2017年8月21日月曜日

カワラケについて 土器塚学習2

図書「千葉県の歴史 資料編 考古4 (遺跡・遺構・遺物)」(千葉県発行)の「土器塚」の項とそこに掲載されている参考文献を使って土器塚の学習を始めます。
この記事では用語「カワラケ」について派生した興味をメモしておきます。

1 土器塚の呼び名
図書では「「土器塚」という名称の由来」という項目があり、「土器塚(どきづか)という用語は江戸時代にまでさかのぼり、「江戸名所図会」には「土器塚」の名称を見ることができる。ただし、当時は「かわらけづか」とよばれていたらしい。」という趣旨の記述があります。
自分には基礎知識がないので、一応調べてみました。

江戸名所図会の駒場野の近くに土器塚(かわらけづか)という項目があり次のような記述があります。

「新訂江戸名所図会 巻之三天璣之部」における土器塚(かわらけづか)記述
「新訂江戸名所図会 巻之三天璣之部」(ちくま学芸文庫)から引用

参考 「新訂江戸名所図会 巻之三天璣之部」駒場野
「新訂江戸名所図会 巻之三天璣之部」(ちくま学芸文庫)から引用

調べるとこの土器塚(かわらけづか)は現在東京都目黒区遺跡№53土器塚遺跡(かわらけづかいせき)として埋蔵文化財登録されています。目黒区ホームページでは「発掘調査によって、弥生時代後期(約2千年前)の竪穴住居跡竪穴住居址48軒と、集落を囲む環濠かんごうの一部が発見され、弥生時代に特徴的な環濠集落であったことが判明しました。」と書かれています。
カワラケ(土器)が沢山出土する塚なのでカワラケヅカ(土器塚)と呼ばれ、カワラケ(土器)の最初の研究対象になったものと考えます。

カワラケヅカ(土器塚)はカイヅカ(貝塚)と横並びになるような名詞であり、カワラケ(土器)が塚のようになっている場所(カワラケが沢山ある場所)という意味であると理解します。
駒場野のカワラケヅカ(土器塚)は一般名詞から地名(固有名詞)に変化したものだと理解します。

一般名称としてのカワラケヅカ(土器塚)という呼び名が、現在なぜドキヅカ(土器塚)と呼ばれるように変化したのか、図書には説明がありません。しかし、土器塚の呼び名は西根遺跡をめぐる問題意識とは直接関係しないことが明白になりました。

以下は関連して派生した興味メモです。

2 カワラケに関する派生興味
2-1 カワラケの語源
カワラケの辞書説明は次のようになります。
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かわら‐け かはら‥【土器】
〖名〗 (食器として用いる瓦笥(かわらけ)の意)
① 釉(うわぐすり)をかけないで焼いた陶器。素焼きの陶器。古くは食器として用いたが、のち、行灯(あんどん)の油ざらなどに用いられた。
*延喜式(927)四「九月神甞祭〈略〉土器(かわらけ)四千五百口」
*枕(10C終)一三二「聰明(そうめ)とて、上にも宮にも、あやしきもののかたなど、かはらけに盛りてまゐらす」
② 素焼きの杯。酒を飲む器。
*伊勢物語(10C前)六〇「女あるじにかはらけとらせよ。さらずは飲まじ」
*源氏(1001‐14頃)賢木「中将、御かはらけまゐり給ふ」
③ (杯を、人にすすめたり、人から受けたりするところから) 酒盛り。酒宴。
*宇津保(970‐999頃)祭の使「御かはらけ始まり、御箸下りぬる程に」
④ 女性が年ごろになっても、陰部に毛がはえないのをいう俗語。また、その女性。
*俳諧・鷹筑波(1638)一「けのなひ物をかはらけといふ その比(ころ)はうねめの年や十二三〈不竹〉」
『精選版 日本国語大辞典』 小学館 から引用
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カワラケは瓦笥であると説明されていますが、瓦笥(カワラケ)の語源にかかわる説明はありません。
私は「モノノケ」などと同じ語法であり、瓦(カワラ)+気(ケ)と解釈し「瓦の気配」のような印象の言葉であると考えます。
地表に露出した「煎餅のように押しつぶされた」縄文・弥生時代土器の様子をみて「瓦のようだ」という趣旨の感想を持ったことが語源ではないかと推測します。
カワラケは古墳時代人が縄文・弥生土器露出露頭の観察から生まれた言葉に違いないと考えるので興味を持ちます。
ドキ(土器)、ハニ、ハネ、ハジ、スエなど土器に関する言葉はいろいろありますがこれらの正統用語とは別に、「縄文・弥生時代の土器が地表に露出しているところがどこでも沢山あった風景なので、その風景観察の感想から生まれた用語」としてカワラケを考えると興味が湧きます。

カワラケという言葉には古代人の土器露出露頭観察の感想が含まれていると考えます。

2-2 千葉県における地名カワラケ、ドキの確認
私家版千葉県小字データベース(千葉県地名大辞典 角川 小字一覧の電子データベース版)を検索すると「カワラケ」4件、「ドキ」5件がヒットしました。

千葉県の小字カワラケ4件

千葉県の小字ドキ5件

これらの地名が土器露出露頭の存在を意味するのか、それとも瓦や須恵器・土師器の窯と関連するものであるのか興味が湧きます。いつか検討したいと思います。

関連参考 2016.05.18記事「古代窯業地名スエ・ハジ及びハニ・ハネの千葉県検索結果

2-3 カワラケ投げ
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かわらけ‐なげ かはらけ‥【土器投】
〖名〗 山の上などの高い所から土器を遠くへ投げて、風に舞うさまを見て楽しむ遊び。京都の高雄山や愛宕山、江戸の飛鳥山などで、花見の時に多く行なわれた。
*俳諧・誹諧発句帳(1633)冬「紅葉ちるはかはらけなげか高尾山〈幸和〉」
『精選版 日本国語大辞典』 小学館から引用
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以前から次のような遠大な仮説を持っていますのでメモしておきます。

西根遺跡土器集中地点の土器は全てその場で意図的に破壊されています。
機能喪失土器(廃用土器)を破壊することによって土器に込められている精霊を解き放ち、土器送りを完遂したのだと考えます。
そのような縄文時代の習俗がその後の時代にも伝わり、そのうち零落した姿になってしまったものとして酒席余興酒杯投げがあると仮説します。
酒席余興のカワラケ投げの起源は縄文時代土器送り祭祀にあると仮説します。

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