2022年2月17日木曜日

眺望的視点の赤色立体画像

 Red stereoscopic image from a panoramic point of view


I made a prototype of a red stereoscopic image of a feature seen from a viewpoint. I felt that not only the "from above" viewpoint but also the red stereoscopic image from the viewpoint of the view is useful.


眺望的視点から見た地物の赤色立体画像を試作しました。「上から」の視点だけでなく、眺望的視点の赤色立体画像も有用性があると感じました。

※赤色立体画像は赤色立体原理(千葉達朗先生発明)に基づいて作成された、地物を赤色で立体的に表現する仕組みです。

最近、「動物意匠文付土器平面形状展開モデルの干渉色塗り絵動画」を作りました。

ブログ「花見川流域を歩く番外編」2022.02.16記事「動物意匠文付土器平面形状展開モデルの干渉色塗り絵動画


動物意匠文付土器平面形状展開モデルの干渉色塗り絵動画

この動画を何回も見ているうちに幾つかの感想が浮かびました。この記事ではその感想に着目して、眺望的視点の赤色立体画像の試作をしてみました。また、最初につくった「上から」みた赤色立体画像を修正しました。

1 干渉色塗り絵動画を見た感想

次のような多様な感想が浮かびました。

ア ある瞬間の干渉色分布は高さの分布を表現しています。その干渉色を位相を変えることで上から下に色を動かしています。この様子をみると、高さ分布の詳細を認識することが容易です。1枚の干渉色分布図はいわば等高線を色塗りした図ですが、これよりも色を動かした方が高さの微妙な分布をはるかに理解しやすくなります。これまで、石器などに干渉色模様を適用して等高線のように表示したことが何回かありましたが、これを動かすと干渉色の価値が高まる可能性があります。

イ この画面は地図のように上から見るのではなく、斜め上から眺望している画面です。このような眺望画面で高さ分布を理解する方が、真上から見るよりも見やすく感じます。

これまで石器や土偶などに干渉色を適用してきましたが、すべて上からでした。これを斜め上から眺望するような画面にすると、干渉色の価値が高まると想定します。

ウ 2つの動物文の間土器表面が盛り上がっていることがよく理解できます。一方、同じ3Dモデルで上から見た赤色立体画像(2022.02.15記事「縄文土器3Dモデルを平面展開してつくる赤色立体画像」)ではこの盛り上がりの表現がないことに気が付きました。2022.02.15赤色立体画像をより正確な画像に作り直す必要があります。

エ これまで作成した赤色立体画像は全て「上から」の画面です。しかし、イの視点から赤色立体画像を斜め上の視点から(眺望的視点から)作成することも意義が大きいのではないかと考えます。

2 「上から」みた赤色立体画像の修正

感想ウにもとづいて、2つの動物文の間の土器表面が盛り上がっている特徴を赤色立体画像で表現出来るように修正しました。


赤色立体画像(修正版)

3 眺望的視点からみた赤色立体画像


眺望的視点からみた赤色立体画像

赤色立体画像は「上から」の画像で作るものであるという先入観がありました。赤色立体地図のイメージが強いからだと思います。しかし、地図的な利用や平面資料としての利用だけでなく、地物の立体性を眺望的視点で表示することも大切であると考えます。そして3Dモデルがあれば眺望的視点で赤色立体画像を作成できるのですから、利用しない手はありません。赤色立体画像を活用する際の選択肢の一つとして眺望的視点で作ることが考えられます。


眺望的視点からみた赤色立体画像(モノトーンテクスチャとの合成)

モノトーンテクスチャと合成すると、テクスチャに照明の明るさ成分がふくまれているため、この場合土器表面のなだらかな起伏を表現する白色部分が消えてしまいます。従って赤色立体画像の良さが失われてしまったとも言えます。正確な実測図などと合成すれば、判りやすい赤色立体画像になると考えます。


眺望的視点からみた赤色立体画像(テクスチャ無し3Dモデルとの合成)

テクスチャ無し3Dモデルと合成すると、表面の照明光反射の明るさにより、土器表面のなだらかな起伏を表現する白色部分が消えてしまっています。


2022年2月15日火曜日

縄文土器3Dモデルを平面展開してつくる赤色立体画像

 A red stereoscopic image created by expanding the Jomon pottery 3D model in a plane


From the Jomon pottery 3D model, I created a planar shape expansion 3D model with GigaMesh Software Framework, and then created a red stereoscopic image that expresses unevenness from the planar shape 3D model. It is a test work to confirm the operation procedure and to examine whether the red stereoscopic image is useful for Jomon pottery observation.


