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2019年5月23日木曜日

獣面把手土器ドラマチックトーンバージョン3Dモデル

縄文土器学習 134

海老ケ作貝塚出土獣面把手土器を対象に、撮影時に設定していた好みの写真フィルターで3Dモデルが作成できるかテストしてみました。

1 リーニュクレール画像による3Dモデル作成チャレンジ
リーニュクレール画像(劇画風画像)は自分が大好きな画像ですから、これで3Dモデルが作成できれば土器学習が楽しいものになります。

リーニュクレール画像

大いに期待して3Dモデル作成作業をおこなったのですが、ソフトが日本語で「厄介です」と答えてきて作成失敗しました。
残念です。

2 ドラマチックトーン画像による3Dモデル作成
ドラマチックトーン画像はコントラストが高くなり、同時に影が濃くなるフィルターです。

ドラマチックトーン画像

このフィルター写真では3Dモデルが作成できました。

船橋市海老ケ作貝塚出土獣面把手土器3Dモデル(ドラマチックトーンバージョン)

しかしこの3Dモデルよりも、下に示すいつも使うフィルター写真による3Dモデルの方が見やすいように感じます。

今回はリーニュクレール画像では3Dモデルは出来ないこととドラマチックトーン画像では出来るということに気がつくことができました。ドラマチックトーン画像による3Dモデルの活用場面があるか、選択肢が増えたことで満足することにします。

参考 最初に作成した船橋市海老ケ作貝塚出土獣面把手土器3Dモデル

3Dモデル作成に使った画像

 

2019年3月12日火曜日

獣面把手土器3Dモデル

縄文土器学習 64

飛ノ台史跡公園博物館常設展土器の一つである船橋市海老ケ作貝塚出土獣面把手土器の3Dモデルをいじれるような形式でアップしました。
複雑な把手の造形を詳しく観察することができます。

船橋市海老ケ作貝塚出土獣面把手土器3Dモデル
画面のmodel inspector(i)でmatcapに設定すると全体が見やすくなります。

土器の詳しい説明は2019.02.27記事「海老ケ作貝塚出土獣面把手土器の3Dモデル化」参照。


2019年3月1日金曜日

船橋市海老ケ作貝塚出土器台の観察

縄文土器学習 50

船橋市の飛ノ台史跡公園博物館に海老ケ作貝塚出土器台が展示されていますので観察しました。

1 海老ケ作貝塚出土器台

海老ケ作貝塚出土器台
船橋市飛ノ台史跡公園博物館展示

海老ケ作貝塚出土器台
船橋市飛ノ台史跡公園博物館展示

海老ケ作貝塚出土器台
船橋市飛ノ台史跡公園博物館展示

加曽利E式期のものであると考えられます。

2 観察

海老ケ作貝塚出土器台の観察
・全体の概形は加曽利貝塚博物館企画展展示器台2種と似ていて、お椀を伏せたような形で孔があいています。海老ケ作貝塚出土器台は大きな楕円孔が4つ開いています。
・器台上面付近が黒くなっていて、器台の利用に関わる色であるのかどうか知りたいところです。
・上面の中央付近の凹んだ部分が白っぽくなっています。この色もこの器台の利用(液体の蒸発気化装置)に関わるものであるかどうか知りたいところです。
・上面と側面がなす角の部分が他の部分と比べて摩耗が進んでいます。器台の利用により「何か」が擦れることが多く、摩耗したものと考えられます。その「何か」は摩耗の様子から土器のような固いものではないと直観します。
・側面上部の黒くなっている部分とそうでない部分の境目付近に同じ形状のキズが連続します。キズは円周方向に細長くなっています。器台作成時にできたキズではなく、利用時にできたキズのように観察できます。
・孔を通して器台内部の様子を見ようとしましたが、設置位置の関係で観察できませんでした。
・孔を通して「海老ケ作2次」の文字が見えました。
・観察結果は器台の利用が単純な少量液体蒸発ではなく、他の「何か」を使ってその機能を実現しているように暗示されます。

