2019年5月1日水曜日

田戸下層式土器 東峰御幸畑西遺跡

縄文土器学習 104

縄文土器を形式別に観察しています。
この記事では千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室に展示されている、縄文早期中葉沈線文系土器様式の一つである田戸下層式土器(成田市東峰御幸畑西遺跡出土)を観察します。

1 田戸下層式土器の観察

田戸下層式土器 成田市東峰御幸畑西遺跡出土 千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室展示

田戸下層式土器 上半部拡大 成田市東峰御幸畑西遺跡出土 千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室展示

田戸下層式土器 下半部拡大 成田市東峰御幸畑西遺跡出土 千葉県教育庁文化財課森宮分室展示室展示

以下「日本土器事典」の田戸下層式の項抜粋。
「天狗鼻状の鋭角な尖底深鉢が多い。砲弾形の器形を呈し口縁部は平縁・波状の双方がある。口縁部は厚く、緩く外反し、三戸式とは対照的な外削ぎ状となる。文様要素は太・細沈線文に加え貝殻腹縁文、爪形状刺突文やボタン状の貼付文も多用される。縄文を持つ例もある。文様モチーフは胴部全面を横位の数条の沈線文で分帯し鋸歯状文・三角形文などを充填する。文様の変化から時期細分が試みられ、新しい段階ほど小渦巻文や曲線文が増える。関東全域から中部・東北南部にわたる広い分布圏を有するが、下総台地北部の分布密度は群を抜いて高い。関東では細久保式相当の押型文土器が客体的に伴う。」

2 田戸下層式土器の較正年代

田戸下層式土器の較正年代
9500年前を中心とするその前後数百年をイメージすることができます。
中国で食料生産が始まった頃です。2019.04.29記事「稲荷台式土器 東峰御幸畑西遺跡

3 田戸下層式土器の分布(千葉県域)

田戸下層式土器出土遺跡
私家版千葉県遺跡データベースで田戸下層式土器を検索すると153レコード(遺跡)がヒットします。分布は「日本土器事典」に特記されているように、下総台地北部に群を抜いて分布密度が高い空間が存在します。

田戸下層式土器出土遺跡ヒートマップ
分布密度が特段に高い部分だけがヒートマップが濃くなっています。
この部分だけを識別標高図を背景に表示すると次のようになります。

田戸下層式土器出土遺跡密集域
田戸下層式土器出土遺跡密集域は大須賀川流域に対応します。上流から下流まで含めた大須賀川流域という空間に特定土器形式がなぜ対応するのか?とても興味深い今後の検討課題になります。周辺隣接流域ではなく、大須賀川流域を田戸下層式土器利用縄文人が好んだ理由があるはずです。

4 参考 東峰御幸畑西遺跡の場所と情報

ちば情報マップ 埋蔵文化財包蔵地 から
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学習チェックリスト

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