動物意匠文付土器(勝坂Ⅲ式)(船橋市ユルギ松遺跡)3DモデルをGigaMesh Software Frameworkで平面形状に展開した3Dモデルを作成し、さらにその平面形状3Dモデルから凹凸を表現する赤色立体画像を作ってみました。操作手順の確認と赤色立体画像が土器観察でも役立つかどうか検討するためのテスト作業です。

1 動物意匠文付土器(勝坂Ⅲ式)(船橋市ユルギ松遺跡) 観察記録3Dモデル Earthenware

動物意匠文付土器(勝坂Ⅲ式)(船橋市ユルギ松遺跡) 観察記録3Dモデル

撮影場所:八千代市立郷土博物館「らくがく縄文館-縄文土器のマナビを楽しむ-」

撮影月日:2021.11.02


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 78 images

https://hanamigawa2011.blogspot.com/2021/11/3d_4.html

https://youtu.be/e8tMXmefphg

Earthenware with animal design (Katusaka type III) (Yurugimatsu Ruins, Funabashi City) Observation record 3D model

Location: Yachiyo Municipal Folk Museum “Rakugaku Jomonkan-Enjoy the Jomon Pottery Manabi-“

Shooting date: 2021.11.02

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.010 processing 78 images

参考記事 2021.11.04記事「動物意匠文付土器の3Dモデル観察

2 動物意匠文付土器平面形状展開3Dモデル 3D model developed into a plane shape

動物意匠文付土器(勝坂Ⅲ式)3Dモデルの平面形状展開モデル

元3Dモデル(https://skfb.ly/osDF9)をGigaMesh Software Framework(https://gigamesh.eu/?page=home)で平面形状に展開した3Dモデル


GigaMesh Software Frameworkによる操作の様子

Earthenware with animal design (Katsusaka type III) 3D model developed into a plane shape

A 3D model developed from the original 3D model (https://skfb.ly/osDF9) into a planar shape using the GigaMesh Software Framework(https://gigamesh.eu/?page=home).


3Dモデルの動画

3 動物意匠文付土器平面形状展開3Dモデルの赤色立体画像

3-1 高さグレー濃淡図の作成

動物意匠文付土器平面形状展開3Dモデルから高さグレー濃淡図を作成しました。


高さグレー濃淡図の作成

3-2 赤色立体画像の作成

高さグレー濃淡図を基に、赤色立体原理(千葉達朗先生発明)に基づいて赤色立体画像を作成しました。


赤色立体画像

赤色立体画像をより見やすくするための工夫として、3Dモデルテクスチャ(写真)をモノトーン画像にして赤色立体画像に貼り付け(乗算)てみました。


赤色立体画像(モノトーンテクスチャ貼り付け)

4 メモ

4-1 赤色立体画像の意義

・土器表面の凹凸を赤色立体画像で表現できることを確認しました。ただし、縄文文様という凹凸は現状3Dモデル精度では表現できないので、縄文文様を赤色立体画像で表現することはできません。

・3Dモデルから赤色立体画像を作るときに情報の過半が脱落するので、3Dモデルが利用できる状況では赤色立体画像の出番は限定されたものになると考えます。

・3Dモデルが利用できない状況や場面では赤色立体画像が土器表面の凹凸を的確に表現するという点で有用であると考えます。赤色立体画像は立体性を二次元資料で表現する際の一つの選択肢になると考えます。

4-2 縄文土器の赤色立体画像をつくるステップ

ア 縄文土器の撮影

イ 縄文土器の3Dモデル作成

・(自分の場合)3DF Zephyr Liteの利用

ウ 縄文土器3Dモデルの平面形状展開3Dモデル作成

・GigaMesh Software Frameworkの利用

エ 高さグレー濃淡図の作成

・(自分の場合)3DF Zephyr Liteの利用

オ 赤色立体画像の作成

・Photoshop利用

4-3 GigaMesh Software Frameworkについて

GigaMesh Software FrameworkはLinux用メインソフトの他、Windows10用ベータ版がGigaMesh Software Frameworkサイトからダウンロードできます。

