縄文土器学習 596
加曽利貝塚博物館常設展展示の加曽利EⅠ式土器を観覧中、その渦巻文が丁寧に作られてることに気が付きました。また形状が凹んでいます。加曽利EⅠ式土器、EⅡ式土器のトレードマークである渦巻文の原型を見つけたような感覚を覚え、強い刺激を受けました。土器のパーツに特別の興味を持ったのは初めてです。そこで土器全体の3Dモデル作成だけでなく、この渦巻文だけを対象とした3Dモデルも作成し、考察(想像)を深めてみました。
1 加曽利EⅠ初土器の渦巻文(千葉市加曽利貝塚) 観察記録3Dモデル
勝坂・阿玉台末/加曽利EⅠ初土器の渦巻文(千葉市加曽利貝塚) 観察記録3Dモデル撮影場所:加曽利貝塚博物館常設展
撮影月日:2021.05.07
ガラスショーケース越し撮影
3Dモデル写真測量ソフト 3DF Zephyr で生成 v5.019 processing28 images
展示の様子 1
展示の様子 2
展示の様子 3
名札
3Dモデルの動画
2 考察(想像)
2-1 渦の意味
ア 渦が水流の渦に見える
自分の感覚では渦が全体として凹んでいて、また渦を示す深くて鋭い沈線の様子から、水が渦を成して吸い込まれる様子が表現されているように想像します。
イ 糸巻状把手の下に渦が配置されている
糸巻状把手が噴水であるとこれまで想像してきていますが、その下に水流の渦があるのは理解しやすい構図です。天に向かって大きく自噴する水がその下で溜まり流れ出す構図です。
ウ 水は渦を成して土器内部に流れ込む
渦巻が、水流が吸い込まれていく様子であるとすれば、それは土器内部に吸い込まれるしかありません。つまり、渦巻は豊かな水が土器内部に流れ込む様子を表現しています。言い換えれば、干天で飲み水が無くなるという危機、ひでり災害が無い理想郷の姿をこの土器は表現していると想像します。
2-1 渦巻文と把手の関係
ア 渦巻文重厚性と把手大小の対応
把手は対向する2つが1組になった2組4つが付いています。1組は大、もう1組は小となっています。今回3Dモデルを作成したのは小把手下の渦巻文です。大把手下の渦巻文をみるとデザインが少し違っています。
大把手下の渦巻文
大把手下の渦巻文も全体が凹んでいて、深く鋭い沈線が彫られていますが、渦巻の周りに刻みが巡らされています。デザインとしてより重厚です。
このデザインはこの土器内部に通じる泉がより強(こわ)い(=つよい、より厳しい干天でも枯れない)ものであることを表現していると想像します。自噴の規模がより大きい(大把手)ということと、泉の強(こわ)さ(渦巻の重厚表現)が対応しています。
イ 参考 後代地名 コワシミズ
後代の地名で「コワシミズ」(干天でも枯れない泉)という場所に縄文遺跡が多いのも、飲料水確保が縄文人の重要関心事であったことに起因するからだと思います。
コワ清水(旧版1万分の1地形図「三角原」)
子和清水遺跡の例 千葉市花見川区三角町、旧石器・縄文・弥生・古墳
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