2018年7月16日月曜日

竪穴住居床面傾斜を縄文人は好んだ

大膳野南貝塚後期集落竪穴住居の半数近くが床面に傾斜があります。現代人的感覚で言えば床面は水平にするのが最も好ましいと考えますが、どうも縄文人の居住環境の好みは違っていたようです。詳しい検討は後日おこなうこととして、とりあえず問題意識だけをメモしておきます。

1 J95竪穴住居の例

J95竪穴住居建物の検討
J95竪穴住居の床面はA断面で5°、B断面で1.6°ほど傾いています。
一方、発掘調査報告書記載により柱穴を色分けしてみると外側壁柱穴、内側壁柱穴、張出部柱穴、機能不明柱穴になります。住居の拡張が1回行われたと考えて、機能不明柱穴は棟木を支える補助柱と考えると、傾斜下側の補助柱が上側の補助柱の約2倍になり、傾く建物を下側で一生懸命支える姿がイメージできます。よく観察すると補助柱だけでなく、壁柱も内側、外側ともに傾斜下側に多く、上側に少なくなっています。
この様子をポンチ絵にするとつぎのようになります。

J95竪穴住居 模式断面(想定)
竪穴住居床面にわざと傾斜を設け、その傾斜に建物が耐えるように傾斜下側の柱を増やしている様子が観察できるのです。

2 J81竪穴住居の例

J81竪穴住居床面の勾配
J81竪穴住居床面の勾配は広い空間の部分で7.2°、全体平均で5.2°になります。

3 竪穴住居床面が傾斜している範囲

竪穴住居床面が傾斜している範囲
南貝層に関わる竪穴住居のほとんど全てと北貝層に関わる竪穴住居の多くの竪穴住居の床面が本来の自然地形を利用して傾斜しています。その数は後期集落全竪穴住居の半数近くになります。これらの竪穴住居は台地側に浅い掘り込み壁を有し、谷津側では掘り込みはありません。

4 竪穴住居床面傾斜の意味
わざわざ自然地形を利用して床面に傾斜を設けているので、縄文人は床面に傾斜をつけることを好んだのだと思います。
なぜ竪穴住居床面に傾斜をつけたかったのか、とりあえずの仮説は排水をよくするためと安眠を得るためであったとします。
床面に傾斜をつけておけば住居内に雨水が流れ込んできても貯まることはなく、全部流れ出てしまい、災害をやり過ごすことができます。
また、WEBでたまたま読んだ論文にはベッドの傾きを10°にすると0°や20°以上と比べて仰臥位での寝心地が最も良くなり、同時に入眠と睡眠維持でも最も良いことが判ったそうです。(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscn/41/6/41_505/_pdf/-char/en)
縄文人が寝心地をもとめて竪穴住居床面に傾斜を持ち込んだか否かなどと考えると、大膳野南貝塚学習がとても愉快なものになります。
竪穴住居床面傾斜の意味を今後折に触れて詳しく検討することにします。

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