なお、Windows11ではWindows10用ベータ版は正常に作動しませんでした。



2022年2月13日日曜日

ミミズク土偶の赤色立体画像作成

 Creating a red stereoscopic image of Owl-faced clay figurine


I created a 3D model of the Owl-faced clay figurine that was previously exhibited in the lobby of the Abiko City Education Committee. This time, I created a red stereoscopic image from the 3D model. If you make a red stereoscopic image, you can see the stereoscopic effect very well even though it is a flat material. We have confirmed that the application of the red stereoscopic principle (invented by Mr. Tatsuro Chiba) to archaeological relics is a very excellent method.


以前我孫子市教育委員会ロビーで撮影して3Dモデルを作成したミミズク土偶の赤色立体画像を作成しました。土偶全体を対象に赤色立体画像を作成するとどのようになるのかというテストです。赤色立体画像は3Dモデルに赤色立体原理(千葉達朗先生発明)を適用してつくる画像で、地物の立体感を平面上でわかりやすく表現できる画像です。

1 ミミズク土偶の観察記録3Dモデル

安行系ミミズク土偶 下ヶ戸貝塚 観察記録3Dモデル

撮影場所:我孫子市教育委員会1階ロビー

撮影月日:2019.08.20

ガラスショーケース越し撮影


展示の様子

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.506 processing 30 images


3Dモデルのオルソ投影「上から」テクスチャ画像

2 赤色立体画像の作成

2-1 ミミズク土偶の高さグレー濃淡図

ミミズク土偶3Dモデルを平面に置いてオルソ投影した時、その高さのグレー濃淡図を作成しました。


高さグレー濃淡図

2-2 ミミズク土偶の赤色立体画像作成

赤色立体原理の適用は高さグレー濃淡図をPhotoshopに投入して作業することにより行いました。


ミミズク土偶赤色立体画像

2-3 赤色立体画像へのテクスチャ画像(写真)貼り付け

赤色立体画像へテクスチャ画像(写真)(モノクロ化)を貼り付けました。


途中作業図(モノクロテクスチャ画像)


ミミズク土偶写真張付赤色立体画像

3 メモ

2-2画像および2-3画像によりミミズク土偶の立体性を平面資料のうえでとても判りやすく示すことができました。赤色立体画像特性の秀逸性を確認することができました。赤色立体原理を発明された千葉達朗先生に感謝します。

赤色立体原理の適用は地理院地図にも採用されている赤色立体地図(アジア航測株式会社特許)だけでなく、考古遺物3Dモデルの平面表現にもとても有効であることを確かめることができました。


2022年2月11日金曜日

イルカ下顎骨製箆状腰飾の文様解釈 その2

 Interpretation of the pattern of the dolphin mandibular spatula-shaped waist ornament Part 2


I learned that the dolphin mandibular spatula-shaped waist ornament design expresses the Katsusaka-style pottery snake body pattern.

In this article, I created and observed a 3D model of the serpentine decorative pottery (Nakappara Site, Chino City) exhibited at the Togariishi Jomon Archaeological Museum. With reference to that observation, I examined and thought about the details of the interpretation of the waist ornament pattern. Then, I wrote down what I noticed and what I thought, and prepared for a full-scale study at a later date.


イルカ下顎骨製箆状腰飾デザインが勝坂式土器蛇体文を表現していることを知りました。


西野雅人先生講演資料に基づくイルカ下顎骨製箆状腰飾の文様解釈

2022.02.10記事「イルカ下顎骨製箆状腰飾の文様解釈

この記事では蛇体装飾のある土器(茅野市中ッ原遺跡)の3Dモデルを作成して観察し、その観察を参考にして、文様解釈の細部について検討・思考しました。そして気が付いたことや感想をメモして、後日の本格検討に備えます。

1 参考 蛇体文のある勝坂式土器3Dモデルの観察

例示された勝坂式土器に器形も蛇体文も似ていると考えられる土器を、かつて尖石縄文考古館で観覧して3Dモデルを作ったことがあります。そこでその3Dモデルを観察して参考とします。

