2021年5月9日日曜日

有吉北貝塚の北斜面貝層から出土した加曽利EⅡ式土器(紙上観察) 1

 縄文土器学習 595

有吉北貝塚北斜面貝層出土加曽利EⅡ式土器の学習を始めます。発掘調査報告書では竪穴住居や土坑記述と異なり、土器群毎に整理されているので、学習する上で便利です。また大型土器片が多いので、型式イメージもしやすくなっています。学習は第9群、第10群、第11群別に行います。この記事では第9群(磨消垂下文が生まれる以前の加曽利EⅡ式土器)土器の紙上観察を行います。

なお、北斜面貝層は第11群の時期に投棄が開始されたことが判っていますので、第9群土器は全て第11群の時期以降の時代に北斜面貝層に流れ込んだものです。

1 キャリパー形深鉢


187

頸部無文帯が存在しています。第8群を前後と区別する重要指標として頸部無文帯の存在がありますが、この土器は第8群ではなく第9群に分類されています。その理由が判然としません。口唇部に突起状に存在する様式化した渦巻文が加曽利EⅠ式的ではなく加曽利EⅡ式らしさを表しているという解釈でしょうか?


188

自分には第7群(加曽利EⅠ式土器の最初段階)である可能性がどのようにして排除されたのか判りません。


189

この土器も第7群である可能性がどのようにして排除されたのか判りません。


参考sb195-2(第7群 加曽利EⅠ式土器 竪穴住居の炉体土器)

波状でクランクに「剣」がついていますが、それ以外は189と似ています。

2 浅鉢


191

渦がよく巻いています。


192

渦がよく巻いています。

3 連弧文土器


198

浅鉢の連弧文土器のようです。第9群土器に特定できものかどうか、自分にはわかりません。


199

これも浅鉢のようです。

4 曽利式土器(籠目文土器)


201

発掘調査報告書ではつくりが丁寧であることから曽利Ⅱ式である可能性が述べられています。また口縁内側に隆線が付加され蓋受のような断面になっていることが指摘されています。


202

曽利Ⅲ式のようです。雑な施文となっています。


205

籠目文土器の破片です。

5 感想

・187は第8群と区別した理由が、188・189は第7群と区別した理由が判りません。現物を手に取ってみれば一瞬で理解できることかもしれません。

・北斜面貝層から出土した土器は少なくとも9群土器は全て二次的に流入したものです。従って層位や共伴出土物などの情報を利用することは出来ません。つまり187、188、189を第9群と特定した背景には形状・文様等のある意味で動かぬ理由が存在しているはずです。現状の素人紙上観察ではそれが判りません。将来判るようになることを期待して学習を継続することにします。


0 件のコメント:

コメントを投稿