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2019年6月28日金曜日

田戸下層式土器 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 166

この記事は2019.05.01記事「田戸下層式土器 東峰御幸畑西遺跡」の追補記事です。
千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室に展示されている縄文早期、前期土器の観察記録3Dモデルが出来ましたので、順次掲載し検討を加えています。

1 観察記録3Dモデル

田戸下層式土器 東峰御幸畑西遺跡 観察記録3Dモデル
千葉県教育委員会所蔵
撮影場所:千葉県教育庁文化財課森宮分室
撮影月日:2019.05.27

田戸下層式土器 東峰御幸畑西遺跡
千葉県教育委員会所蔵

2 関連情報

小林達雄編「総覧縄文土器」による田戸下層式挿図(貝殻・沈線文系土器3、4)
3段階は田戸下層式Ⅰ、4段階は田戸下層式Ⅱに相当すると説明されています。
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田戸下層式土器展示の様子

2019年6月24日月曜日

稲荷台式土器 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 161

この記事は2019.04.29記事「稲荷台式土器 東峰御幸畑西遺跡」の追補記事です。
千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室に展示されている縄文早期、前期土器の観察記録3Dモデルが出来ましたので、順次掲載し検討を加えています。

1 観察記録3Dモデル

稲荷台式土器 東峰御幸畑西遺跡 観察記録3Dモデル
千葉県教育委員会所蔵
撮影場所:千葉県教育庁文化財課森宮分室
撮影月日:2019.05.27

稲荷台式土器 東峰御幸畑西遺跡
千葉県教育委員会所蔵

2 観察記録3Dモデル作成によって新たに観察できた事柄

観察記録3Dモデルによる底部観察の様子
土器底部を観察すると同心円状の擦痕が確認できます。撮影写真をザッと見ただけでは気が付きませんでした。3Dモデル作成が自分の観察をより深めたことは素晴らしいことです。3Dモデルの出来栄えがあまり良くないにもかかわらず、それでもそれなりの意義があると確認できました。
擦痕を撮影写真を拡大して観察すると次のようになります。

同心円状擦痕の観察
小林達雄編「総覧縄文土器」で調べると次のような記述があり、稲荷台式土器の時代頃から住居内炉に土器を刺しこんでその周りから加熱する方法が確認できるようです。
「器形からみて、主たる用途は食物の煮炊きと推測される。しかし土器内面に炭化物が付着していた例はほとんどない。ただし、夏島式以降の土器には、尖底化が進んだ底部周辺にしばしば"同心円状擦痕"と呼ばれる擦り傷が認められる。この成因は、煮炊きの際、土器を炉の灰床に、ねじるよう差し込んだ痕跡と説明される。実際に、赤化や微細な亀裂など、尖底部に被熱痕がある個体も多い。稲荷台式期以降の竪穴住居跡には、床面の中央部付近に方形の浅い堀り込みが検出される例が多く、"灰床炉"と呼ばれている(今村1986)。"同心円状擦痕"や被熱痕の存在は、この炉跡の存在とも符合する。」
撚糸文系土器の型式細別(稲荷台式土器抜粋)
小林達雄編「総覧縄文土器」から引用
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稲荷台式土器展示の様子

2019年6月23日日曜日

井草Ⅰ式土器 観察記録3Dモデル

縄文土器学習 159

この記事は2019.04.23記事「井草式土器 東峰御幸畑西遺跡」の追補記事です。
千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室に展示されている縄文早期、前期土器の観察記録3Dモデルが出来ましたので、順次掲載し検討を加えます。

