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2020年4月30日木曜日

イノシシの飾りがある土器外2点(茅野市) 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 407

長野県茅野市の尖石縄文考古館で観覧したイノシシの飾りがある土器外2点(茅野市)の観察記録3Dモデルを作成しました。

1 イノシシの飾りがある土器外2点(茅野市) 観察記録3Dモデル

イノシシの飾りがある土器外2点(茅野市) 観察記録3Dモデル
左奥●蛇体装飾のある土器(茅野市中ッ原遺跡)
縄文中期(5000年前)
中前●イノシシの飾りがある土器(茅野市梨ノ木遺跡)
縄文中期(5000年前)
愛らしく表現されています。背中の模様が左右で違うところに注目してください。
右奥●中空の装飾のある土器(茅野市長峯遺跡)
縄文中期中葉(約4500年前)
富士見町藤内遺跡出土のいわゆる「神像筒形土器」によく似ている土器。中空の装飾とその下の三角形の区画を中心に、隙間なくタテやナナメに図形が刻まれているところに注目してほしい。
撮影場所:尖石縄文考古館
撮影月日:2020.03.13
ガラスショーケース越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 246 images(Masquerade機能利用)
(マウスのホイールを押しながら移動することにより、回転軸を移動できます。)

展示の状況

イノシシの飾りがある土器外2点(茅野市)観察記録3Dモデルの動画

2 感想
イノシシ、蛇は縄文土器によく出てくる動物です。
2020.03.13訪問した際に入り口付近のショーケースに展示されていた3つの土器をそのまま3Dモデルにしてみました。野外光反射が写る場所で通常の3DF Zephyr Lite操作では満足が得られる3Dモデルを作成できませんでしたが、Masquerade機能を利用することによりそれなりのレベルの3Dモデルが出来ました。
しかし、3Dモデルイノシシの体部左には反射光のいたずらによる数点のゴミが弧状に分布していて正確な像になっていません。

2020年4月29日水曜日

長野県茅野市で出土した抽象絵画文深鉢形土器

縄文土器学習 404

長野県茅野市の尖石縄文考古館で観覧した縄文中期前半抽象絵画文深鉢形土器(茅野市一ノ瀬遺跡)の観察記録3Dモデルを作成しました。

1 縄文中期前半抽象絵画文深鉢形土器(茅野市一ノ瀬遺跡) 観察記録3Dモデル

縄文中期前半抽象絵画文深鉢形土器(茅野市一ノ瀬遺跡) 観察記録3Dモデル 
撮影場所:尖石縄文考古館 
撮影月日:2020.03.13 
5面ガラスショーケース越し撮影 
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 73 images

展示の状況

縄文中期前半抽象絵画文深鉢形土器(茅野市一ノ瀬遺跡)観察記録3Dモデルの動画

2 GigaMesh Software Frameworkによる展開写真
GigaMesh Software Frameworkを利用して展開写真を作成しました。

GigaMesh Software Frameworkによる展開写真
「抽象絵画」の文様の様子がよくわかります。2単位のよく似た文様から構成されています。

3 感想
「抽象絵画」が表現する対象が存在することは確実であると考えます。
その対象が風景や地物の変化であるのか、言葉や概念のストーリーであるのかなどの研究・考察が専門的立場から行われているのでしょうか?
縄文土器研究者がこのような土器文様解読をどこまで行っているのか調べてみる価値があると考えます。
この土器の「抽象絵画」には「棘」のようなものがあること、意味深長な丸が「卵」を連想させることなどから植物や動物の様子を描いているような感想を持ちます。
伊那市創造館で観覧した藤内式深鉢形土器では「抽象絵画」が4単位となっていて、茅野市土器と似た構図があり、また「卵」を連想させるような丸があります。茅野市の土器と伊那市の土器で描かれている対象は類似したものであると考えることが当然です。

