2020年6月11日木曜日

縄文後晩期人口減少理由に関する学習メモ

縄文社会消長分析学習 27

縄文時代人口推計(小山1984による)
北海道と沖縄を除く

縄文人口のうち、縄文後期・晩期の人口減少について学習すべき項目(論点)についてメモを作成しました。
一般に縄文後晩期人口減少は「気候の寒冷化で、堅果類が少なくなって、それによる人口許容量低下にしたがって、人口も減少した」と考えられています。
この考えに強い違和感をもっていますので、その違和感解消のための学習項目です。

このメモは関東地方具体的には房総を念頭においています。

論点 1 寒冷化について
縄文海進ピーク後寒冷化があった。
詳しく時期別データとして知りたい。特に関東地方。

論点 2 寒冷化の堅果類生産量に対する影響
気候寒冷化による樹種の変化により、堅果類生産量(植物学的な意味での生産量)が少なくなったという定量的考察(植物学的データ)を見つけて知りたい。
→利用できる堅果類の生産量(植物学的生産量)がどのくらい減ったのか?

論点 3 気候寒冷化に伴う堅果類生産量減少が食糧確保に与えた影響
気候寒冷化に伴う堅果類生産量減少が食糧確保全体に与えた影響の評価を知りたい。

ア 気候寒冷化前の堅果類資源と人口との関係
・単位面積あたり堅果類生産量(植物学的生産量)Aは?
・単位面積あたり堅果類の採集可能率(利用率)Bは?
・一人あたり必要堅果類量Cは?

A×B>C×単位面積あたり人口 であるか?

イ 気候寒冷化後の堅果類資源と人口との関係

A×B<C×単位面積あたり人口 であるか? 本当か???

ウ 堅果類資源量人口制約説
「気温低下に伴い堅果類採集量がどんどん減って、それが制限因子となり人口がどんどん減った」という堅果類資源量人口制約説に疑問を持っています。その疑問解消を目指します。

論点 4 後期・晩期に人口減少した理由
論点3以外に次のような人口減少理由について学習することにします。
ア 中期中葉加曽利EⅡ式期の人口爆発の破綻(堅果類採集社会システム改善やアク抜き技術改善等による食糧確保増→人口急増→社会破綻※)
(※…社会破綻・崩壊のきっかけはわからないが、社会システム全てが崩壊した様子がうかがえる。)
→社会崩壊により人口が一挙に減少した。
イ 海面低下と河口域堆積による漁場の急減
縄文海進期にできた岩礁を含む複雑な入り江(リアス式海岸)が失われ、干潟がひろがる。漁獲量の多い漁場をことごとく失う。
→漁獲量の急減→摂取栄養が少なくなる?
ウ 縄文社会の生業選択
干潟化した海岸に進出して漁民になる選択を縄文人はしなかった。(海岸から離れてしまい漁業に適さなくなった台地貝塚が放棄され、居住が内陸に分散する傾向がみられる。また狩猟の比重が増える。(干潟の陸地化による獣増に対応?))
→漁業という生業を失った→摂取栄養が少なくなった?(一方獣肉は増える)
エ 疫病の流行
証拠はないが、後期以降大陸から断続的に疫病が来襲し、縄文社会に影響を与えた可能性があるかもしれない。
縄文晩期には結核が水田稲作技術とともにもたらされ、文化技術伝来よりはやく列島を席捲した可能性が高い。
オ 縄文社会が成熟して出生率が減少した可能性
食糧難のために(飢餓線上にあるために)人口が減少したのではなく、縄文社会が前期中葉(加曽利EⅡ式)までに成熟し、社会のステージが増殖から減少に転じたと考えることもできます。生存許容量の低下に支配されたのではなく、縄文社会自らに内在する出生率低下現象により人口減少した。(社会劣化あるいは社会寿命からの人口減少へのアプローチ)
→食糧があればどんな社会でも人口が増加するという単純思考から離れることが大切です。社会が成熟すれば人口減少が始まるとする社会ダイナミックスを想定する方が、縄文後期・晩期の人口減少は「食糧難」で人口減少したと考えるより、より合理的な仮説であような気がします。
→社会が成熟して人口減少するということは、社会が所持する完成した制度システム・技術などが機能しているのであり、一人一人の生活は「ゆたか」であり、生業に費やす時間・エネルギーよりも祭祀やイベントに費やす時間・エネルギーの方が重視されていたと想像します。


感想
縄文時代人口増減を1つの因子で説明することはあり得ませんが、世の中では、後晩期の減少理由多数因子を代表して「気温低下」のためといわれています。
私は「気温低下」説に大いに違和感をもっていますので、その説が本当かどうか納得できるまで学習を深めたいと思います。
まず論点3でどのような結論がえられるかで、その後の学習方向が決まります。

縄文後晩期が、ドンドン減少する堅果類のために人々が飢餓線上をさまよっていて「暗澹たる状況」(小山修三、1984)になっていて、その暗い状況の裏返しが祭祀活発化であったのか?
それとも人々の生活は意外と豊かで、食糧獲得以外の活動(文化的活動)に多くの時間とエネルギーを費やす余裕があり、それが祭祀活動活発化の正体であったのか?

現時点では縄文後晩期人口減少を一つの因子で代表させるとすると「縄文社会成熟による出生率低下」(縄文社会の賞味期限切れ)であると想像します。

参考
2020.06.09記事「縄文晩期と疫病(結核)
2020.06.07記事「縄文時代人口データ原典の考察
2020.06.04記事「縄文時代人口について問題意識をもつ
ブログ「芋づる式読書のメモ」2020.06.03記事「縄文海進と人口急増

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