有吉北貝塚北斜面貝層の土器片出土層準が発掘調査報告書掲載情報から略推定できることがわかりましたの、その原理をメモします。
1 事例 395土器(加曽利EⅢ式 有孔鍔付土器)に関する情報
発掘調査報告書では北斜面貝層出土土器で掲載された土器は、接合に使われた土器片の平面分布と投影断面位置が掲載されています。
395土器(加曽利EⅢ式 有孔鍔付土器)を例に取ると発掘調査報告書から次のような情報を読み取ることができます。
ア 395土器そのもの情報
395土器実測図、写真(発掘調査報告書情報から作成した自前データベース画面)
記載概要「球状を呈する胴部に直立する口縁部が接続し、屈折部に2個1単位の孔を有する鍔が貼付されている。胴部に沈線による渦巻形を基本とする文様を描出し、文様内の一部にLRL複節縄文を充填している。」
イ 395土器の土器片の分布状況
395土器の土器片の分布状況
掲載図から395土器の土器片分布範囲が約50㎡、土器片最遠距離が8.5m、土器片の最大標高差が約4mであることが判ります。
2 土器片の断面図出土層準が略推定できる原理
土器片の断面図出土層準が平面分布図及び投影断面図分布図から略推定できる原理
平面図分布図と投影断面分布図の個別土器片記号を全て対照特定できます。それにより断面図の断面線付近に位置する土器片は平面位置と標高が判りますから、断面図の中にその位置を略特定できます。つまり出土層準を略特定できることになります。
395土器第4片は表土から、第3片・5片は混土貝層(緑色貝層)から出土したと推定できます。
3 「土器片の断面図出土層準が略推定できる原理」の意義
断面図は2m間隔で作成されていますから、土器片と断面図との乖離距離は最大1mであり、貝層の急激な変化は1mの間ではほとんどないと仮定すると、全ての土器片について出土層準を略推定できることになります。
実際の情報操作作業レベルで土器片の出土層準を略推定できる原理を確かめることができました。これにより貝層断面図に土器群別土器片をプロットできることが判りました。そのプロット図が完成すれば、貝層各層準の形成時期推定がデータにより確度の高い検討ができるようになります。
4 感想
この記事で検討した事項の前にそもそも次のような疑問が湧いています。今後検討を深めて行きたいと思います。
ア 395土器は(他の土器もほとんどが)なぜ広範囲にわたって土器片が分布するのか?
どこかで土器をバラバラに壊して放置し、それが自然営力(流水の運搬作用など)だけで散らばったとは考えにくいです。自然営力による移動も考える必要はありますが、縄文人がばら撒いたということがメインであるような分布に見えます。どのような活動で土器片がこのようにバラバラに分布するのか疑問を晴らしたいと思います。
イ 土器片接合の方法は?
無数の土器片に出土位置と標高が詳しく付与され、それを相互接合して一つの土器の姿に復元していく方法が具体的に思い浮かびません。広い体育館のような場所でカードゲーム「神経衰弱」の二乗、三乗のような困苦に満ちた活動をするのだとおもいますが、その実態を知りたいものです。
5 参考 第12群土器(加曽利EⅢ式~EⅣ式)の分布
第12群土器の土器片分布状況
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