1-1 蛇体装飾のある土器(茅野市中ッ原遺跡) 観察記録3Dモデル Pottery with snake body decoration

蛇体装飾のある土器(茅野市中ッ原遺跡) 観察記録3Dモデル Pottery with snake body decoration


展示の様子

縄文中期(5000年前)

撮影場所:尖石縄文考古館

撮影月日:2020.03.13

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.530 processing 246 images(Masquerade機能利用)

Pottery with snake body decoration (Nakappara site, Chino city) Observation record 3D model

Mid-Jomon period (5000 years ago)

Location: Togariishi Jomon Archaeological Museum

Shooting date: 2020.03.13

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v4.530 processing 246 images (using Masquerade function)


3Dモデルの動画

1-2 観察


観察メモ

・2匹のヘビが把手で絡み合っています。

・「上から」みるとヘビ顔面は顔面中央線と輪郭線の2つの要素で構成されて表現され、さらに目が貼付されています。

・「下から」みると2匹目のヘビ顔面が表現されています。ただし目は巨大なものが1つだけです。

・「横から」みるとヘビ特有の細かい歯列が表現されています。

・把手で絡み合う2匹のヘビとは離れて、土器頸部に直線状の蛇体が巻きついていて、それぞれの端が破れて空洞が見えるような表現になっています。これはヘビの抜け殻を表現していると考えます。ヘビは頻繁に脱皮しますから、再生や若返り、あるいは強い治癒力のシンボルとなることは全世界共通の傾向です。縄文人も同じようにヘビを信仰していたと考えます。

2 例示された勝坂式土器蛇体文の解釈

1の蛇体装飾のある土器(茅野市中ッ原遺跡)観察から、例示された勝坂式土器蛇体文を次のように解釈します。


この蛇体文を「脱皮途中のヘビの表現」と考える

ヘビが繰返し脱皮する姿をみて、勝坂式土器縄文人はヘビに再生や若返り、あるいは強い治癒力をみてとり、それを信仰の対象として土器に描いたと考えます。

3 イルカ下顎骨製箆状腰飾の文様解釈と考察


イルカ下顎骨製箆状腰飾の文様解釈と考察

ア 前部両側に刻まれた交互三角文

前部両側に刻まれた交互三角文は茅野市中ッ原遺跡出土蛇体装飾土器の例から、ヘビ特有の細かい歯列であると考えます。

イ 紐通し孔

紐通し孔は茅野市中ッ原遺跡出土蛇体装飾土器の例からヘビの目を表現していると考えます。

ウ 後部交互三角文

後部交互三角文は茅野市中ッ原遺跡出土蛇体装飾土器の例から脱皮の脱殻部分を表現していると考えます。

エ 「大」マーク刺突文

刺突文で描く「大」マークと線分は脱殻の開口部を表現していると考えます。この部分には目のウロコを含む顔の脱殻となっています。

オ 縛り跡

腰飾中央付近には縄の縛り跡が沢山ついています。何かに縛り付けて使ったと考えられます。

カ 右側部分の摩滅

右側部分の摩滅がはなはだしく、前部では外側刺突文や交互三角文の一部が消失しています。また考古三角文も浅くなっていて、薄くなっています。この左右非対称摩滅状況は赤色立体画像でもよくわかります。


赤色立体画像

(赤色立体原理(千葉達朗先生発明)により3Dモデルから作成)

この腰飾を前部を上にして右腰に付けると、右手と腰飾右側が擦れあう状況になります。ですから、集落リーダーが長期間にわたって日常的に身に装着していたので、このような摩滅が生まれたと考えます。


2022年2月10日木曜日

イルカ下顎骨製箆状腰飾の文様解釈

 Interpretation of the pattern of the dolphin mandibular spatula-shaped waist ornament


In the explanation of the dolphin mandibular spatula-shaped waist ornament (Ariyoshi Minami Shell Mound, Chiba City) exhibited at the "Chiba City Excellent Archaeological Material  Exhibition", the pattern of this waist ornament is "a view of the snake from above". It is written. But I didn't understand why.

However, I was able to find out more about the reason in the lecture by Mr. Masato Nishino (2022.02.22).


