2016年11月11日金曜日

遺跡全体を見渡すGIS式学習の効果

上谷遺跡の発掘調査報告書は次の6冊が刊行完結しています。

「千葉県八千代市上谷遺跡 (仮称)八千代市カルチャータウン開発事業関連埋蔵文化財調査報告書Ⅱ -第1分冊-」(2001、大成建設株式会社・八千代市遺跡調査会)

「千葉県八千代市上谷遺跡 (仮称)八千代市カルチャータウン開発事業関連埋蔵文化財調査報告書Ⅱ -第2分冊-」(2003、大成建設株式会社・八千代市遺跡調査会)

「千葉県八千代市上谷遺跡 (仮称)八千代市カルチャータウン開発事業関連埋蔵文化財調査報告書Ⅱ -第3分冊-」(2004、大成建設株式会社・八千代市遺跡調査会)

「千葉県八千代市上谷遺跡 (仮称)八千代市カルチャータウン開発事業関連埋蔵文化財調査報告書Ⅱ -第4分冊-」(2004、大成建設株式会社・八千代市遺跡調査会)

「千葉県八千代市上谷遺跡 (仮称)八千代市カルチャータウン開発事業関連埋蔵文化財調査報告書Ⅱ -第5分冊-」(2005、大成建設株式会社・八千代市遺跡調査会)

「千葉県八千代市上谷遺跡 (仮称)八千代市カルチャータウン開発事業関連埋蔵文化財調査報告書Ⅱ -第1分冊本文編-」(2005、大成建設株式会社・八千代市遺跡調査会)

これら6冊は発掘区域の年次別に順次発行されたものです。

これら6冊の情報を通しでまとめたもの、あるいは考察した成果はありません。

このような発掘調査特性を備える上谷遺跡の学習をGISを使って進めていて、学習に遺跡全体を見渡す効果があることに気が付きました。

被熱ピットのある竪穴住居の検討を2016.11.08記事「上谷遺跡 被熱ピット等のある竪穴住居の紙上観察」で行いました。

この検討(学習)で、被熱ピットのある竪穴住居は小鍛冶遺構であるという想定を行いました。

発掘調査報告書の記載を詳しく検討(学習)した結果を記事にしたのです。

ふりかえって、発掘調査報告書の記載を再確認すると、次ようになります。

上谷遺跡 被熱ピットのある竪穴住居 発掘調査の順番と記載の特徴

上谷遺跡 被熱ピットのある竪穴住居 発掘調査の順番と特徴的記載のある竪穴住居の位置


発掘調査の最初の段階では被熱ピットを用途不明としています。

発掘調査の途中段階では被熱ピットについて「火の使用」という言葉で小鍛冶をほのめかす記載をしています。

発掘調査の最終段階では被熱ピットについて小鍛冶を想定しています。

私の学習では小鍛冶遺構としての被熱ピットを当初発掘作業では用途不明とし、出土例が増えるに従って小鍛冶遺構であるとことを疑い、最終的には小鍛冶遺構として想定したという現場担当者の認識変化があったのではないかと想像します。

発掘調査報告書が6分冊であり、そのまとめ編が存在しないという遺跡では、遺跡・遺物をGISにプロットして、空間的に遺跡全体を見渡して行う学習の効果が大あると感じました。

被熱ピット(小鍛冶)に限らず、すべての遺構・遺物に関する諸事象についても、遺跡全体を空間的に見渡してみるというGIS式学習方法が大きな意義をもっていると感じます。



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