1 観察記録3Dモデル

井草Ⅰ式土器 東峰御幸畑西遺跡 観察記録3Dモデル
千葉県教育委員会所蔵
撮影場所:千葉県教育庁文化財課森宮分室
撮影月日:2019.05.27

井草Ⅰ式土器 東峰御幸畑西遺跡
千葉県教育委員会所蔵

2 観察記録3Dモデル作成で判った事柄

撚糸文横走箇所が対向している
撚糸文はほとんどの箇所で縦走していますが、一部だけ横走していてその趣旨がわかりませんでした。「雑な」模様のつけ方のように感じていました。しかし3Dモデルでよく観察すると横走部分が対向部にもあることが判りました。「雑な」模様のつけ方ではなく秩序だって模様をつけていることが判明しました。
模様の凹凸を利用して滑り止め機能(実用機能あるいは滑り止めをイメージしたデザイン)を付加しているように推測しました。

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井草Ⅰ式土器展示の様子

2019年5月1日水曜日

田戸下層式土器 東峰御幸畑西遺跡

縄文土器学習 104

縄文土器を形式別に観察しています。
この記事では千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室に展示されている、縄文早期中葉沈線文系土器様式の一つである田戸下層式土器(成田市東峰御幸畑西遺跡出土)を観察します。

1 田戸下層式土器の観察

田戸下層式土器 成田市東峰御幸畑西遺跡出土 千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室展示

田戸下層式土器 上半部拡大 成田市東峰御幸畑西遺跡出土 千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室展示

田戸下層式土器 下半部拡大 成田市東峰御幸畑西遺跡出土 千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室展示

以下「日本土器事典」の田戸下層式の項抜粋。
「天狗鼻状の鋭角な尖底深鉢が多い。砲弾形の器形を呈し口縁部は平縁・波状の双方がある。口縁部は厚く、緩く外反し、三戸式とは対照的な外削ぎ状となる。文様要素は太・細沈線文に加え貝殻腹縁文、爪形状刺突文やボタン状の貼付文も多用される。縄文を持つ例もある。文様モチーフは胴部全面を横位の数条の沈線文で分帯し鋸歯状文・三角形文などを充填する。文様の変化から時期細分が試みられ、新しい段階ほど小渦巻文や曲線文が増える。関東全域から中部・東北南部にわたる広い分布圏を有するが、下総台地北部の分布密度は群を抜いて高い。関東では細久保式相当の押型文土器が客体的に伴う。」

2 田戸下層式土器の較正年代

田戸下層式土器の較正年代
9500年前を中心とするその前後数百年をイメージすることができます。
中国で食料生産が始まった頃です。2019.04.29記事「稲荷台式土器 東峰御幸畑西遺跡

3 田戸下層式土器の分布(千葉県域)

田戸下層式土器出土遺跡
私家版千葉県遺跡データベースで田戸下層式土器を検索すると153レコード(遺跡)がヒットします。分布は「日本土器事典」に特記されているように、下総台地北部に群を抜いて分布密度が高い空間が存在します。

田戸下層式土器出土遺跡ヒートマップ
分布密度が特段に高い部分だけがヒートマップが濃くなっています。
この部分だけを識別標高図を背景に表示すると次のようになります。

田戸下層式土器出土遺跡密集域
田戸下層式土器出土遺跡密集域は大須賀川流域に対応します。上流から下流まで含めた大須賀川流域という空間に特定土器形式がなぜ対応するのか?とても興味深い今後の検討課題になります。周辺隣接流域ではなく、大須賀川流域を田戸下層式土器利用縄文人が好んだ理由があるはずです。

4 参考 東峰御幸畑西遺跡の場所と情報

ちば情報マップ 埋蔵文化財包蔵地 から
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学習チェックリスト

2019年4月29日月曜日

稲荷台式土器 東峰御幸畑西遺跡

縄文土器学習 99

縄文土器を形式別に観察しています。
この記事では千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室に展示されている縄文早期撚糸文土器である稲荷台式土器(東峰御幸畑西遺跡出土)を観察します。