参考 伊那市創造館で観覧した藤内式深鉢形土器の展開写真 GigaMesh Software Frameworkにより作成

2020年4月27日月曜日

八ヶ岳で出土した加曽利EⅡ式土器似土器

縄文土器学習 403

長野県茅野市の尖石縄文考古館で観覧した「周辺地域から運ばれてきた土器」について3Dモデルを作成しました。

1 加曽利EⅡ式土器似土器

縄文中期「関東地方の土器の特徴を示す土器」 観察記録3Dモデル
約5000~4500年前
撮影場所:尖石縄文考古館
撮影月日:2020.03.13
ガラス越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 72 images

展示の状況

3Dモデル作成舞台裏を含めた加曽利EⅡ式土器似土器の動画
加曽利EⅡ式土器似土器をターゲットに撮影した画像から作った3Dモデルと、そこから不用な部分をカットして作成した加曽利EⅡ式土器似土器3Dモデルの動画です。

2 1以外の土器

縄文中期阿玉台式土器(茅野市長峰遺跡(須栗平~芹が沢)) 観察記録3Dモデル

縄文中期「伊那谷から運び込まれた土器」 観察記録3Dモデル

縄文中期「各地から運び込まれた土器」(茅野市各遺跡) 観察記録3Dモデル

3 感想
加曽利EⅡ式土器似土器は加曽利貝塚博物館などで見慣れている房総の加曽利EⅡ式土器と比べると何か次のような違和感を覚えます。

1 全体のフォルムが「ダサい」
口縁部と胴部の連続性がなく、また胴部曲線が「この曲線が美しい」になっていません。ふくらみが下に移動していて垂れ下がった尻のようです。
2 キャリパー形といは言い難い
キャリパー形というよりもラッパ形です。
3 口唇部が内面に凸になっている
口唇部が内面に凸になっています。おそらくキャリパー形の意義が判らないために、無理してキャリパー形に近づけようとしたのだと推察します。
4 基本波状は4単位ですが、子細に観察すると8単位であると見立てることができます。このような角ばった口縁部鉛直投影面は房総では私は見ていません。

同時に垂下する磨消文、垂下する波状沈線、口縁部の渦巻文・区画文、口縁部と胴部の縄文方向の差異などはこの土器が加曽利EⅡ式土器であることを物語っています。
この土器が東京など西関東で作られた土器であるのか、山梨で作られた土器であるのか、それとも八ヶ岳で「真似て」つくられた土器であるのか、専門家にいつか質問してみたいと思います。

2020年3月17日火曜日

国宝土偶「仮面の女神」出土状況ジオラマの3Dモデル

縄文土器学習 379

尖石縄文考古館に展示されている国宝土偶「仮面の女神」出土状況ジオラマの3Dモデルを作成しました。

1 「仮面の女神」出土土坑と隣接土坑のジオラマ 3Dモデル

「仮面の女神」出土土坑と隣接土坑のジオラマ 3Dモデル
撮影場所:尖石縄文考古館 展示室B
撮影月日:2020.03.13
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 65 images

展示の状況

3Dモデルの動画

2 ジオラマの理解
守屋昌文著「国宝土偶「仮面の女神」の復元 中ッ原遺跡」(新泉社)に掲載されている
情報を元にジオラマを理解しました。

「仮面の女神」が出土した土坑と隣接する土坑
守屋昌文著「国宝土偶「仮面の女神」の復元 中ッ原遺跡」(新泉社)から引用

ジオラマの解釈
3つの土坑が並び、仮面の女神出土土坑の両脇の土坑は鉢被せ葬が行われた墓坑です。仮面の女神は完形品が一部破壊され、破片が胎内に入れられるなど複雑な行為の後、横たわって埋置されています。横たわる被葬者と向かい合うように、抱き合うような状況で出土しています。被葬者は女性で、この土偶を所有(あるいは受け継いだ)人であると考えられます。
私はこの土偶は例えば「成女式」(生殖活動に参加する年齢=婚姻年齢に達した女性のお祝いの式)の様子を表現していると想像しています。したがって、被葬者は(有力家族の嫁入り前後の)若い女性だと空想します。
2019.12.10記事「土偶(国宝仮面の女神)(茅野市中ッ原遺跡) 観察記録3Dモデル

