1 D268土坑の位置
D268土坑の位置
2 D268土坑の出土遺物
D268土坑出土遺物
3 鉄滓出土の解釈(想像)
発掘調査報告書における鉄滓出土の記載は次の通りで、遺物観察表の記載や図示等はありません。
「この他に鉄滓も出土している。」
2016.09.22記事「上谷遺跡 カヤ実貯蔵用土坑」では次のような検討(想像)を行いました。
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遺物に燈明皿転用坏が3つ含まれ、さらに「破換面」が摩滅している坏(片)が7点出土しています。
摩滅している土器片ということですから、土器片として長期間使い込まれてきていることを示しています。
摩滅している土器片とは燈明皿として使っていた可能性を考えることができます。
これらの出土物から次のような土坑の歴史と廃絶時状況を推察します。
●D268土坑はカヤ実の果肉除去機能装置として利用された。
●カヤ実から採れる油は燈明皿を使って夜間照明に使われた。
●土坑内環境の悪化をリセットするために坑内焼却などが行われた。(焼土の存在)
●土坑は繰り返し利用され、堆積物で浅くなった。(下層、中層の存在)
●土坑が浅くなって使えなくなったとき、廃絶の儀式が行われ、使っていた燈明皿をもちより、感謝の念を込めて土坑に投げ込み埋めた。
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この検討と鉄滓出土を結びつけると次のような状況を想定できます。
●D268土坑は夜間照明用油生産に関連した施設であった。
●生産した油は転用燈明皿を使って夜間照明につかった。
●鍛冶施設でも夜間照明により生産の促進が行われていた。
●D268土坑廃絶の祭祀の際、鍛冶施設で使った転用燈明皿と鉄滓をお供えの品、捧げ物として土坑の底に置いた、埋めた、投げた。
D268土坑から出土した鉄滓は「偶然近くにあった鉄滓が土坑に流れ込んだ」という無意味さを前面に出した想定ではなく、「祭祀の捧げ物として入れられた」という有意味さを全面に出した想定をすべきものと考えます。
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度々引用させていただいている次の復元図もよく見ると、「照明」が当たっているように見えます。
どう見ても、この復元図は夜間作業であり、日中の太陽光を入口から採り入れた状況ではありません。
燈明皿にカヤ実から精製した油を燃やして照明とし、鍛冶作業に精を出した古代人の姿の想像が私の頭の中でよりリアルになりました。
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