縄文土器学習 310
加曽利貝塚博物館で現在開催されている企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」(2019.11.16~2020.03.01)で展示されている注口土器6点(佐倉市3点、成田市3点)を会場現場で心ゆくまでじっくり比較観察しました。雨天夕方に訪れたとき、丸々2時間自分以外は誰一人来場者はいませんでした。
1 注口土器の展示
佐倉市分注口土器展示
成田市分注口土器展示
注口土器に関して次の説明パネルが掲載されていて、学習のよい導きになります。
注口土器説明パネル
2 観察
・6点の注口土器のうち1点(加曽利EⅣ式瓢箪型注口土器(後期称名寺式期)(成田市長田雉ヶ原遺跡))だけは模様がありませんが、他の5点は微隆起線による模様と、瓢箪型という器形が類似しています。
・細い棒を差し込んで開けた小孔が口縁付近にあるものが2点あり、パネルで説明されています。その2点をみるとともに注口部脇に小孔があいています。
加曽利EⅣ式瓢箪型注口土器及び蓋(佐倉市六崎貴舟台遺跡第10次)の注口部付近の様子
以下佐倉市企8土器と略称します。
加曽利EⅣ式有孔鍔付注口土器(成田市キサキ遺跡)の注口部付近の様子
以下成田市企31土器と略称します。
3 小孔付注口土器に関する考察と空想
・2つの注口土器に開いている小孔は酒造土器(大型の鍔付有孔土器)のガス抜き小孔を模したデザイン上の要素で、それが酒器であることを表現しているのではないかと想像します。
・小孔には必ず微隆起線が伴います。小孔と微隆起線模様はセットになっている考えて間違いありません。
・小孔だけでなく、大きな穴も対象とすると、5点の土器全てが小孔・穴と微隆起線が関連して、セットになっています。
・瓢箪製の酒器(容器)が土器とは別に存在し、その瓢箪を持ち歩くために紐を使っていて、その模様を瓢箪型注口土器に取り入れたように空想します。
・佐倉市企8土器は小孔が目、注口部が口に対応する獣面のようなイメージを受けます。この土器を作成した縄文人が「多義的」「重想的」観点から獣面をつくったという可能性があり、メモしておく価値はあると思います。
・小林達雄編「総覧縄文土器」の注口土器の章には要旨次のような記述があります。
「注口部の先端が摩滅しているものがあり、直接口をつけた行為が想定され、女性は男性器から出る「酒」を飲むことにより男女が結合して新しい命を育む祭祀用の土器とした用法に結び付く。」
この記述はあくまでも想像としての記述ですが、注口土器に女性が直接口をつけて、酒を回し飲みしていたというショッキングな情報です。
・時代は違いますが、次の土器には睾丸を連想させる玉が注口部下に2つ付いていて、上記女性回し飲み説を裏付けるような気になります。
安行3a式重心下方偏球形注口土器(下ヶ戸貝塚)
2019.08.24記事「安行3a式重心下方偏球形注口土器(下ヶ戸貝塚)の観察」参照
・注口土器の注口部が男性器を表現していると考え、その根元に二つの「玉」があるものまで実在することから、加曽利博E式企画展展示の2つの小孔付き土器も同じく、注口部近くの孔に紐を通して、その紐の下に2つの「玉」を下げていたのかもしれません。
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縄文土器の学習が進むにしたがって、生殖にかかわる生々しい様子がたびたび出てくるようになりました。自分はこのような状況をほとんど予期していませんでした。いまさら引き下がるわけにはいきません。
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