2024年10月9日水曜日

船形埴輪(飯田市殿村遺跡)観察記録3Dモデル

 Boat-shaped Haniwa (Tonomura Site, Iida City) Observation Record 3D Model


Unexpectedly, I came across a boat-shaped Haniwa with a person on it, and created a 3D model. It depicts the core of the "Amanotori-fune faith," in which the souls of the dead travel to the other world on a boat lured by a bird. However, the bird does not appear.


予期しない状況で、人物が乗った船形埴輪に出会い、3Dモデルを作成しました。「天鳥船(あまのとりふね)信仰」の核心である、「死者の魂が鳥に誘われた船に乗って他界へ赴く」様子が表現されています。ただ、鳥は登場していません。

1 船形埴輪(飯田市殿村遺跡)観察記録3Dモデル

船形埴輪(飯田市殿村遺跡)観察記録3Dモデル

古墳時代後期

撮影場所:飯田市考古博物館

撮影月日:2024.10.03


展示の様子

3DF Zephyr v7.531 processing 170 images


3Dモデル画像


3Dモデル動画

2 メモ

2-1 船形埴輪との出会い

千葉市人形塚古墳学習に関連して、古墳と埴輪に興味を深めています。

古墳における埴輪は当時の他界観を表現していて、その他界観に基づく信仰を和田晴吾著「古墳と埴輪」(2024、岩波新書)では「天鳥船(あまのとりふね)信仰」と名付けています。その核心は「死者の魂は鳥に誘われた船に乗って他界へ赴く」ものと説明されています。

このような興味を深めている時、飯田市考古博物館で予期しない状況でこの船形埴輪展示に出会いました。

死者が船に乗り、他界を赴く様子を象形している埴輪であることは間違いありません。

展示説明にも同じ趣旨の説明があります。


展示説明

幸いなことに、この展示はガラス面にさえぎられることなく、また広い範囲から撮影できる状況にあることから欠落のない3Dモデルを作成できました。

2-2 発掘調査報告書の説明

発掘調査報告書「殿村遺跡 大荒神の塚古墳」(2003.3 長野県飯田市教育委員会)を全国遺跡報告総覧からダウンロードして読みました。

自分の思い込みに反して、この埴輪は古墳から出土したものではなく、古墳時代前期の竪穴(規模4.2×4.1、深さ29cm、深面積15.8平方m)から出土したものです。家形埴輪も同時に出土しています。

発掘調査報告書では竪穴の性格について6つの選択肢を提起して検討し、最終的にこの竪穴が葬送儀礼と関係する施設であったと考えています。葬送活動そのものは近くの場所で行われとしています。

埴輪は古墳出土物か、埴輪生産地からの出土物と考えていた自分の知識の狭さを、強制的に意識させられました。

同時に発掘調査報告書の別箇所では近くに埴輪窯があった可能性(証拠はない)にも触れていて、報告書を書いた人によって別の見解も述べられています。

2-3 船形埴輪の特徴

・大きさは全長77.3cm、最大幅24.8cm、舳先の基部で推定幅13.5cm、艫で幅17.3cmを測る。(発掘調査報告書から引用)

・人物が褌姿で、大きな口をあいている(大声を出している)様子が、自分が勝手にイメージしていた、盛装した高貴な人物像と違います。しかし、頭にミズラはついています。

・左舷外側に×印のような線刻文があり、発掘調査報告書では葬送に関する象徴的図柄と考えています。

・発掘調査報告書では、飾り立てられた「王の船」とは印象を異にするが、蓋(きぬがさ)とも考えられるかさ状の土製品を伴うことや準構造船であることから、「王の船」としてつくられたものとしています。

2-4 感想

・この埴輪は古墳以外の場所で行われた葬送儀礼で使われたアイテムであったようです。その葬送儀礼は「天鳥船(あまのとりふね)信仰」に基づいて執行されたと考えます。

・この埴輪は埴輪に表現すべき事柄の情報・知識が少ない、土着レベルの職人によって作成されたものと考えます。


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