2021年5月20日木曜日

杖状文と渦巻文(垂下文付)

 縄文土器学習 606

1 杖状文と渦巻文(垂下文付)

2021.05.20記事「加曽利EⅢ式深鉢(No.61)(流山市中野久木谷頭遺跡) 観察記録3Dモデル」で沈線による垂下文の付いた渦巻文に興味を持ちました。


渦巻文(垂下文付)

そして、次のような想像的感想を持ちました。

「地中から吹き上がった湧泉が弧を描いて流れ落ちる様子という空間立体的な様子が土器表面に渦として表現されている。同時にその吹き上がった水が土器の内部に吸い込まれていくという空想的渦の様子が表現されている。」

この想像的感想は以前感じた杖状文(C字型ステッキ状文)に関する感想と同じです。

2021.05.19記事「加曽利EⅢ式深鉢(No.46)(柏市小山台遺跡) 観察記録3Dモデル


杖状文(C字型ステッキ状文)の様子

これら二つの文様に関する感想が結合して、それらが同等の文様であるという仮説が浮かび上がりましたので図解メモします。


杖状文と渦巻文(垂下文付)が同等の文様であると考える仮説

杖状文が水噴出表現記号であるという考えは2019.08.18記事「加曽利EⅡ式把手付鉢の杖のような模様」ですでにメモしています。


加曽利EⅡ式把手付鉢で観察できる杖のような模様


水噴出を表現する沈線記号か?

2 感想

ア 清潔で豊富な水が得られる世界が理想世界・神話世界であった

●中峠式土器における噴水を描写したと考えられる把手、加曽利EⅠ式土器・EⅡ式土器における湧水を描写したと考えられる渦巻文、そして加曽利EⅢ式土器で現れる湧泉表現と考えられる渦巻文(垂下文付)の全てがもし首肯できる思考、もっともらしさの高い思考であるならば、そこから次の思考を導き出すことができます。

・縄文中期にあっては清潔で豊富な飲料水・生活用水の確保がきわめて重要であった。単なる重要性ではなく、最も重要な生活環境であった。従って、清潔で豊富な飲料水・生活用水確保を祈念して土器文様が描かれた。理想的水環境は理想世界の姿であった。理想的水環境は神話の重要なモチーフであり、土器に文様として表現された。

●逆に発想すると、清潔で豊富な飲料水・生活用水の継続的確保が困難であった事情が背景にあると考えます。

・定住したため、集落の縄張り範囲でのみでしか飲料水・生活用水の確保ができないため、干天による湧水枯渇は集落の死活問題だったに違いありません。

・人口が少ないとはいえ廃棄物やし尿が循環する水環境のなかで、衛生的水を得ることは課題だったに違いありません。

・現代人が考える以上に縄文人は清潔好きであり、その清潔観念から病気から逃れ、健康を維持していたと考えます。清潔な水さえあれば、狩猟採集活動のアレコレを乗り越えて、人々は健康でイキイキした生活を送れたと想像します。

イ 狩猟や採集と水

加曽利E式土器では水が最大テーマであり、社会の関心事がそこにあったと考えます。一方、前期土器には把手に猪を造形するものがあり、この土器を作った人々の最大関心事は狩猟にあったと考えます。おそらく加曽利E式土器の時代は漁業が加わって食べ物が豊富に手に入るようになり、食うことより、清潔で豊かな水環境の方が価値として重視されたのだと想像します。生活環境の質が求められた時代だったと想像します。


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