現在千葉市埋蔵文化財調査センターで開催中(2022.03.10まで)の「千葉市出土考古資料優品展」でイルカ下顎骨製箆状腰飾(千葉市有吉南貝塚)が展示されています。展示にはこの腰飾の文様は「ヘビを上から見たものだ」という説明が加えられています。確かに頭が三角で尖っていますからそういわれれば反論できません。しかしその理由が全く判りませんから、釈然としないことこのうえありませんでした。

そうした強い疑問に答える興味深い情報を千葉市埋蔵文化財調査センター所長西野雅人先生講演(2022.02.22,千葉市内出土考古資料優品展関連講座「千葉市の名宝(縄文時代)」)で得ることができましたのでメモします。

1 西野雅人先生講演における文様説明


西野雅人先生講演資料(一部編集)

西野先生の説明は、イルカ下顎骨製箆状腰飾の文様は東京都出土勝坂式土器の蛇体文を写したものであるという説明です。たしかに土器蛇体文の写真とイルカ下顎骨製箆状腰飾の対比をみると2つが対応していることを直観できます。

2 西野雅人先生講演資料の咀嚼

西野雅人先生講演資料を自分なりに咀嚼して次の図を作成しました。


西野雅人先生講演資料に基づくイルカ下顎骨製箆状腰飾の文様解釈

この図を作ってみると次のような疑問・興味が発生します。

ア 胴部が隆帯なのに、尾部Bが隆帯で囲まれた凹部(沈部)で表現されているのは何故か?

イ 尾部Aが胴部と尾部Bと別に表現され、それが「大」マークに対応しているのは何を意味するのか?

ウ 尾部Bは三角が地として利用され、尾っぽのニョロニョロを表現しているようであるが、頭部(側面)の同様三角交互文様は何を表現しているのか?口の歯列を表現しているのか?三角交互文様(三叉文)とはこのような具象的意味を持つものであるのか?

エ 紐を通す2つの孔は蛇の目を意識したものであるのか?

オ 胴部にX状の傷(縛り跡)がついています。これは何か?

これらの疑問・興味についてさらに次の記事で検討を進めることにします。


2022年2月9日水曜日

イルカ下顎骨製箆状腰飾の赤色立体画像

 Red stereoscopic image of a spatula-shaped waist ornament made of dolphin mandible


The dolphin mandibular spatula-shaped waist ornament has already created an observation record 3D model.

Using this observation record 3D model, I created a red stereoscopic image using the red stereoscopic principle (invented by Mr. Tatsuro Chiba). This product has a spatula shape with no sharp irregularities. When actually making a red stereoscopic image, the subtle stereoscopic effect of the actual product was well expressed.


イルカ下顎骨製箆状腰飾はすでに観察記録3Dモデルを作成ました。

(2022.01.07記事「箆状腰飾(千葉市有吉南貝塚)の3Dモデル観察

この観察記録3Dモデルを使って、赤色立体原理(千葉達朗先生発明)により赤色立体画像をつくりました。この製品は激しい凸凹がない箆(ヘラ)状をしていますが、このような形状のものを赤色立体画像にするとどのような出来ばえになるのか確認することが主な作成動機です。

1 イルカ下顎骨製箆状腰飾の赤色立体画像


イルカ下顎骨製箆状腰飾の赤色立体画像

3Dモデルテクスチャ画像(写真)ではその立体性をイメージすることは困難ですが、赤色立体画像にすると立体性のイメージが明瞭になります。激しい凹凸がない製品に対しても赤色立体画像は立体性を精細に可視化する点でとても有効なツールであることを確認できます。

2 イルカ下顎骨製箆状腰飾形状の等高線的表現


イルカ下顎骨製箆状腰飾形状の等高線的表現

干渉色変換ツール(地図アート研究所(所長やまだこーじ)開発公開)により2種類の干渉色変換画像を作りました。またPhotoshopカラーテーブル適用により2種類の画像をつくりました。このような表現をすることにより腰飾の微妙な形状を細部にこだわらないで把握できます。赤色立体画像を補助する資料として有用であると考えます。また実用的資料としてではなく、鑑賞対象としての画像(アート)としての意義もあるかと思います。

3 参考 箆状腰飾(千葉市有吉南貝塚) 観察記録3Dモデル Spatula-shaped waist ornament

箆状腰飾(千葉市有吉南貝塚) 観察記録3Dモデル Spatula-shaped waist ornament

縄文中期、イルカ下顎骨製

撮影場所:千葉市立郷土博物館「千葉市出土考古資料優品展」

撮影月日:2021.12.22


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 51 images

Spatula-shaped waist ornament (Ariyoshi Minami Shell Midden, Chiba City) Observation record 3D model