3 別の海老ケ作貝塚出土器台
文献をみると海老ケ作貝塚から展示器台とは別に3点の器台が出土していますので紙上観察してみます。

3-1 海老ケ作貝塚出土器台 ア

海老ケ作貝塚出土器台 ア
「船橋市の遺跡 船橋市史資料(二)」(船橋市発行)から引用
展示器台と形状が大きく異なります。お椀型ではありません。また孔も大きなものが2つとなっています。

3-2 海老ケ作貝塚出土器台 イ

海老ケ作貝塚出土器台 イ
「船橋市の遺跡 船橋市史資料(二)」(船橋市発行)から引用
写真を見る限り器台下部が丸ごと欠損しているようです。引用図書には「脚部が山状に連続するもので、穴を穿った器台とは異なるものである。」(第2次)と書いてありますが間違いだと思います。

3-3 海老ケ作貝塚出土器台 ウ

海老ケ作貝塚出土器台 ウ
「船橋市の遺跡 船橋市史資料(二)」(船橋市発行)から引用

海老ケ作貝塚出土器台 実測図 ウ
「船橋市の遺跡 船橋市史資料(二)」(船橋市発行)から引用
器台内面に弧状模様が沈線で描かれています。
「半円状のマドは全部で5コと推測」されています。
器台内面が一般土器外面に該当するという自分の作業仮説を支持する遺物です。

参考 器台に関する作業仮説

2019年2月27日水曜日

海老ケ作貝塚出土獣面把手土器の3Dモデル化

縄文土器学習 46

飛ノ台史跡公園博物館常設展に展示されている船橋市海老ケ作貝塚出土獣面把手土器の3Dモデル化が思いのほか満足感の得られるものになりましたのでその要因と様子をメモします。

1 獣面把手土器の展示状況と写真撮影
飛ノ台史跡公園博物館常設展に展示されている船橋市海老ケ作貝塚出土獣面把手土器は3階ホールの中央に設置された台に置かれていて、周囲に遮るガラスや地物が全くありません。360度自由に写真撮影できます。
このような好条件の下で土器を水平からと斜め上から2回にわたりぐるりとまわりながら全部で47枚の写真を撮影しました。

撮影写真の一部

2 3DF Zephyr Freeによる3Dモデル化
写真計測用ソフトウェア3DF Zephyr Freeを使い47枚の写真から3Dモデルを作成しました。
3Dモデルの出来は期待以上に満足感が得られたものになりました。このモデルをパソコンの中でいじりながら細部の立体模様の状況を詳しく観察することができます。

獣面把手土器の3Dモデル画面

獣面把手土器の3Dモデル画面

獣面把手土器の3Dモデル画面

獣面把手土器の3Dモデル画面

獣面把手土器の3Dモデル画面

3 海老ケ作貝塚出土獣面把手土器について
「海老ケ作貝塚 -縄文時代中期集落祉調査報告-」(1972、船橋市教育委員会)ではこの獣面把手土器について次のように説明しています。
・竪穴住居祉から出土
・褐色土中より発見された深鉢土器である。大きい立体把手と対面に小さい把手を口縁上に配する。大きい立体把手は獣面を表している。把手と把手の間には、1個づつかたつむり状の隆帯を付ける。文様は隆帯と沈線の組み合わせによる渦巻文が主文として埋まる。胴部に一条隆帯がまわり、胴部は無文である。
・本祉の時期は第Ⅲ類土器に分類でき、海老ケ作集落盛期の住居である。土器はいわゆるプレ加曽利EⅠ式、原加曽利EⅠ式に該当し、加曽利E式期に含めて考えることができる。
・遺跡全体では阿玉台式土器と勝坂式土器の影響をうけ、後者の影響が強い。

