2020年2月2日日曜日

加曽利EⅡ式土器観察 企19 内面展開写真も

縄文土器学習 333

この記事では加曽利博今年度企画展展示土器「加曽利EⅡ式深鉢(四街道市南作遺跡)企19」について観察します。(注 「企19」はこのブログにおける整理番号です。)

26 R元年度加曽利E式企画展(印旛地域編) 加曽利EⅡ式深鉢(四街道市南作遺跡)企19
26-1 展示状況写真

加曽利EⅡ式深鉢(四街道市南作遺跡)企19

26-2 3Dモデル

加曽利EⅡ式深鉢(四街道市南作遺跡)企19 観察記録3Dモデル
撮影場所:加曽利貝塚博物館 企画展「あれもE これもE ―加曽利E式土器(印旛地域編)―」
撮影月日:2019.11.19
整理番号:企19
ガラス面越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v4.523 processing 56 images

26-3 参考 3Dモデルを正立させてオルソグラフィック投影した画像

3Dモデルを正立させてオルソグラフィック投影した画像
器形を確認するための3DF Zephyr Lite画像

26-4 展開写真

加曽利EⅡ式深鉢(四街道市南作遺跡)企19 展開写真 外面(一部のみ切り抜き表示)
3DモデルからGigaMeshで作成

加曽利EⅡ式深鉢(四街道市南作遺跡)企19 展開写真 内面(360度表示)
3DモデルからGigaMeshで作成

参考 展開写真作成のための企19土器近似円錐体の設定状況
GigaMesh作業画面

26-5 観察
器形観察
・キャリパー形をしています。
・欠落のため胴部にどれほどのふくらみがあるかは確認できません。
・口唇部は深い沈線で口縁部から独立しており、かつ水平にしつらえられています。
段構成観察
・口縁部と胴部の2段構成です。
文様観察
・口縁部は渦巻文と円文がつながり、その間に楕円区画文が挟まるというセットがあるようです。欠落部分が多いためそれ以上は不明ですが、他の土器の事例では渦巻文・円文・楕円区画文が構成するセットが4つあるものが多いようです。
・胴部は沈線2本と沈線3本の2種の懸垂磨消帯が施されています。3本→2本→2本→3本→2本→2本というリズムがあるようです。
・懸垂磨消帯の幅が上下方向で同じであり、典型加曽利EⅡ式土器のように上部に行くほど磨消帯の幅が広くなっていません。この土器は加曽利EⅡ式期初期の土器のようです。
・懸垂磨消帯の配置リズムと口縁部の渦巻文・円文・楕円区画文配置リズムが調和していないようです。胴部の文様施行には注意が払われず、口縁部文様施行に意識を集中したのかもしれません。
・口縁部と胴部の縄文方向が異なり、口縁部文様に意識を集中していたことが垣間見られます。
裏面観察
・黒い部分が口縁部と胴部の間付近で帯状に広がっていて、土器利用によってできた炭化物(注)であると推察できます。
注…調理や煮沸におけるおこげ、調理後のカビ発生予防のための加熱(余熱による横置空焚き)によるおこげなど。

26-6 感想
・キャリパー形、口縁部渦巻文・円文・楕円区画文、懸垂磨消帯などから加曽利EⅡ式土器として判別されているものと考えます。
・口唇部が独立し水平である様子から実用性を重視した土器であると感じます。
・内面黒色部の帯状分布から口縁部付近まで液体調理物を入れて煮沸していた状況が推察できます。
・GigaMeshでは3Dモデルの外面のみならず内面の展開写真もつくることができます。内面展開写真からはあまり着目されていない情報を引き出すことが可能であるとわかりました。

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参考 加曽利E式土器観察の視点

加曽利貝塚博物館の加曽利E式土器細分基準

加曽利E式土器の移り変わり

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