Middle Jomon

Made of dolphin lower jawbone

Location: Chiba City Folk Museum "Chiba City Excellent Archaeological Material Exhibition"

Shooting date: 2021.12.22

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.010 processing 51 images


2022年2月6日日曜日

山形土偶3Dモデルへの赤色立体原理適用

 Applying the red stereoscopic principle to the Yamagata clay figurine 3D model


I made a red stereoscopic image by applying the red stereoscopic principle (invented by Mr. Tatsuro Chiba) to a 3D model of Yamagata clay figurine (Uchino Daiichi site,Chiba city), and thought about the significance of the red stereoscopic image.


山形土偶(千葉市内野第1遺跡)3Dモデルへ赤色立体原理(千葉達朗先生発明)を適用して赤色立体画像をつくり、赤色立体画像の意義について考えました。

1 山形土偶の3Dモデル

全面赤彩された山形土偶頭部(千葉市内野第1遺跡) 観察記録3Dモデル

加曽利B式、最大高7.2㎝、最大幅9.4㎝、最大厚4.2㎝

千葉市埋蔵文化財調査センター所蔵

撮影場所:千葉市埋蔵文化財調査センター

撮影月日:2020.08.21

ガラス面越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.003 processing 50 images


3Dモデルの「上から」「オルソ投影」のテクスチャ画像


3Dモデルの「上から」「オルソ投影」のサーフェス画像


参考 実測図

内野第1遺跡発掘調査報告書から引用

この山形土偶は次の記事で考察しています。

2020.08.23記事「全面赤彩された山形土偶頭部の3Dモデル

この山形土偶は千葉市制100周年記念「千葉市内出土考古資料優品展」(千葉市埋蔵文化財調査センターで開催中 2022.02.03~03.10)で展示されています。

2 赤色立体原理(千葉達朗先生発明)の適用


山形土偶の赤色立体画像

3Dモデル土偶顔面が水平になるようにしてから、垂直方向の高さをグレー濃淡で色分けした「上から」「オルソ投影」画像(グレー濃淡図)を作成し、その画像をPhotoshopに投入して、赤色立体原理(千葉達朗先生発明)を適用して赤色立体画像を作成しました。土偶顔面を水平に置いた時、顔面凹凸の立体性を判りやすく表現した画像です。地形を判りやすく表現するために発明された赤色立体地図の原理を応用したものです。

3 メモ

3-1 赤色立体画像作成と効果の確認

土偶顔面の赤色立体画像を3Dモデルから作成できることを確認できました。

同時に、赤色立体画像が土偶顔面の凹凸を判りやすく表現できることを確認しました。

3-2 赤色立体画像の意義

3Dモデルテクスチャ---赤色立体画像---実測図の関係は、写真---凹凸の写真測量結果---実測図の関係であります。


3Dモデルテクスチャ---赤色立体画像---実測図の関係

土偶顔面から読み取れる様々な情報のうち、凹凸に特化して正確に表現した資料が赤色立体画像であるといえます。

赤色立体画像は実測図作成のための有力な基礎資料とすることができそうです。

3-3 多数資料の比較材料として好適

多数の土偶顔面を比較するとき、赤色立体画像で比較すれば、画像の表現様式と色合いが同じで見やすくなります。写真では色合いや撮影条件の違いによって、比較に困難が伴う場合もあります。また赤色立体画像は3Dモデルから作成するものであり、3Dモデルには通常実寸法を付与しているので、赤色立体画像のスケールを統一することは容易であり、通常写真などとは異なります。


2022年2月3日木曜日

尖頭器の赤色立体画像試作

 Prototype red stereoscopic image of point


Using a point as an example, the surface fine irregularities were expressed in a red stereoscopic image, and the correspondence with the actual measurement map was examined in advance. A red stereoscopic image is an image created based on the red stereoscopic principle (invented by Tatsuro Chiba). In this image, the unevenness of the feature is expressed intuitively. I would like to thank Mr. Tatsuro Chiba for teaching me how to create a red stereoscopic image.