土器実測図
「海老ケ作貝塚 -縄文時代中期集落祉調査報告-」(1972、船橋市教育委員会)から引用

土器写真
「海老ケ作貝塚 -縄文時代中期集落祉調査報告-」(1972、船橋市教育委員会)から引用

4 感想
土器を学習する上で展示物をその展示会場で観察することには限界があり、記録を写真で残し、後日写真で観察しなおすことになります。しかし写真では立体物の詳細をリアルに観察することが困難です。立体の状況を写真ではリアルにイメージできない場合があります。そのため学習資料として土器3Dモデル作成に取り組みました。
そうしたところ、今回の獣面把手土器3Dモデル作成により、単に技術上それが可能であるだけでなく、360度からの撮影が可能であるという条件が整えば他の学習者とも情報共有ができるレベル、つまり「製品」的レベルの3Dモデル作成が可能であることに気づくことができました。
縄文土器所蔵機関と学習者グループの間で協力の仕組みができれば、一般公開のための学習用縄文土器3Dモデル図鑑作成も夢ではありません。

5 海老ケ作貝塚出土獣面把手土器に興味をもったきっかけ
Twitterの焼町焼さんの「千葉のくせに見事な勝坂」に強い刺激を受けてこの土器に興味をもちました。
このTwitterの前に、加曽利貝塚博物館講演会で佐藤洋学芸員から有吉北貝塚では勝坂式土器そっくりさんが出土しているが隆帯で作るべきを沈線でごまかしていて、そっくりさんだとの紹介がありました。講演会情報とTwitterで、船橋には勝坂が来ていて、千葉には来ていないという地理分布上の問題意識が芽生えました。

2019年2月7日木曜日

飛ノ台史跡公園博物館企画展「ここまでわかった!~1万年前の取掛西貝塚~」

縄文土器学習 18

Twitterによる情報(焼町焼さん)に突き動かされて土器学習のとっかかりの一環として飛ノ台史跡公園博物館企画展「ここまでわかった!~1万年前の取掛西貝塚~」(3月3日まで)を観覧してきました。入場料100円で、写真撮影は入口で許可をとりました。

企画展パンフレット表紙

1 動物儀礼
取掛西貝塚の動物儀礼については以前から興味があったのでとても参考になりました。
2017.07.01記事「動物儀礼跡 取掛西貝塚

動物儀礼跡出土竪穴住居が原寸でわかるような展示になっています。また詳しい写真が展示やパンフレットに掲載されています。

動物儀礼の様子 企画展パンフレットから

2 企画展及び常設展展示土器
縄文早期土器をはじめ船橋市の主要縄文遺跡から出土した多数土器の展示がありました。展示はガラス越しのものは少なく遮るものなく観察できる点はとても素晴らしいことでした。さらに360度から観察できる土器も幾つかあり、3Dデータ化のために多方面から写真を撮った土器もあります。

企画展展示縄文早期前半 東山式土器

常設展展示土器

常設展展示土器(海老ケ作貝塚出土)

常設展展示土器(船橋市出土最大土器、海老ケ作貝塚出土)
船橋市出土最大土器については学芸員の方に詳しい説明を受けることができました。加曽利貝塚博物館企画展展示巨大土器と類似した土器であり、煮沸用ではなく水等の貯蔵用の可能性の説明を聞くことができました。加曽利博巨大土器の疑問を解き素性を理解する上でとても参考になり、加曽利博巨大土器の再考察をする気持ちが生れました。

船橋市出土最大土器を多方向から写真に撮った様子
3Dデータ化が成功するかどうかまだメドはたっていませんが2月中に基礎技術獲得を目指しています。

飛ノ台史跡公園博物館の情報がとても充実しているので、とても短時間1回の観覧で全ての土器を咀嚼することは困難です。加曽利貝塚博物館と同様今後何回か訪問して土器学習を進めたいと考えました。同時に展示土器の私家版図鑑をつくることにしました。
飛ノ台史跡公園博物館観覧の後加曽利貝塚博物館に向かい企画展展示土器の3Dデータ用撮影を行いました。体を動かして学習するくせが形成されつつありよいことであると直観しました。