1 稲荷台式土器の観察

稲荷台式土器 東峰御幸畑西遺跡出土 千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室展示

稲荷台式土器 上部拡大
東峰御幸畑西遺跡出土 千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室展示

稲荷台式土器 下部拡大
東峰御幸畑西遺跡出土 千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室展示

「夏島式土器とほとんど同器形をとるが、縦位施文の縄文、撚糸文の間隔は著しく粗く、帯状となり、その間は無文となる。器面は研磨され滑沢を帯びる。」(日本土器事典より引用)
稲荷原式土器と異なり口唇部に特別なつくり・模様はありません。
展示土器の下部形状が現物として復元されているので、尖底の様子が確認できます。

2 稲荷台式土器の較正年代

稲荷台式土器の較正年代
稲荷台式土器の較正年代は11000年前の前後1000年間の中頃をイメージすることができます。

参考 農耕牧畜の起源と縄文土器較正年代対比 1
ブログ「芋づる式読書のメモ」2019.04.10記事「持てるものと持たざるものの歴史」から引用

参考 農耕牧畜の起源と縄文土器較正年代対比 2
ブログ「芋づる式読書のメモ」2019.04.10記事「持てるものと持たざるものの歴史」から引用

稲荷台式土器の較正年代は人類が農耕牧畜を南西アジアではじめて始める直前頃の年代になります。

3 稲荷台式土器の分布(千葉県域)

稲荷台式土器出土遺跡
私家版千葉県遺跡データベースでは稲荷式土器で検索すると101レコードがヒットしました。
遺跡分布は同じ早期である井草式土器分布と大局的には類似します。
2019.04.25記事「井草式土器出土遺跡の分布」参照

4 参考 東峰御幸畑西遺跡の場所と情報

ちば情報マップ 埋蔵文化財包蔵地 から引用

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学習チェックリスト



2019年4月23日火曜日

井草式土器 東峰御幸畑西遺跡

縄文土器学習 91

縄文早期土器の最初として井草式土器を観察します。
この記事では千葉県教育庁文化財課森宮分室閲覧室に展示されている東峰御幸畑西遺跡出土井草Ⅰ式土器を観察します。

1 展示土器の観察

井草Ⅰ式土器 東峰御幸畑西遺跡出土 千葉県教育庁文化財課森宮分室閲覧室展示
撚糸文が口唇部で斜行、上部左端の一部で横走、他は全体に縦走して施文されています。
底部は平になっていますが、復元できない底部の仮の姿(復元物を置くための便宜的姿)であると考えます。本来は丸い底部であったかもしれません。

2 模様の詳細観察

模様の拡大

模様の観察
1 横走模様について
口唇部下の胴部の一部(写真左端)にだけ撚糸文が横走するのですが、なにか不自然です。口唇部下胴部の縦走して見える模様が横走撚糸文の見間違えかもしれないと考え、写真を拡大して観察しますが、よくわかりません。
2 撚糸文の欠落する領域
撚糸文が欠落する領域が各所に存在します。詳しく観察すると撚糸文が漸移的に消失するので「施文作業し忘れ」のような状況が読み取れると考えます。
3 撚糸文の起終点
撚糸文の起終点をみると施文の最初(最後)動作で模様に角度がついています。雑と言えるような動作です。

3 感想
撚糸文による施文に専門的斉一性が感じられません。この土器における造形デザインのレベルが特殊なものであるのか、一般的なものであるのか、今後観察数を増やして評価できるようになるようにします。
この土器の造形デザインレベルが一般的なものであるならば、それ(デザイン表現力)を社会発展の様子を捉える指標の一つとして活用できるにちがいありません。

4 参考 東峰御幸畑西遺跡の場所と情報

ちば情報マップ 埋蔵文化財包蔵地 から引用
東峰御幸畑西遺跡から井草式土器が出土する竪穴住居3軒が検出されています。

5 参考 井草式土器の較正年代

千葉県縄文土器形式変遷の較正年代対比
井草式土器の較正年代はおよそ11000年前ごろとイメージできます。

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学習チェックリスト