箕輪村神子柴遺跡出土の下呂石製尖頭器を例に、石器の微細凹凸を赤色立体画像でテスト表現し、実測図との対応やその応用を予察検討しました。赤色立体画像は赤色立体地図(千葉達朗先生発明)の原理(赤色立体原理)に基づいて作成される画像です。赤色立体画像をつくることにより、ものの凹凸がだれにでも直観的に判りやすく表現できます。なお、赤色立体画像作成方法は千葉達朗先生にご教授・ご指導していただきました。貴重な情報を教えていただき、心から感謝申し上げます。

1 赤色立体画像の作成ステップ

今回の赤色立体画像が出来るまでのステップは次の通りです。

ア 展示尖頭器の周回撮影

今回は伊那市創造館でショーケース越しに82枚の写真を撮影しました。


尖頭器展示の様子

イ フォトグラメトリーソフトによる3Dモデル作成

フォトグラメトリーソフト(写真測量ソフト)である3DF Zephyr Liteで尖頭器の3Dモデルを作成しました。

尖頭器(箕輪村神子柴遺跡) 観察記録3Dモデル Point

ウ 高さをグレー濃淡で表現する画像の作成

3Dモデルから高さをグレー濃淡で表現する画像を作成します。3DF Zephyr Liteで作成しました。


高さをグレー濃淡で表現した画像

エ 赤色立体画像の作成

高さをグレー濃淡で表現した画像をPhotoshopに投入して、幾つかのレイヤーをつくり、フィルター機能等を使って赤色立体画像をつくります。機能を適用する時の数値は画面の様子を見ながら「現場合わせ的感覚」で決める場面もあります。

2 試作画像


赤色立体画像試作画像

展示石器は平べったく、色も地味であるので、現物をまじかに観覧している時も、あるいは撮影した写真を観察している時も表面の微妙な凹凸を詳しく把握することは困難です。しかし、この赤色立体図ではそれが如実に理解できます。石器を作るときの敲打痕の様子が良くわかります。赤色立体原理の素晴らしさが実感できる画像です。

なお、Photoshop作業に習熟すればより訴求力のある赤色立体画像ができると思われます。また、Photoshop作業の前提となる高さ表現グレー画像の情報量を大きくできればより優れた表現が可能となると考えられます。

3 赤色立体画像と実測図の対比

赤色立体画像と実測図(図書「神子柴」※から引用)を対比させてみました。


赤色立体画像と実測図の対比

実測図とくらべると赤色立体画像の立体感表現がきわめて秀でていることがわかります。実測図は赤色立体画像よりも表面形状表現ははるかに細密ですが、立体性の表現はされていません。赤色立体画像と実測図をオーバーレイするとその位置関係が正確に対応します。赤色立体画像は写真測量技術で作成されたものであり、測量的に正確です。また実測図も細密正確に描かれています。従ってその双方がピタリと一致しました。

※林茂樹・上伊那考古学会編「神子柴 Mikoshiba Site 後期旧石器時代末から縄文時代草創期にかかる移行期石器群の発掘調査と研究」(2008、信毎書籍出版センター)

4 赤色立体画像の応用


尖頭器の赤色立体画像とその応用

赤色立体画像をテクスチャ(写真)とミックスしたり、干渉色変換画像とミックスしたりして立体感のあるテーマ画像(目的画像)をつくることができます。

5 感想

尖頭器の赤色立体画像をつくることとは、尖頭器の表面を地形に見立てて、その赤色立体地図をつくっていることと同じです。赤色立体画像を作ることにより、尖頭器に対する認識がより深まることは確実です。

赤色立体原理適用は尖頭器のみならず、他の石器、土器をはじめ他の遺物に対しても効果的であると考えます。

赤色立体原理は3Dモデル技術の可能性を拡大する重要な原理であると考えます。この原理を発明した千葉達朗先生に感謝します。


黒曜石尖頭器(神子柴遺跡)を3Dモデルで観察する

 Obsidian Point (Mikoshiba site) observed with a 3D model


I made and observed a 3D model of the obsidian point from Wada Pass excavated from the  Mikoshiba site(Minowa Village). It is a point with a strong presence.


