2018年2月27日火曜日

新発見 貝塚における異なる生業2集団の共存 大膳野南貝塚後期集落

大膳野南貝塚後期集落の出土物による竪穴住居検討 32

大膳野南貝塚後期集落学習の総決算として、異なる生業2集団が貝塚に共存していたという事実の発見にたどり着けました。
異なる生業2集団の存在とその共存という見立て(観察、記載)は発掘調査報告書ではまったくありませんから、この発見は大きな意義を有していると考えます。

1 生業が異なる2集団が共存していたと考える根拠事象

生業が異なる2集団が共存していたと考える根拠事象

漆喰貝層有竪穴住居は漁撈を行った家族の住居であることは自明であると考えます。一方漆喰貝層無竪穴住居からは漁撈に関わる痕跡は一切出土していません。貝製品も出土していません。この2つの竪穴住居群の分布形状は全く異なっていて、異なる意思のもとに竪穴住居が広がっているように観察できます。また廃屋墓の葬送様式が異なっていて、2つ竪穴住居群の間には異なる出自・文化が存在すると考えることができます。これらの事象から2つの竪穴住居群の混在は生業や出自の異なる2つの縄文人集団が同じ貝塚集落内で共存したことを示していると考えます。

漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の分布
漆喰貝層有竪穴住居はブルー、漆喰貝層無竪穴住居はベージュ表示。

2 2集団の関係性を示す事象

2集団の関係性を示す事象

当初想定した漆喰貝層有竪穴住居優位、漆喰貝層無竪穴住居劣位という関係は無いようです。

3 2集団の特性を示す事象

2集団の特性を示す事象

当初想定した漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の生業面における分業の証拠は見つかりません。
4 参考 要注意事象(見かけの事象)

参考 要注意事象(見かけの事象)

土器・石器・獣骨の出土数は漆喰貝層有竪穴住居と漆喰貝層無竪穴住居の関係性考察に直接使えません。

5 メモ
・「異なる生業2集団の共存」という発見(新仮説樹立)の根拠について精査するとともに、さらに根拠情報を集めることができるか、もう少し大膳野南貝塚の検討を続けることにします。
・「異なる生業2集団の共存」という事象は大膳野南貝塚だけの特殊事例であるとは到底考えることができませんから、近隣貝塚の発掘調査報告書の学習も行い、類似事例を確かめ、集めたいと考えます。
・大膳野南貝塚の前期集落では発掘調査報告書でものべられているように浮島式土器優勢竪穴住居と諸磯式土器優勢竪穴住居の2つの竪穴住居群が存在し、出自や文化が異なる2集団の共存が明らかになっています。同じ場所で前期も後期も出自等が異なる2集団が共存して集落を営んだということも単なる偶然として片づけることはできません。縄文集落社会で出自等の異なる集団が共存したという事例が特殊であるのか、あるいは一般的でありふれた普通のことであるのか、自分自身がイメージを持てるようにしたいと思います。
・これまでの学習は発掘調査報告書のGIS分析作業であり、一部の視点(興味)だけとはいえ発掘調査報告書のデータを隅々まで徹底して空間的に把握分析しています。そのGIS空間分析作業が無く紙の報告書を見て紙と鉛筆と電卓だけで学習するでは「異なる生業2集団の共存」という発見は無かったと考えます。

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