追記
守屋昌文著「国宝土偶「仮面の女神」の復元 中ッ原遺跡」(新泉社)では第94号土坑が作られてから時間がたち、その場所があいまいになり、その後第70号土坑が掘られた。場所があいまいだから第70号土坑は第94号土坑を切ったという趣旨の想定をしています。
別の解釈として、第94号土坑(墓)被葬者と第70号土坑(墓)被葬女性とは血縁が近く、わざと第94号土坑(墓)を切って第70号土坑(墓)が建設されたと考えることもできます。わざと血縁の近いものどうしの墓を切って(オーバーレイさせて)建設し、親族の団結の強さを確認しているものと考えます。大膳野南貝塚の学習でも同様の現象が多出していて、間違えて切ってしまったとは到底考えられません。わざと切って、絆を形に残しているのだと思います。

2020年3月14日土曜日

尖石縄文考古館再訪

縄文土器学習 375

2020.03.13尖石縄文考古館を再訪しました。昨年9月訪問し、八ヶ岳山麓縄文遺跡出土土器の質と量に圧倒されましたが、その時全部観覧しきれないので再訪、再再訪を前提に観覧しました。今回再訪して、展示替えの土器や観覧しきれなかった土器、写真撮影が不調だった土器、気が付かなかった展示物などを観覧しました。
新型コロナウイルス禍が荒れ狂い、縄文土器展示施設が次から次へと休館し、それが延長される状況のなかで尖石縄文考古館が開館していることに感謝します。
手をアルコール消毒して入館しました。
久しぶりに「3Dモデル作成のための展示縄文土器撮影欲」を思う存分満足させることができました。

1 展示替え土器の観覧
メイン展示土器の中に展示替えされたものがあり、撮影しました。

展示替え土器

2 関連縄文土器の観覧
北陸、伊那、関東等周辺地域から持ち込まれたり、そこからの影響を受けた土器について撮影しました。

阿玉台式土器

3 撮影し直し
土偶「仮面の女神」の背面など「そのアングルで精細に」撮影しました。

土偶「仮面の女神」の背面

4 ジオラマの撮影
土偶「仮面の女神」の出土状況ジオラマがあり、前回訪問では気にもかけませんでしたが、今回は意味があると感じ3Dモデル用撮影をしました。

ジオラマ

5 与助尾根遺跡等の見学
近くの与助尾根遺跡立地場所など八ヶ岳山麓地形を体感しました。

与助尾根遺跡

1259シャッター、7554ファイル、51.2GBの撮影となりました。
最低あと1回は訪問したい館です。

2019年12月24日火曜日

尖石縄文考古館展示縄文土器11点 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 297

尖石縄文考古館C室の台上に「露天」展示されている縄文土器11点の観察記録3Dモデルを作成しました。説明がありませんので、その造形だけを楽しみ、目に焼き付けました。

尖石縄文考古館展示縄文土器11点 観察記録3Dモデル
撮影場所:尖石縄文考古館
撮影月日:2019.09.13
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 108 images

撮影写真の一例

感想
正面中央の把手が特徴的な土器をエジプトの博物館におけば、納得してしまうような造形です。原始・古代人のデザイン感覚と現代人のそれが違うかもしれないということと、原始・古代人のデザイン感覚は世界共通の側面が強かったかもしれないということを想像しました。
説明なしで縄文土器をじっくりみることも学習を進める上で大切なことであると感じました。

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参考 カメラ配置

2019年12月19日木曜日

蛇体把手付深鉢形土器(茅野市尖石遺跡)観察記録3Dモデル

縄文土器学習 290

尖石縄文考古館に展示されているいくつかの蛇体把手付深鉢形土器のうち一つについて比較的出来のよい3Dモデルができましたので掲載します。

蛇体把手付深鉢形土器(茅野市尖石遺跡) 観察記録3Dモデル 
縄文中期前半 
長野県宝 
撮影場所:尖石縄文考古館 
撮影月日:2019.09.13 
4面ガラス張りショーケース越しに撮影 
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 89 images

