2015年7月27日月曜日

萱田遺跡群における鉄鏃(槍)を伴う活動

花見川地峡史-メモ・仮説集->3花見川地峡の利用・開発史> 3.4〔仮説〕律令国家の直線道路、東海道水運支路の検討>3.4.174 萱田遺跡群における鉄鏃(槍)を伴う活動

2015.07.26記事「萱田遺跡群の鉄製品出土物 その1 鉄鏃」で萱田遺跡群から合計80の鉄鏃が出土したことと、鉄鏃が武器としての槍として使われていたことを想定し、その出土状況を「竪穴住居10軒あたり鉄鏃出土数」で見ることによって、軍事的機能が高いゾーンをあぶり出したことを書きました。

その軍事機能検討とは何か、検討してみます。

萱田遺跡群から出土するメインの武器は鉄鏃であると考えています。
鉄鏃は長い棒の先に挿し込んで槍として使ったと考えます。

刀子も武器の一種であると考えられます。刀子が護身用機能も兼ねていたことは間違いないと考えます。しかし刀子は武器プロパー(武器専用)ではなく、その本質は多用途万能道具であると考えます。刀子の検討は改めて行います。

萱田遺跡群からは大型の刀剣は出土していません。

萱田遺跡群における標準武器は槍であったと想定します。

槍という武器を伴う活動にはどのようなものがあったか、なぜ出土したか検討します。

萱田遺跡群における槍を伴う活動は次の3点が存在していたと考えます。

1 基地中枢機能の警備、要人の警護
2 軍用倉庫の防衛
3 武器を所持する蝦夷戦争出征将兵の逗留、将兵の教育訓練活動

1 基地中枢機能の警備、要人の警護
「竪穴住居10軒あたり鉄鏃出土数」の図に基地中枢機能と要人の宿泊場所を描きこみ、想定を含めて鉄鏃数が多いゾーンを描きこんでみました。

基地中枢機能・要人宿泊場所とそれを囲む「竪穴住居10軒あたり鉄鏃出土数」高レベルゾーン

基地中枢機能と要人宿泊場所を取り囲んで「竪穴住居10軒あたり鉄鏃出土数」高レベルゾーンが配置されていることがわかります。

白幡前遺跡2Aゾーンの周りに誰でもその存在が判る武器(槍)をもった兵士を配置する土地利用(基地ゾーンニング)は、律令国家が計画的に配置したものであると考えます。

白幡前遺跡と井戸向遺跡はたまたま2つの遺跡になっていますが、古代にあっては一体不可分の同じ基地内領域であったと考えます。

白幡前遺跡の東側には1Aゾーンの延長と2Cゾーン~3ゾーンの延長が拡がっていたと考えます。

2 軍用倉庫の防衛
萱田地区遺跡では棒状鉄製品が多出していて、その用途は判明していません。しかし白幡前遺跡発掘調査報告書では、1Bゾーンではこの棒状製品をかんぬき棒の差し込み金具として、3ゾーンでは枢戸(くくるど)の鍵として想定しています。
多数出土する棒状鉄製品の多くは戸締りに関する器具である可能性が濃厚です。

この情報から、古代では律令国家直轄の軍用基地といえども治安が悪いことが想定されます。

軍需物資をストックする掘立柱建物にはしっかりとした鍵をかけ、槍を持った番兵を配置していたのだと思います。

3 武器を所持する蝦夷戦争出征将兵の逗留、将兵の教育訓練活動

白幡前遺跡の1Aゾーン、1Bゾーンは陸奥国へ出征する将兵の一時逗留場所であったと想定しています。
ですから、この場所から多数の鉄鏃(槍)が出土していることが考えられます。

なお、墨書土器文字の検討から井戸向遺跡Ⅲゾーンについて2015.06.14記事「墨書土器代表文字の意味」で次のように記述しました。

「井戸向遺跡Ⅲゾーンでは「入」(ハイル)と「生」(イキル)が一緒に代表文字になっていますから、軍事部門のゾーンで、かつ兵として正式登用されていない人間が多いと考え、そのゾーンが新兵訓練地みたいなところと、仮説してみました。」

墨書土器文字の意味検討から、井戸向遺跡Ⅲゾーンを将兵の教育訓練活動の場所と考えたのでした。

この記述と井戸向遺跡Ⅲゾーンの竪穴住居10軒あたり鉄鏃出土数8.8という高レベル数値がよく対応しています。

墨書土器文字の意味検討と武器出土状況がよく対応していて、われながら興味を深めます。

参考 井戸向遺跡と白幡前遺跡の墨書土器文字の意味の検討
2015.06.14記事「墨書土器代表文字の意味」掲載図

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