2020年6月4日木曜日

縄文時代人口について問題意識をもつ

縄文社会消長分析学習 24

1 専門論文の入手
ブログ「芋づる式読書のメモ」で山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)の学習をしていますが、2020.06.03記事「縄文海進と人口急増」で縄文時代人口グラフ(※)を知りました。このグラフの原典である小山修三・杉藤重信「縄文人口シミュレーション」(1984、国立民族学博物館研究報告9-1)を入手してざっと読み、自分がかねてより持っている縄文人口問題意識について考えてみました。今後この論文及びこの論文を引用している新しい論文を精読して、人口変化=社会消長について学習を深めていくことにします。
※このグラフには北陸及び四国が抜けていて不十分なものですからこの記事では引用しません。

2 縄文時代人口の時期変化
入手論文に掲載されている縄文時代人口の時期・地域変化は次の通りです。

先史時代の人口と人口密度
小山修三・杉藤重信「縄文人口シミュレーション」(1984、国立民族学博物館研究報告9-1)から引用

この表から関東地方の時期別人口変化グラフをつくると次のようになります。

関東地方人口推計(小山他1984による)
小山修三・杉藤重信「縄文人口シミュレーション」(1984、国立民族学博物館研究報告9-1)から作成
中期が人口ピークでその後、後期→晩期と人口は減少します。
この人口減少説明として、山田康弘著「縄文時代の歴史」(2019、講談社現代新書)をはじめ専門家は異口同音に縄文海進ピーク以降の気温低温化をあげています。寒冷化が進み植生が変化し、植物食(堅果類)の面で困難がうまれ、一方タイムラグを経て生じた人口爆発で社会が崩壊したという趣旨です。
この度、小山修三・杉藤重信「縄文人口シミュレーション」(1984、国立民族学博物館研究報告9-1)を読んで、まさに気温低温化を後期・晩期人口減少の要因として扱っています。後期・晩期人口減少気温低下説の最大の原典がこの論文であるように感じました。

3 小山他1984論文を読んだ感想
論文では気温低下が人口減少の要因であったという思考を変数にしてシミュレーションしています。人口減少の説明要因に気温低下を組み込むと合理的に説明できるということです。
この論文が引用されて、人口が減ったのは気温低下であると多くの専門家が発言します。

素人として(素人だから)論理の基本に疑問を持ちます。

気温低下という事実と人口減少という事実が時間的にパラレルだから因果関係があるという論理です。
これで良いのか? 素人だから納得できません。
「気温低下が植生変化を招き、それで食料不足を招き、中期をピークに人口減少した」というストーリーが最初にアプリオリに存在していて、人口減少というデータがあるから、最初のストーリーが正解になっているのではないかと邪推します。
「植生変化が確かに食料不足を招いた。それが確かに人口減少を招いた」ということを真に証明するデータを確認するまでは、疑問は深まるばかりです。

なお、次のような疑問を以前から抱いています。
ア 後期・晩期の地形変化(海岸線後退)に縄文人は対応しないで、漁業放棄したことが人口減少の要因の一つではないか?(地形変化に対する縄文人サイドの対応の仕方)

イ 人口急増期の合理的思考を放棄して呪術の世界に戻ったことが人口減少の要因ではないか?(縄文人サイドの環境に対する対応の仕方)

ウ 人口急増による環境破壊(例 材木採り過ぎによるはげ山化等々)が人口減少の要因になっているのではないか?(環境破壊という要因)

要するに気候変動だけでなく、環境破壊や縄文社会の対応も一緒に考察する必要があるということです。

私は「気温が下がり→植生が変化し→食料が減り→人口が減った」というストーリーは科学的に証明されたものではなく、好都合に使いまわしている便宜的仮説にすぎないと思います。

もし「気温が下がり→植生が変化し→食料が減り→人口が減った」という説明で満足するならば、縄文人の人口論はシカやウサギの頭数と気象変動との関係調査と同じ論理になります。縄文人が気候変動等の環境変化にどのように働きかけ・対応し、それがどのように成功したか・失敗したかという人間社会としての取り組みが浮かび上がってきません。それでは考古学として社会に役立つものになりません。現代社会が縄文社会から教訓を汲み取ることができません。

小山修三・杉藤重信「縄文人口シミュレーション」(1984、国立民族学博物館研究報告9-1)から大いなる刺激を受け、年齢もわきまえずに興奮し、学習意欲が急増進しました。

また、なぜ36年前の論文が生きているのか不思議です。遺跡数も大幅に増え、考古知見も増大しているのに、なぜ最新縄文人口論がないのか?

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