縄文土器学習 450
2020.08.18記事「縄文マメ類栽培」、2020.08.18記事「縄文マメ類栽培評価と農耕意義」が刺激となり、武居幸重著「文様解読から見える縄文人の心」(諏訪郷土研究所、2014)に掲載されている畑文土器の解釈を学習しました。
以前この部分を読んだ時には執筆者には大変申し訳ございませんが、眉唾的印象を受けていました。ところが今回読み直して、これはただならぬ情報であり、土器文様に縄文時代畑が表現されているだけでなく、縄文時代灌漑施設が表現されていると直観しました。縄文時代灌漑施設などという暗示を受けるとは全く予想していなかったので、年甲斐もなく学習に興奮しています。
1 武居幸重著「文様解読から見える縄文人の心」(諏訪郷土研究所、2014)
武居幸重著「文様解読から見える縄文人の心」(諏訪郷土研究所、2014)尖石縄文考古館で購入しました。
2 畑文土器文様の解釈
ア 地形との対応
「区画蛙蛇畑文土器(藤内遺跡出土藤内期)」の展開文様を2つの畑タイプAとBと考え、台地尾根頂部には短冊型畑(A)が、傾斜部は幾種類かの方向の異なった斜面だから畝方向のことなる畑(B)があり、急傾斜のCは表現されていないと考えています。
土器文様の畑タイプAとBイ 塾稔記号
次の図に赤で示す記号を塾稔記号としてとらえ、畑の栽培作物の成長を表現しているとしています。
塾稔記号ウ 時間の経過による塾稔を示す
土器口縁部に近いほうを標高上、遠いほうを標高下と考えています。
AとBをそれぞれ時間経過の異なる2枚と3枚のパネルと考えます。
Aの時間経過による熟稔の様子熟稔記号が付加する区画が生まれています。→作物が成長した。
小区画1つが分割されて3小区画になっています。→畑の分割
区画列が1列追加になっています。→混み過ぎた苗を間引いて、それの移植による畑造成
Bの時間経過による熟稔の様子標高上の方から下へむかって熟稔記号が増える畑が増えています。→高所から早く稔り始めることの顕れ
3 まとめ
ア 土器文様が絵文字になっている
畑の様子を2タイプ用意し、それぞれ2時点、3時点の時間経過を絵文字としての文様で表現している土器です。
絵文字は熟稔記号という言葉で概念化されています。
イ 畑タイプは地形との対応でとらえられている
A(尾根部)とB(斜面部)という地形に対応してパネルを捉えています。
4 考察(空想)
武居幸重著「文様解読から見える縄文人の心」(諏訪郷土研究所、2014)の記述を出発点として、空想を交えて思考を深めました。
ア AとBの違いは灌漑施設有無の違い
・畑タイプAとBの違いは地形の違いではなく、灌漑施設有無の違いであると考えます。
畑タイプAとBの違いは灌漑施設の有無畑タイプBは口縁部に「ふくらみ」の模様が存在する。→水源施設を暗示する。
畑タイプBは熟稔の様子が時間経過とともに下方に及ぶ。→水の流下による影響発現を暗示する。
畑タイプBの口縁部直下の左右は熟稔記号の追加がない。→水取入口の直下流以外は水利用が困難であることを暗示している。
・灌漑施設の水を上流の畑から下流の畑に次々に反復利用していた様子が表現されていると考えます。
・八ヶ岳山麓台地や伊那谷台地などの地形から、灌漑施設のある畑は低地ではなく、台地上の頂部平坦面に整備されたと考えます。
イ AとBの違いは作物の違いを表現する
Aの時間経過は2枚のパネルで、Bの時間経過は3枚のパネルで表現されています。この違いはAとBの作物育成にたいする手の加えようの違いを表現していると考えます。AよりもBの方が生育のためにより手間をかけていて、生育作業区切りが1回多くなっています。これはAの作物よりBの作物の方が重要であったことを暗示しています。
Bは灌漑施設を使っているくらいですから、Aよりもより重要な作物であると考えます。祭祀用に使うマメ類かもしれません。
ウ Aは畑を細分化したり、追加したりする作物
畑を細分化したり、追加するような作物を植えていたのがAです。イメージとしてどんどん増えていってしまう作物です。根茎で増える芋類かもしれません。
5 感想
土器文様に灌漑施設が表現されていることが本当ならば、縄文灌漑施設発見がありうるかもしれません。だれも考えもしない縄文灌漑施設は発見されませんが、縄文灌漑施設の存在を確信できれば、遺構発見の可能性が生まれます。
八ヶ岳台地や伊那谷台地の微地形を詳しく調査すれば、縄文灌漑施設と畑発見の糸口が見つかるかもしれません。
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