DVD(帯出品には未添付)

中身は自分の期待をはるかに上回る内容であるように感じます。学習意欲が増進します。
付録DVDが入手できれば、効率的な学習が可能となります。
単に通読するということではなく、大膳野南貝塚発掘調査報告書や有吉北貝塚発掘調査報告書などと対比しながら、事項・項目・興味別に学習すれば千葉域付近の縄文時代の様子を詳しく知ることができそうです。
現在展開している縄文土器3Dモデル作成活動が史跡加曽利貝塚総括報告書を軸とした千葉域縄文学習活動と絡まっていくことになりそうです。