箕輪村神子柴遺跡出土の和田峠産黒曜石尖頭器の3Dモデルをつくり観察しました。存在感のある尖頭器です。

1 尖頭器(箕輪村神子柴遺跡) 観察記録3Dモデル Point

尖頭器(箕輪村神子柴遺跡) 観察記録3Dモデル Point

黒曜石(和田峠産)、28

国指定重要文化財

長さ10.55㎝、幅4.70㎝、厚さ1.35㎝、重さ59.5g

撮影場所:伊那市創造館常設展

撮影月日:2020.12.11


展示の様子

ガラスショーケース越し撮影

3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v6.010 processing 47 images

Point  (Mikoshiba site, Minowa Village)  Observation record 3D model 

Obsidian

28

Nationally designated important cultural property

Length 10.55 cm, width 4.70 cm, thickness 1.35 cm, weight 59.5 g

Location: Ina City Sozokan Permanent Exhibition

Shooting date: 2020.12.11

Shooting through a glass showcase

Generated with 3D model photogrammetry software 3DF Zephyr v6.010 processing 47 images


3Dモデルの動画

2 メモ

2-1 3Dモデル画像


3Dモデル画像1テクスチャ


3Dモデル画像1高さで色塗りしたメッシュ


3Dモデル画像2テクスチャ


3Dモデル画像2高さで色塗りしたメッシュ

2-2 存在感のある尖頭器

神子柴遺跡出土尖頭器は大型で存在感があります。投槍器で投げるために槍先を重くしたのでしょうか。旧石器時代から縄文草創期にかかる時期の尖頭器は千葉市でも大型で、千葉市六通神社南遺跡から神子柴遺跡出土尖頭器と同様の幅広木葉形尖頭器が出土しています。神子柴遺跡出土尖頭器と同時代の千葉市出土尖頭器を3Dモデルで比較しながら石器学習を深めていきたいと思います。


2022年1月31日月曜日

アワビ殻の入手

 Obtaining abalone shells


I decided to do a small experiment to deepen the learning of the modified abalone excavated from Daizenno Minami Shell Mound. For that, I got abalone shells via a flea market site.


大膳野南貝塚出土アワビ加工品の学習を深めるために、ささやかな実験をすることにしました。そのためにアワビ貝殻をフリマサイト経由で入手しました。


入手したアワビ貝殻


アワビ貝殻の干渉色


参考 大膳野南貝塚出土アワビ加工品(千葉市立郷土博物館「千葉市出土考古資料優品展」で撮影(2021.12.22)

大膳野南貝塚出土アワビ加工品は西野雅人先生(千葉市埋蔵文化財調査センター所長)により、縄文時代にあたかも古代鏡のように「太陽との交信」に使われたかもしれないマジカルな祭具として説明されています。とても興味深い道具です。

この道具の学習を深めるために、アワビ貝殻を入手して、ささやかな実験をすることにしました。

次のような実験を予定します。(アワビ貝殻は3個入手)

1 内面を磨いて(削って)いくと大膳野南貝塚出土加工品内面のようになるのか。

2 太陽光をアワビ内面を凹面鏡のように使って反射させるとどのようになるのか。

3 貝刃のようにアワビを利器として使うと、どのようになるのか。

4 内面の干渉色を最大限楽しむにはどのように光を当てたらよいか。

5 仏像の堆画(うずめがき)(※)をするとどのようになるのか

などです。

なお予察的に、アワビを凹面鏡のように使って、太陽直射光を日陰に反射させたところ、中心部がピンクで周辺がグリーンに輝く干渉色の丸い光が浮かび上がりました。いままで知らなかった感動的光景が出現しました。西野雅人先生「太陽との交信」仮説ががぜん鮮やかな色を帯びてきて、その確からしさが高まります。

※ 仏像の堆画(うずめがき)

「和漢三才図絵」鮑の項(7-67)の次の記述を実験してみます。仏像は無理ですから、何か単純な図像を書きます。縄文学習とは直接関わりませんが、鮑と信仰との関わりのヒントが得られるかもしれません。

…………………

「鮑殻の裏に仏像を堆画(うずめがき)したものがあり、人は奇異(めずらしい)とする。多くは売僧(まいす)(つまらぬ僧)の所為(しわざ)である。その造法は、濃い墨を用いて物を画き、これを乾かしてそこへ醋を盛る。久しく経ってのち墨を拭い去れば、墨のあとは堆(うずたか)く盛り上がり、画いた物象が鮮明に浮き上がる。」

…………………