撮影写真の一例

3Dモデル

3Dモデル
ヘビの頭をよくみると小さな目が表現されています。

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補遺
webサイト「縄文記号の世界」(武居竜生先生)2018.03.21記事「第7回 縄文土器の女性記号「女性自身」」にこの土器について説明図とともに次のような記述があり、土器文様の理解を深めることができました。
この深鉢には口の部分に把手(とって)が一つあります。手前側はとぐろを巻いた蛇になっていて、反対側は女性自身と思われる造形になっています。この把手は、蛇(男性を表す記号と考えています。)と女性自身(女性)で『男性と女性が愛し合っている』ことを表していると考えます。つまり、 彼らは女性自身を土器に配置することで女性の存在そのものを表していたと考えます。
3Dモデルを上から見ると、この記述が対象とする図像を詳しくみることができます。

2019年9月27日金曜日

武居幸重著「縄文人の心」に興味津々

縄文土器学習 263

尖石縄文考古館を訪問した際、多数の図書やパンフレットを入手し今後の学習のために備えました。この付近の縄文遺跡に興味が生れましたので絶版となっている「茅野市史上巻原始考古」もWEB古書店から入手したほどです。
そのようにして入手した図書の中に武居幸重著「文様解読から見える 縄文人の心」があり、きわめて興味深い内容でありますので記録しておきます。

武居幸重著「文様解読から見える 縄文人の心」
この図書は2013年に尖石縄文考古館での筆者の講演をまとめたものです。尖石縄文考古館でしか入手できないのかもしれません。

この図書の精読はまだですが、水野説(土偶祭祀は女性側、石棒祭祀は男性側)に対し、武居説(土偶祭祀と石棒祭祀が双分したのち、融合祭祀を行うことが最終目的であり、その証拠に男女の性に関わる土器交合文様、交合土偶、交合石棒の存在をあげる)を開陳している点に最初の特色があります。

また「重想」という新概念を提起して説明を進めています。
「重想」…一つのデザインで二つ以上のモデルと二つ以上の意味を持たせる表現方法を示す。

棚畑の土偶(国宝縄文のビーナス)の重想関係を次のように説明しています。

棚畑の土偶重想関係説明図
武居幸重著「文様解読から見える 縄文人の心」から引用
「上に示した国宝「棚畑の土偶」はみぞおちを境にして上が女性の若年期で下が女性の熟年期を表わし、かつ下半身に男根が組み込まれているから男女の合体造形である。よって交合土偶である。上段の側面図で点で埋めた部分が男根との重想文である」武居幸重著「文様解読から見える 縄文人の心」から引用

参考 尖石縄文考古館展示縄文のビーナスの写真

重想という概念が大変興味深く感じます。一つの造形に異なる複数の意味を持たせるという造形技法が存在することは良く理解できます。しかしだれにでも明解な第一の意味は別にして、暗喩として表現されている意味の抽出は「名人芸」になり、万人が「そうだ」と納得する説明は困難になるに違いありません。

「顔はフクロウと嬰児の重想造形」という説明で、嬰児はわかりますが、フクロウは?と感じてしまいます。
下半身に男根が組み込まれているから男女の合体造形であり交合土偶であるという説明も飛躍しすぎているように感じてしまいます。

とてつもなく深い検討を感じる側面と、素朴な疑問を感じる側面のある、とてつもなく魅力的な図書です。

大山山椒魚文様の説明は大変論理的です。
一方、「畑の鳥瞰図の模式表現」は縄文時代畑区画が出土した遺跡を知りませんから、素朴な疑問となります。「畑の鳥瞰図の模式表現」が本当ならば、土器文様に地図が描かれていたのと同じになり、興味津々です。